ミルンとミユンのお勉強.6
お昼過ぎ────ネリアニスから依頼を貰い、アルカディアス国境沿いの山の中に来ています。
今日は楽しい豚さん狩りなの!
新人冒険者達が力試しに山へと入り、豚さんに襲われて、オーガ(雌)に助けられると言う不甲斐無い状況なので、ミルンが豚さんを減らすの!
「何で俺たちまで……」
「しっ! 玉狩りに聞かれたら潰されるぞっ」
「ギルドで暇潰しするんじゃ無かったぜ」
おっさん三人が何か言ってるの。
ミルンだけでも狩れるのに、ネリアニスが暇なおっさんを捕まえて強制参加なの。
「三人とも! ミルンの邪魔したら玉潰すの!」
「邪魔なんてしやせんぜっ」
「ギルド長からは見守るだけと言われてんでさぁ」
「玉狩りが冒険者ライセンス獲れば、俺達来なくてすんだのになぁ……」
ミルンも冒険者ライセンス欲しいの。
でも、お父さんが前に要らないって言ってたし、無くても狩は出来るの。
「喋ってないで索敵なの! 自分の身は自分で守って下さいな!」
さっきからミルンの耳に、豚さんの足音と鼻息がいっぱい反応しています。数は大体……十体ぐらいなの。
豚さんには色々と思うところがあるから、手加減無しでプチプチ潰してお肉にするの。
「にしても、こんな国境近くでオークの群れが居るなんて、おかしく無いか?」
「北か南から流れて来てるんじゃね? 特に北なんか、結構荒れてるらしいからな」
「お家騒動か……巻き込まれたくないな。そういや少し前に、魔物来てたよな……しかも喋れる希少種、おっかないぜ」
おっさん達緊張感ゼロなの……あれでも銀三の中堅冒険者だから、いざという時にはせっせこ働く筈なの。
「──来るの! 警戒体制!」
「マジかっ、俺の索敵には反応してないぞ!」
「言う事聞いとけ! 獣族の感覚は俺達より遥かに良いんだよ!」
「銀三の俺達ならオークなんざ一捻りだぜ」
おっさん三人が背中合わせで、剣やら槍やら弓を構えたの。あれなら何処から襲撃されても対応出来そう……ミルンなら瞬殺出来るけど。
────『プギャアアアッ』────
肌の色が紫っ、豚さんの変異種なの!
紫の至宝とまで云われる変異種で、いつも食べている豚さんよりも遥かに美味しく、その希少さ故に出逢った冒険者達からは──美味しい経験値とまで言われる程!
「マジかっ! コイツら居たから新人共が森に入っていたのか!」
「俺達ラッキーじゃね、一体で金貨二十枚以上する奴等が沢山来やがるぞ!」
「俺達だと五体相手にするのがやっとだぞ! 十体以上いやがる! おい玉狩り逃げるぞ!」
おっさんは弱々なの……ドゥシャやシャルネなら一体一秒、村長なら五分ぐらいで片付けて行くのに、情け無いの。
「ミルンなら、魔法と合わせれば村長より速いのっ!」
先ずは真正面から突っ込んで来た豚さんの顎目掛けて──パンチ『ゴギャッ』して砕き、前のめりになったところをお腹に──キック『プギィッッッ』して、後ろに居たお仲間もろとも吹き飛ばす。
倒れた豚さんが起き上がれない様、ジャンプして踏みつけ、踏みつけ、踏みつけ、踏みつけて──五体を再起不能にして、残り六体に狙いを定め──突っ込みます!
「うわぁ……あの変異種が泡吹いてるぞ」
「いっ──玉潰されやがった!?」
「玉狩りお嬢ちゃん、容赦ねぇな……俺らやる事無くね?」
「倒れている豚さんを締めるの! 血抜きして鮮度を保って下さい!」
残りは一体──背後からお尻に木の枝(太め)を刺して、『プモギャァアアアッ』両手でお尻を押さえたところで回り込み、空いているお腹をパンチなのっ!
合計十一体、一丁上がりです。
「ぬぅ……思ったよりも手間がかかったの、ドゥシャとまた手合わせなの」
「いやいや玉狩りヤバすぎだろ……」
「一人で全部か……ランクだったら金は確実じゃね?」
「あの領主様の娘だけあるぜ、強すぎだって」
お父さんは接近戦は弱ぽだから、今の豚さんに囲まれたら大変なの。間違いなく、全力で逃げると思います。
「この豚さんを持って帰るの手伝ってくれたら、半分はあげます。ミルン一人だとお持ち帰り出来ないの!」
「良いのか? 俺達は構わないけど……良い値段するぞ?」
「ひゃっほう! 良い部位だけ売らずに、俺らで食おうぜ!」
「銀三の面目が立たないな……まぁ良いか」
ミルンの分は、館で働いている皆んなに振る舞うの。きっと喜んでくれる筈……ミルンもいっぱい食べる。
「ちゃっちゃと運ぶの! 早くしないとお肉が痛むの!」
「「「おうよ! 玉狩りのお嬢ちゃん!」」」
その二つ名は要らないの、次言ったら潰すっ。