ミルンとミユンのお勉強.1
お父さんが、ミルンとミユンを置いて行ってしまった。今回は、御食事会という知らないご飯を食べれる機会にも関わらず、置いて行ってしまった。
お父さんが言っていた方法が、成功するのなら何も文句は無いけども、もし失敗したらその時は、お父さんのツケで必ずお肉を大量に食べに行くの。
「ミルンお姉ちゃんは結構根に持つの、失敗しない様にお花を植えるの」
「それはミルンには無理です! だからミユン! 必ず成功させるの!」
お父さんよりもミユンの方が信用出来るの。お父さんは信頼出来るけど、信用は出来ません。
「ミルン御嬢様、ミユン御嬢様、お部屋に戻ってお勉強の続きで御座います」
ドゥシャが迎えに来た……御作法とかお話の仕方とか、ミルンとミユンには縁遠いお話なの、いい加減ドゥシャにも理解して欲しい。
「旦那様のお買上げになった時計のお陰で、正確な時間割で御教え出来るので助かりますね」
「ミルンはお腹の具合で大体の時間が分かるから、時計は要らないの」
「ミユンもお日様見てたら大体の時間分かるの、時計は要らないの」
きっと黒姫なら、『我は時間に縛られぬ存在なのぢゃ、だから時計は要らぬのぢゃ』って言うに違いないの。
「お二人共が問題無くとも、働いて居る使用人達には有用で御座います。したがって、時計は必要不可欠であり、これによってミルン御嬢様、ミユン御嬢様のお勉強時間を決めさせて頂きます」
「時計が憎いのっ」
「木製だから土の肥やしに出来るのにっ」
ミユンも悔しがってるの。
ドゥシャが必要だと言うのなら間違い無いんだろうけど、やっぱりミルンには不要なの。
「旦那様より、お勉強を頑張れば、三時のお菓子をあげる様にとの事でございますが、どうなさいますか?」
「お菓子! お勉強頑張ります!」
「蜂蜜付きのやつが良いの!」
三時が待ち遠しの……時計の針を見て三時を待つの! お菓子の時間が分かる時計は必要です!
「早くお勉強するのミユン! 時間が早く過ぎるの!」
「集中してやります!」
「それではお勉強部屋へ戻りましょう、座学では無くダンスを致しますので、良い運動になりますよ」
ダンス!? 今だにあの動きが分からない、不思議な踊りなの!
◇ ◇ ◇
「イチ、ニッ、サンッ、イチ、ニッ、サンッ、ミルン御嬢様! 動きが速すぎますので相手に合わせて下さい! 下を向かず相手の目を見て!」
鬼の教官姿のドゥシャなのっ、相手はミウだから動きが合わないっ!? 足を踏まれた……凄く痛いです。
「ミルン速過ぎ、私の動きだと合わせられない」
「ミウは足を踏まないで欲しい……赤くなって腫れてるの」
小さな声で威嚇するのっ、ドゥシャにバレたらお菓子抜きになるからなの。
ミユンの相手はメオなの。
私達と違って、物凄く動きが遅い……あれは不気味な踊りです。
「ミユン、もっと動きを速めるの!」
「速くしたらメオがついて来れないの! この速さが一番です!」
「ミユン御嬢様、メオに合わせるのも結構ですが、少し早めにリードして動けばメオの動きもついて来ます」
ドゥシャがミユンには優しいの!? なぜミルンにはキツく当たるの!!
「ミルン御嬢様! ステップが獲物を狙う動きになっていますよ! ミウも少し早めに動きなさい! はい続けて! イチ、ニッ、サンッ、イチ、ニッ、サンッ、今度はミルン御嬢様が遅過ぎます!」
きっキツいの……普段使わない筋肉が悲鳴をあげて、足の裏が痛いっ。
「はいそこまで!」
「ぬぅうううっ足が痛いのぉおおおっ」
「ミルンお姉ちゃんが見た事ない姿に!?」
この靴がいけないの、動き辛いし滑り易いし、これじゃあサクサク動けないの!
「ミルン御嬢様は動体視力、持久力共に素晴らしいですが、動きが機敏過ぎて相手に合わせられていないですね。同じ力量の持主ならば大丈夫でしょうが、同年代の貴族のお子様だと……振り回されて骨が折れるでしょう」
骨を折るのは得意です! 魔龍の川近くで狩をしていた時は、ゴブリンを奇襲して首の骨を折っていたの!
「弱い魔物なら直ぐ折れるの!」
「ミルン御嬢様……貴族のお子様のお話です」
貴族のお子様を折ったら大変なの……泣かれても治せないし、気合いでくっ付けろしか言えないの。
「……ミルンお姉ちゃんのステータスが気になるの」
「ミルンってあんなんだったかなぁ」
「ミウちゃん、きっと流さんの影響だと思う」