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異世界とは愛すべき者達の居る世界  作者: かみのみさき
四章 異世界とは悪魔っ娘が居る世界
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どこに行っても闇だらけ.1



 アトゥナが領主館で働き始めて五日が過ぎた頃、二通の手紙と共に、何とも見事な彫刻が施されたブローチが届いた。

 一つは、俺の目にちょくちょく見える妖精が彫られた、可愛らしいブローチ。

 一つは、五つの国旗だろうか、紋様が彫られた無骨なブローチ。


「これが入国許可証ねぇ、ドゥシャさん、手紙には何て書いてあるの」


 まさか本気で送って来るとは……軽く冗談のつもりだったんだけどなぁ。


「二通共に、旦那様を招いての食事会のお誘いで御座いますね。いつ行かれても対応するとの事ですが、いかが致しましょう」

「食事会ねぇ……影さんの報告書軽く読んだけど、連邦はゴブリン食べる奴が居るらしいじゃん、何それって感じだよなぁ」


 報告書にも、ルシィへの恨み辛みがそこかしこに書かれていたし、部下は大事にしろよ。


「和土国も和土国で、食糧難になりつつあるみたいだし、妖精や精霊の力を借りて、実りを良くすりゃ良いのにな」

「それが出来るのは旦那様だけかと。妖精が見え、精霊の存在を変え、魔物達すら従える……存在が最早天災で御座います」


 いやいや妖精や精霊を信奉する国だぞ、見える奴が居てもおかしく無いし、居なかったら突っ込みを入れるぞ。

 妖精や精霊を信奉するとは何ぞや!? みたいな感じで。


「俺、未だに腕相撲でミルンやミユンに負けるんだけど、そんな俺が天災……笑えるわーい」

「腕力だけならば、旦那様はゴブリンよりも劣りますからね。それでいかが致しましょう、先にどちらに向かわれますか」


 腕力がゴブリン以下……獣族の幼児ですらワンパンで潰せる、ゴブリン以下かぁ。空いている時間に、筋トレでもするかなぁ。


「……ゴブリン繋がりは嫌だから、先に行くのは和土国だな。確か代表は──傘音技珠代と言う名前で、和服姿の腹黒美女だったよな」

「左様で御座います。幾度もこのファンガーデンに間者を差し向けている国で御座いますので、細心の御注意を」


 その間者が帰ってこないから、また間者を送って来てるだけじゃないのか。


「そういやミルンとミユンはどこ行ったの、黒姫も最近見ないし……家出したのか?」


 最近のぢゃのぢゃした声が聞こえないから、ちょっとだけ心配だ。


「御心配には及びません、黒姫様はセーフアースにて影達を手伝っておりますので。ミルン御嬢様、ミユン御嬢様は別室にてお勉強中で御座います」


 朝から勉強って……小学一年生と考えたら普通なのか。


「頑張ってるなぁ、一体何の勉強してるんだ? 随分前に俺が受けた読み書き算数か?」

「今はダンスと礼儀作法のお時間で御座います」


 ダンスやってるのかよ。

 ミルンとミユンがダンス……それ、ブレイキンじゃ無いよね、社交ダンスだよね。


「ちょっと不安になってきた……」

「……流君、書類仕事を手伝わぬのなら見て来てはどうかね」


 村長が恨めしそうにこっちを睨んできたな、良いじゃ無いかここに居ても。


「二人の邪魔したら悪いだろ村長、ここならソファも有るし茶も飲めるから邪魔にならないし」

「ならばせめて、流君が潰した村の跡地に作る砦の決済書に、目を通してくれぬだろうか……」

「ヘラクレス様、旦那様に任せると砦が要塞になりかねません。ですので、ヘラクレス様が処理をなさって下さい」


 ドゥシャさんストップがかかったぞ、俺の事良く理解してるよね。

 睨むなよ村長、仕方ないじゃんドゥシャさんが駄目って言うんだからさ。


「ドゥシャ殿、流君を甘やかし過ぎでは無いかね」

「それでしたらヘラクレス様、旦那様がしでかした際は後処理をお願い致します」


 村長が胸筋をピクピクさせて悩んでるな、物凄く気持ち悪い。


「……それは、嫌であるな」

「はい、ですので旦那様にはお任せ出来ません」

「俺が何かしでかす前提で話すの、やめてくれませんかね」


 お茶をズズッと旨いなぁ……平和だぁ。


      ──コンッコンッ──ガチャ──


「失礼します! 流さんに御手紙です!」


 ハム耳ハム尻尾のまん丸メオちゃん……ちゃんと部屋の中の人から、声がかかってから入ろうね、可愛いから良いけど。

 なぜメオちゃんがフリフリのメイド姿なのかと言うと、筋肉村長の事が好き過ぎて働きたいと言う申出があり、院長影さんの後押しもあってメイド見習いとして働いている。

 因みに犬耳のミウ、ラナスとコルルも同じく、領主館に住み込んで働いているけど、院長影さんに鍛えられていた為に優秀過ぎる程に優秀だ。


「働き始めてわずか三日で……このクソでかい領主館の管理覚えたもんなぁ」

「メオ、声がかかるまで入室は駄目だと教えたでしょう……緊急の手紙ですか?」


 ドゥシャさんの目が一瞬鬼の様になったけど、メオも優秀な見習いの一人、直ぐに理由を聞いたな。


「これ渡したら休憩です、村長の膝の上でまるまるの! はい流さん──帝国からです」

「おぉ、欲望に忠実だなメオちゃんは……帝国? 帝国からの手紙!?」

「緊急では無いですが、重要な手紙ですね旦那様……メオを叱って良いものか迷います」


 叱らないであげてねドゥシャさんと俺は首を横に振り、村長の膝の上目掛けてダイブするメオちゃんを眺めながら……羨ましいなぁ。

 領主館内だとドゥシャさんに禁止されて、ミルンとミユンが俺に乗ってくれないんだ。

 

「流君、その恨めしい顔を向けないでくれたまえ、気になって仕事が進まぬ」

「村長はメオを撫でてればいいです、それなら流さんの視線は気になら無い」


 くっ、メオちゃんが要らぬ知識を付けた様だな。


「旦那様、手紙には何と」

「はいはい、え──っと、ふむふむ、ほうほう、マジでか、それで……なぁる」


 アレだよね、間違い無く巻き込む気だよね、この手紙送って来たヤツ。


「食事会のお誘いだって、跡目争い真っ只中の帝国の長女様からの──ラブメッセージだ」



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