どこに行っても闇だらけ.2
帝国のお姫様からのラブメッセージ。
その書かれた手紙をヒラヒラさせて折りたたみ、そっと立ち上がって背伸びをした後、執務机の引き出しに仕舞い込んで、もう一回ソファに座り、ズズッっと茶を飲む。
「跡目争いは無視だな」
「その方が宜しいかと」
「当然であるな。魔王としての流君の後楯が欲しいのであろうが、下手をすれば帝国が無くなるというのに……」
今は魔神様だけどね! アイツらもまさか、俺が世界会議後に魔神に成った事は知らんだろうし、好きに使える魔法も有るからね。
緑化魔法は攻撃には向かないけど、捕まえれば締め付けて骨を折り、魔物の巣へ直行便で御座います。
「それならどっちに行くかだけど──、ひたすら諦めずに間者を送って来る和土国だな、どんな国か見てみたいし」
「その方が宜しいかと存じます。和土国ならば獣族達を迫害せず、お互いに力を合わせて暮らしているとの報告もありますので、ミルン御嬢様やミユン御嬢様が居ても問題無いかと」
その代わりに、悪魔族が迫害されている可能性があるんだよなぁ……それも聞いた話だから実感無いけど。
「……要確認だな」
「頼むから、国家間の問題になる様な事はしないでくれたまえよ流君」
うむうむ、いつも通りの信用の無さですね。
「大丈夫だ村長、何かあれば直ぐ戻って来れるし、他国だから安全第一で行くぞ」
世界樹の根っこを使えば即帰還出来るし、危なくなっても自衛手段が有るって良いよね。
「それで頼む……あとは行く人選であるな」
「それなら、ミルンとミユンは付いて来るだろうし、試しにアトゥナとリティナ連れて行くか」
悪魔族がどれ程虐げられているのか知りたいし、あの二人なら気にしなさそうだからな。
「流石旦那様、正に鬼畜で御座います。それと今回、ミルン御嬢様、ミユン御嬢様は付いて行く事は出来ません。言葉使いや姿勢のレッスンが終わっておりませんので……」
マジか……モフモフ居ないとヤル気出ないんだけど、まぁ行きは時間かかるけど帰りは一瞬だから良いか。
向こう着いたら、試しに実験してみてどうなるかだな。そうすれば、ミルンやミユンも遊べるし楽も出来る。
「分かった、じゃあリティナとアトゥナ連れて行くわ、検証は必要だからな」
「畏まりました、向こうには影もおりますのでご活用下さい」
潜入してるんだったか、確か御座る御座るって言う不思議系影さんの一人だったな……性格はマトモであって欲しい。
「それじゃあアトゥナとリティナに伝えますかね、ちょっとした旅行に道連れだよっと」
◇ ◇ ◇
「なんでミルンを置き去りにするの! お勉強頑張ってるのにお父さんだけずるい!」
「ミユンも同意見なの! 遊びに行くのにミユンお姉ちゃんとミユンを置いて行くなんて、パパは薄情者なの!」
二人の駄々っ子が攻めてきたぞードゥシャさん助けてーって顔怖!?
俺が出かける準備をしてるのを勘付かれて、ミルンとミユンが部屋に突撃して来たんだけど、ドゥシャさんの顔が一瞬鬼に見えたよ。
「ミルン御嬢様、ミユン御嬢様、今回は諦めて下さいませ。御二方共まだまだレッスンが足りませんので、御食事会等公の場にお出しする事が出来ません」
「お父さんだって出来てないの! ドゥシャは狡い!」
「抗議します! 旗を掲げて抗議します!」
食事会のマナーだって? そんなモン、俺は社会人経験豊富なおっさんだぞ、知らないけどもどうとでもなる。
「お父さんが自信満々なお顔してる!? きっと理由も無しに自信だけあるの!」
「パパはマナーとは無縁の破壊魔なの! ミユンが行かないと大変になります!」
自信なんて有るに決まってるじゃ無いか、何か有ればミユンの言う通り、ちょっと破壊して逃げて来れば良いだけの話だ。
「お父さんが悪いお顔なの……むぅ、ミルンを置いて美味しいモノを食べる気なの」
「ミユンを連れて行くの! じゃないとこの館の水洗おトイレをポットンに変えるの!」
美味しいモノを食べる気なのと言う隣で、ポットンの話をするんじゃありません。行った先のトイレが気になってきたじゃんか、簡易トイレ多めに持って行かないと。
「……二人共ちょい耳貸して……ごにょごにょ」
「ふんふん……そんな事出来るのお父さん?」
「成程なの……理論的には可能なの、流石パパなの」
おっと、ドゥシャさんがこっち見てるよ不味い不味い。
「ちゃんとお土産買って来るから、勉強頑張りなさいな」
「分かったのお父さん! 待ってるの!」
「お勉強しながら待ってるの! ミユンがお花を咲かせて待ってるの!」
ミユンさん一言多いですよ。
「旦那様、一体何をなされるおつもりですか?」
「いやいや何もしないよ? えっとアトゥナは何処居るだろうかな──探さないとね──」
そそくさと部屋を出て、アトゥナを探して捕まえて、荷物を準備させてリティナの確保に行きましょう。
「俺は行くの良いんだけどさ……何でおっさんそんなに急いでるんだ?」
それはね、ドゥシャさんに勘付かれる前にさっさと出発したいからさ。
「話をしてると、ボロが出ちゃうかもだからね」
「相変わらず意味分からないおっさんだなぁ」