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異世界とは愛すべき者達の居る世界  作者: かみのみさき
一章 異世界とはケモ耳幼女が居る世界

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8話 魔物は皆んな生きている.2


 11/19 加筆修正致しました。



 コンテナの上部で、ミルンの尻尾を撫でながら、のんびりと寝ていたら、馬車のスピードが急に上がり、振動で飛び起きた。

 ミルンは寝ているのに、なぜ?

 そう思い、コンテナの上から前方を見た。


「お……マジか?」

「んんっ、流さんどうしたの?」


 少し先から大量の魔物達が、まるで餌を見つけたと言わんばかりに、迫って来ていた。

 この速度だと、衝突まであと僅か。


「ミルンっ、何かに捕まれ! 絶対に振り落とされるなよ!」

「流さんに掴まるっ!」


 そして、魔物の大群と────激突っ!!

 思ったよりも衝撃が来ない? そう思い、前方を見たら、納得した。


 パッコーンッ────『ギュギョッ!?』

 ブチブチブチッ────『プギッ!?』

 プチュッ────『ギャアアアッ!?』


 生々しい音を立てながら、ゴブリン、ゴブリン、オーク、ゴブリン、オーク、ゴブリン、ゴブリン、鶏? オークと、その迫り来る魔物の大群が、肉片へと変わって行く。

 ある者は押し潰され。

 ある者は上空へ。

 ある者は噛み引きちぎられ。

 またある者は粉々に。


『ヒヒィイイイ────ンッ!!』

『ブルゥッブルゥッッッ!!』


 二頭の筋肉馬が、コンテナを引っ張りながらも、走る速度を上げ、魔物の大群に突撃。

 その筋肉と重量でもって、魔物の大群を蹂躙しながら、前へと進む。


 俺は、振り落とされない様に、コンテナにしがみ付き、言ってみたかった台詞を、声高らかに叫んだ。


「ふはははっ! 我が軍は圧倒的ではないか!」


「流さんどうしたの!?」


「さあ筋肉馬達よっ! 敵を薙ぎ払え!!」


『ヒヒィイイイ────ンッ!!』

『ブルゥッブルゥッッッ!!』

 

「魔物は皆んなー生きているーっ! 生きーているから潰すんだーっ!!」


「流さんが可笑しくなった!?」


 ミルンさんや。揺られ揺られて、ハイテンションに、なっているだけだぞ? 


 そんな事をしていたら、ポーンと前方から、何かが飛んで来るのが見えた。良い感じに俺目掛けて来たので、手を上に上げて、スポッとキャッチ成功!


「鶏……?」

「流さん、それコカトリスですよ?」


 ミルンが俺にしがみつき、涎を垂らしながら教えてくれるけど、どう見たってこの生物。


「鶏」


 サッカーボール程の大きさの鶏の身体に、蛇の様な尻尾を生やし、『コケッコココッ』と鳴いている。


「鶏……だな」


 俺は失念していた。

 大きかろうが小さかろうが、魔物は魔物。


 コカトリス────庶民の家計の味方。

 低価格で販売されており、その肉は蛋白で、様々な料理に合うと好評。

 一時乱獲され、その数を減らしたが、現在では増えに増えて、害獣ならぬ害鶏となり、捕獲推奨と言われるまでに、進化した。

 

