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異世界とは愛すべき者達の居る世界  作者: かみのみさき
四章 異世界とは悪魔っ娘が居る世界
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何ちゃって聖女と泥棒娘.3



「あ──死ぬかと思った、加減無しでくるからなぁニアノールさん、お陰で尻尾を撫で撫で出来たから良いけど」

「ニアノールもびっくりのお父さんの速技なの」

「俺はまだ尻が痛い……なんだよあの薬、物凄く体が冷えて寒いんだけど」

「お尻から肥料出るなら下さいな!」


 ニアノールさんの細切れナイフを避け、全神経を尻尾に集中させて解き放ち、俺の速力でもってニアノールさんの猫尻尾を『すりすり舐め舐め』すると──『にぎゃぁあああ!?』と聞いた事の無い声で叫び、その隙を突いて脱出に成功! その際なぜか、尻を押さえたままの泥棒娘まで付いて来た。


「なんで泥棒娘まで付いてくるんだよ、あそこで暫く暮らせば良いのに」

「無理だろあんな場所……おっさんが俺を連れて来たんだから、ちゃんと仕事くれ」


 仕事くれって何この真面目少女、お前本当に俺から財布盗んだ本人ですか?


「あと俺の名前、泥棒娘じゃ無くてアトゥナだからな、頼むから……泥棒娘はやめて下さい」


 しかもしっかりお願いして来た!? 

 待て待て、恫喝でも脅迫でも脅しでも高圧的でも無く、ちゃんとお願いして来た!


「お父さん、罪はさっきの尻で償ったの。だから許してあげるの」

「パパ、こんな真面目な女の子を泥棒扱いは酷いの、良く食べさせて肥料をださせるの」


 全部俺が悪いみたいになってる!?

 泥棒娘を弄ってたのってミルンとミユンだよね? 俺気にして無いって言ったよね?


「なぁおっさん、許してくれよー」

「お前もか……はぁ、分かった、アトゥナに仕事紹介してやる」


 アトゥナに出来る仕事……畑仕事はケモ耳達で足りてるし、歓楽街は年齢的にアウトだろ。なら普通に飲食店か服飾店の売り子だけど、接客業に向いてるとは思えないし……ドゥシャさんに相談してみるか。

 そう思い直ぐに領主館へと戻って、ドゥシャさんに仕事無いか聞いてみた所、納得の答えが返って来た。


「館の使用人増員の募集をしておりますので、仮登用で働かせてみては如何でしょうか旦那様」

 

 そうだよね、こんなクソでかい館? 城? を管理しようとしたら、百人や二百人雇わないと無理だよね。


「旦那様……清掃員百名、料理人二十名、給仕五十名、庭師二十名、細工師五名、衣装係四名、メイド候補三十名、執事候補二十名、それぞれの人員は確保しております、メイド長はこのドゥシャめにお任せ下さい」


 さすがドゥシャさん、お願いしていた専門の清掃員をちゃんと確保してるよ。

 メイドさんがやれば良いだけの話なんだけど、そこは今後のためを見越して、別枠で清掃員を確保をお願いした。


「アトゥナは──そうだな、一通り仕事をやってみようか。勿論給金は出すし、七日の内二日は休みを取って良い、超ホワイトな職場だぞ」

「お父さんは腹黒いけど、お仕事は真っ白なの」

「パパは魔神とは思えない程労働環境に優しいの。あそこの針が十二と八を指せばお仕事開始で、十二と五になったら終わりなの」


 ミユンが指をさす場所、この謁見室の右奥にひっそりと佇んでいる木製の一品。

 ちゃんとこの異世界にも有ったんです、古めかしい振り子時計。勿論クソ高い御値段でしたけど、これをもう一つ用意して分解し、職人に勉強させます。

 できれば早いうちに役場へ設置して、労働時間の管理を行わないと大変な事になるからね。


「なんだよおっさん、あんた本当に領主様だったのかよ……嘘だと思ってた──ひっ!?」

「旦那様に対して失礼ですよ、立場を弁えなさい。アトゥナと言いましたね、先ずはこちらへ来なさい、一から教えて差し上げます」


 ドゥシャさん居る前でその態度は駄目だな、少し勉強して来なさい。


「ドゥシャさん、お手柔らかにね」

「畏まりました旦那様」

「ちょっと待て俺まだここで────」


 さらばアトゥナ……またいつか会おう。


「……ドゥシャに預けて大丈夫なのお父さん、改造されそうな気がするの」

「あの影みたいに性格が可笑しくなるの、ヒャッハーになって帰ってくるの」

「ミルン、ミユン、アトゥナは元から性格可笑しいから大丈夫だ。きっと一周回って普通に成ると思うぞ……たぶん」


 たぶんって言葉、便利だなぁ。

 

「──っとそうだ、筋肉村長に情報共有しとかないと。それに、村を何個か潰したから、その跡地に砦建設をお願いしないとな」

「そこだけ聞くと、お父さん間違い無く悪者なの……」

「ミルンお姉ちゃんも、楽しんで悪者の股間潰してたの」


 仕方無いぞ、盗賊とか奴隷商とか腐った村は早めに潰さないと、後手に回ったらしんどいからね。



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