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異世界とは愛すべき者達の居る世界  作者: かみのみさき
四章 異世界とは悪魔っ娘が居る世界
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タダ飯食べに和土国へ.4



 ノーイン達に緑化魔法の事を伝えてから早一ヶ月、ようやく世界会議が行われていた国境付近まで迄進んでいた。


 緑化魔法の事を伝えてからは、魔物が来ても俺は一切手を出さず、マッスルチェイサーの面々を見守っていたんだけど、強いというか怖い。

 ハーピィ達が居ない事で魔物の生息区域が変わったのか、以前来た時には見なかった魔物が普通に襲って来るんだけど、マッスルチェイサーはそれらを軽くあしらってます。


 豚と言うより猪の顔をした豚野郎の親戚が、その巨体でもって突撃して来ても、モンゴリ君が片手でそれを止めて、その隙にノーインが灯りの魔法で視界を潰し、ラカスが身を屈めて猪野郎の脚を斬り、モスクの全力殴打でそのまま吹っ飛ばし片付ける。


「一分もかからずに倒したぞ、討伐系ばっかりやってたからか」

「流のおっさんより強そうだ、特にあのモンゴリって奴がヤバイな」


 アトゥナは勘がいい、あの中で一番ヤバイのがモンゴリ君だからね。

 連携も凄かったけど、あの猪野郎の突進を片手で止めるって、規格外の肉体だぞ。


「残るはゴブリンだけです! 焦らず確実に仕留めていきましょう!」

「おうよ副リーダー! モンゴリリーダーは守りを頼むぞ!」

「回り込んで逃げ道塞いでやるっ」

「ラカス! 右からなら逃げ場を潰せる!」


 しっかり周り見てるなぁノーイン。モンゴリ君は後方で馬車の護衛しながら全体を把握して助言してるし、良いチームだ。


「んで俺は超楽が出来ると……暇だなぁ」

「流のおっさんは雇主なんだから、アイツらに仕事させてやらないと駄目だぞ」


 分かってますよ、アトゥナは真面目だねぇ。

 暇過ぎて、豚野郎から逃げていた頃が懐かしく感じる、二度と味わいたく無いけど。


「そういや……ここ最近リシュエルのアナウンスが無いよなぁ、神様に捕まったか……」

「何か言ったか流のおっさん?」


 何でも無いですよっと、終わったようだな、先へ進みますか。


「お疲れー。マッスルチェイサー強いな、何で今まで護衛の依頼受けなかったんだ? そんなに強いなら問題何て無いだろ」

「何とも言い辛いですね……そもそもが護衛の依頼が無いんです」

「流のにいちゃん、ファンガーデンに来る奴は居ても出て行く奴は少ないんだよ。護衛何て金まわりの良い依頼は少ないから、ベテラン勢が持っていくぞ」


 そうなのか? まぁ確かに、来る商人は既に護衛雇ってるし、案件自体少ないのか。新人からランクが上がりにくい状態なんだな。


「でもぉおおお! この依頼を達成すればぁあああ! 晴れて僕達マッスルチェイサーは、銅一ランクから銀五ランクに成れます」


 モンゴリ君や、話す時は素のままでお願いしますね、怖いから。


「ようやく一端の冒険者になれる。迷宮も入れる様になるし、お宝ざくざく見つけてやる」


 迷宮入るのってランク制なんだな……俺、そう言えば迷宮の場所知らないや。帰ったらドゥシャさんに聞いてみるか、少し行って見たいしね。


 そんなのんびりした旅をしながら、何事も起きずにそのままジアストール側の国境を守る砦に到着して、あの門を抜ければ東の地らしいんだけど……この砦の兵士達からの視線が痛い、別に何もしてないんだけど。


「なあ流のおっさん、なんか俺達、物凄く見られて無いか?」

「見られてるなぁ、俺何もしてないんだけど、意味が分からんぞ」


 念の為マッスルチェイサーの面々は馬車を降り、馬車の四方を囲んで並歩して貰っている。御者席には勿論アトゥナで、その後ろの席に俺だな。

 門に到着すると、兵士が近づいて来た。


「失礼致します、通行許可証はお持ちですか?」

「こちらに座すはファンガーデン領主、流様ですが、この意味をお分かりですか?」


 おぉっ、アトゥナが変な喋り方? 普通の喋り方? になってるぞ違和感しかねぇ。


「はっ! 問題御座いません! 後、閣下からの伝言で、『娘が完治した、卿に心からの感謝を』との事であります! どうぞ御通り下さい!」


 そう言えば東の国境って、あの辺境伯が担当だったな、娘がちゃんと治った様でなによりだ。


「さてここからは、影さんから貰った地図を頼りに向かうしか無いのか……」

「流のにいちゃん、俺は地図分からないぞ」


 俺は地図ぐらい普通に見れるぞ、ドゥシャさん教育のおかげだけどね。

 マッスルチェイサー達も馬車に乗った様だし、それじゃあ初めての他国の大地を、進むとしますか!


            ◇ ◇ ◇


 ふむ、どうやら流殿が拙者の担当する和土国へ来る様ですな。地図は前にドゥシャリーダーにお渡ししておるし、問題無く来れるであろうが……いや、拙者とて間違って和州国へ行ってしまったのだから、可能性は有るで御座るな。


「雲よ、ご苦労で御座る。この茶屋で団子でも食べて帰るがよい」

「……はい、有難く頂戴致します」


 ジアストール暗部、影の下部組織である雲。

 主な仕事はこの様に、足の速さを活かした伝令役であり、影の候補として日々諜報の下支えを行っている。


「この茶屋は、草団子とやらが美味いで御座るよ。すまぬ店主、草団子と甘茶を二つ頼む」

「……有難く頂戴致します」


 唯一の欠点は、この様に感情が希薄と言う所であろうか。彼女らの境遇を考えれば致し方あるまいが、このままでは影には成れぬで御座ろうなぁ。

 各地、各国にて、戦火に巻き込まれた孤児を引き取り、各々の目的に向かって鍛え上げ、突出した才を作り上げる。

 情操教育などは一切行わず、ただ場を与え、知を与え、その後雲と成り、影と成す。


「拙者の様にマトモな影と成る者も居れば、他の影の様にぶっ飛んだ思考に成る者も居るからの……御主はどう成る事やら、不安で御座るよ」


 ゆっくりと手を伸ばし、雲の頭を優しく撫でて居ると、ようやく草団子と甘茶が来た。


「ほれ、ここは拙者の奢りで御座る、沢山食べて頑張るで御座るよ」

「頂きます……ズズッ……甘くて美味しい」


 ふむふむ、ようやく普通に会話が出来そうで御座るな。この茶には貴重な蜜が使われておるから、結構美味いで御座る。


「さて、拙者は念の為、流殿を迎えに行くで御座るが、御主はゆっくり帰るで御座るよ、店主! お代は置いておく故、この子にお腹いっぱい食べさせるで御座る!」

「……有難う御座います影千夜様」


 影千夜は拙者の偽名で御座るよ、これか無ければ諜報なぞ出来ぬで御座る。


 奥から店主が手を上げて来たのを確認し、ゆっくりと歩き出す。


「頼むから流殿、迷うにしても、和州国だけには行かないで欲しいで御座る……」



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