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異世界とは愛すべき者達の居る世界  作者: かみのみさき
四章 異世界とは悪魔っ娘が居る世界
261/317

その頃黒姫は.1



 ジアストールの暗部を一言で表すとしたら、『頭の可笑しい連中』、それが影なのぢゃ。


 あれはそう──領主館が出来上がり、その中にある寝室の巨大なベッドでゴロゴロとしていた時に彼奴らが現れ、『ぷにっと黒姫様、影達と来て頂きます』、『いつ見てもぷにぷにでいらっしゃる』、『その姿ならば攫うのは容易です』などと言いながら襲って来たのぢゃ。


 領主館の中だったのが悪い。


 下手に力を解放すれば、せっかく建った館が壊れ、間違い無く流に怒られミルンに齧られミユンにもちゅもちゅされてしまうのぢゃ。


 一瞬で影達に簀巻きにされ、目隠しもされ、耳栓と鼻栓もされ、そのまま運ばれてどれ程の時間が経ったのであろうかや。


 全く何も見えないその間、影達に食い物を口に突っ込まれ、下の世話をされ、動けぬ地獄と自堕落な天国両方を味わうとは……この世に産まれて初めての経験だったのぢゃ。


 ふと──拘束が解かれた。

 ようやく簀巻きから解放されたと思って目隠しを外し、陽の光が目を殺しますと言わんばかりに差し込んで来たが、それよりもぢゃ……周りを見ると、流達と来た事のある場所、アルカディアスの漁村に来ていた。


 耳栓鼻栓を取り後ろを見ると、影達がニコニコとした笑顔で長い縄を持っており、『さあ黒姫様、龍の姿になって、セーフアースまで我等を御運び下さい、ドゥシャ様の指示で御座います』と半ば脅迫じみた事を言い出し、我に縄を齧らせて押し倒し、『龍に成らなければ……影総出で黒姫様で遊びます』何て恐ろしい事を口にしたので、我は即座に龍に成り、影四名を乗せてセーフアースまで全速力で飛んだ。


 後で聞いた話ぢゃが、その漁村に我の巨大な涙の粒が落下して海の魔物が興奮し、暴れ出して多大な被害を出したと言うが、我も被害龍なのぢゃ。


 そして現在、我は理由も聞かされぬまま、セーフアースの世界樹近くで影達に食事の世話をされておるのぢゃが────


「まだまだ有りますよ黒姫様、ほらあ──ん」

「やはり黒姫様はぷにぷに姿が良いですね。ミルン御嬢様も可愛らしいですが、影は断然黒姫様推しで御座います」

「ぷにぷに……はぁ、癒される」

「影は自重しなさい、一番の功労者である影に譲るのです!」


────コイツら我を殺す気かや!?

 次々に口へと食い物を入れて来るのぢゃが、四対一で食わせようとしてくるからもう食えぬのぢゃっぷ!?


「もうっ食えぬのぢゃっ! むぎぎぃのぢゅ!?」


 歯を食いしばっておるのに無理矢理突っ込もうとするのぢゃ!? 怖いのぢゃ!怖いのぢゃ! ドゥシャよりも怖いのぢゃ!


「黒姫様! まだまだ残っていますよ! ほらあ──ん!」

「影よ狡いぞ! 黒姫様あ──ん!」

「黒姫様ならまだまだイけます! ほらあ──ん!」

「黒姫様のお腹をトントンすればまだ入りますよ! お口を開けてほらあ──ん!」


 やっぱり影共は教育を間違っておるのぢゃ! 脳筋影ばっかりぢゃから一般常識を知らぬのぢゃ! もっと教養を身に付けさせるのぢゃぁあああああ────!?


「ピピィピッ『御飯美味しそう』」


 のぢゃっ!? 

 彼奴は流に惚れておるハーピィーなのぢゃ、彼奴にこの飯をやるのぢゃ!

 影達に分かるよう肉を掴み、世界樹の上部に巣を作って住んでいるハーピィ目掛けて──投げるのぢゃ!!


「──ピィ! 『お肉!』」


 ナイスキャッチなのぢゃ! 影共もハーピィに肉を投げるのぢゃ! 我よりもハーピィにあげるのぢゃ!!


「せっかく黒姫様の為に作った御飯が!? あのハーピィ……流様の知合いだからと調子に乗ってっ、八裂きの刑です!」


 のぢゃ? 


「魔物の癖に黒姫様の御食事の邪魔をっ」


 のぢゃ……?


「立派な胸をしておきながら、我等の楽しみを邪魔するか……」


 のぢゃのぢゃ。


「影達、戦闘を許可します。今日のお昼に一品追加致しましょう」


 のーぢゃっ……のぢゃ。


「「「「解体して黒姫様のお昼に出してやる!」」」」

「ピィッ!? 『何で!?』」


 本当に……ドゥシャの教育間違っておるのでは無いかや……帰ったら伝えるのぢゃ。


「止めるのじゃ馬鹿者が!! 我が喰えば良いのであろう! ちゃんと喰うのじゃ!」

「そんな!? 黒姫様が大人の姿になって仕舞われた……」

「影は……絶望感で一杯です……」

「ぷにぷに黒姫様がお姉様姿に……」

「これはこれで……ハァッハァッ」


 この姿に成れば多少食える量も増えるのじゃが、あの姿の方が動き易くて良いのじゃ。流が甘やかしてくれるしの。


「ピィピピィ……『この人達怖い……』」


 それは同意するのじゃハーピィよ。



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