 その魔物の特性を、身を持って知った。


『コケェエエエエエエ──ッ!!』


 俺は、コカトリスを手に持ったまま、一瞬で石像になっちゃいました。だけどコカトリス、お前も逃げられないぞ。


『コケェッ!?』


 ミルンは助けを呼んだ。


「……」


 コカトリスが暴れている。

 筋肉達磨の村長が現れた。


「……」


 石像をコンテナに搬入した。


「……」


 コカトリスが暴れている。

 聖女は爆笑している。

 ミルンは俺の頭を齧っている。

 硬い様だ。


「……」


 コカトリスが暴れている。

 聖女は爆笑している。

 村長も笑い出した。

 ニアノールは堪えている。


「……」


 コカトリスが疲れている。

 ミルンは尻尾を俺の顔に擦りつけている。

 ニアノールは笑い出した。


「……」


 コカトリスは諦めた。

 聖女が奇跡を行使した。


「………ふぅ」


 俺はギュッと、コカトリスを握り締め、『こんのぉ鶏やろうがぁああああ!!』と、聖女の顔面目掛けて投げ付けた。


「何でやねんっ!?」


 筋肉馬達の働きによって、魔物の群れを殲滅した俺達は、新たなる仲間、コカトリスの非常食(ミルン命名)を連れて、先へと進んだ。


「ふぅ……何か一気に疲れた」


 仰向けになった俺の腹で、ぐっすりお休み中のミルンを撫で撫で……疲れ取れて来たな。


 ガゴッ────『流君、もう間も無く野営地である。そこで一旦休憩だ』


 コンテナ上部の昇降口から、村長の声が聞こえて来た。俺は『了解』とだけ伝え、ミルンを起こしつつ、前方を確認。


 砂利道が終わり、整地された道が続く先に、大きなログハウスが建っており、そこから煙がもくもくと、立ち昇っていた。


「何これ……ただのキャンプ場じゃん」


 


 コンテナ馬車から降りて、耳をぴこぴこ、尻尾を振り振りと、可愛いミルンを肩車して、野営地を歩く。

 隣には、猫耳メイドのニアノールさん。

 その隣には、大股で歩いている、どう見ても聖女には見えない聖女リティナ。

 後ろからは、身長二メートル越えの筋肉の塊である、筋肉村長。


 周囲から視線を感じるけど、怪しい者では御座いません。大道芸人でも御座いません。ただの旅人ですからね?


「流さん、お腹がすきました!」


「そうだな……あそこでご飯作るか」


 広場の端に場所を陣取り、簡易の調理場を設置して、マジでただのキャンプだな。


「誰か火を着けてもらえるか?」


 ミルンがビクッと、肩の上で震えた?

 どうしたんだろ、ミルンは火が苦手なのか?


「私、火の魔石もってますよぉ」

「ニア。それウチに貸し」


 ニアノールさんが、メイド服から石を取り出して、聖女リティナにパス。

 少ししたら、その石が赤く光って、聖女リティナの手の平から、小さな光がふよふよと現れ、枯葉の上に落ちた。


 ポッ────「えっ、火がついた?」


 俺が濡れパンをマシパンにする為、どれ程苦労したと……今の素敵アイテムは何だ?


「ほいニア、返すわ」

「はいどうもぉ。お役に立てて良かったですぅ」


「ちょっとその尻尾を触らせて下さい!!」


「ヒィッ!?」


「おっと間違えた」

 

 ニアノールさん曰く、魔石を媒介にして魔力を流すと、その魔石の特性に合った魔法が、使えるとの事。

 魔力って何だよ、俺にも有るの?

 因みに魔石は、魔物の心臓。

 解体しなければ、手に入らないとの事。


 俺に魔物解体何て出来ると思うなよ。

 こちとら現代人ですからね。

 肉屋さん有難う。

 取り敢えずは、これで火がついた。


「んじゃぁ、お料理のお時間だ。『空間収納』から、鍋をだしてっと」


 勿論、村長宅から持って来た、俺の鍋だ。


 先ずは、玉葱っぽいモノを微塵切りにして、色が変わるまで炒めて、人参っぽいモノと、馬鈴薯っぽいモノを加えて、更に炒める。

 次に、ブロック肉を取り出して、一口大に切り分けて、更に炒める。


「流君…器具とその食材はどこから」


 焦げないように炒めて、炒めて、炒めたら、村長宅から持って来た、俺の香辛料を加えて、お水を投入。

 後はひたすら、煮込んで、灰汁を取り、煮込んで、灰汁を取り、煮込みまくる!!

 

「流さんのお料理っ、良い匂い!」


 最後に、揺れているミルンの尻尾を、一度モフモフしてから、味を確認……玉葱香る、シンプルシチューの完成だ!!


「何か美味そうな匂いやん」


「これは、貴重な香辛料の香りですよぉ」


「聖女様とニアノールさんも食べるだろ?」


「流さん! 早く食べたい!」


 ミルンは涎が止まらない。

 コカトリス(非常食)をじっと見ている。

 コカトリス(非常食)は怯えている。


「おっと、お皿だったな。『空間収納』から、お皿をだしてっと、コレで良いかな」


「……流君」


「何だ村長?」


 村長が、ポンッと俺の肩に、手を置いた。

 ゆっくりと、白い歯を見せた村長の顔面が、近づいて来るけど、暑苦しいぞ。



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