魔王って沢山居るんですね.5
影さんから話を聞いて、悪魔族とはどう言った存在か多少理解する事が出来たんだけど、少し気になる事と言うか……東の魔王ってやっぱり生きてるのかな。
「影さん、知ってたらで良いんだけど、東の魔王って生きてるの? 魔王ってどれくらい居るのかな」
一度魔王になったから分かるんだけど、高位の存在に魔王と認識されるだけで魔王に成るんだから、エイドノア大陸に、魔王って結構居るんじゃないかな。
「そうですね、我々が確認出来ている魔王は──東の魔王六名と、北の魔王二名、南の魔王三名に西の魔王一名ですね。西の海洋国家アルカディアスの魔王は、隠していますが王妃です」
う──ん、うん、もう一回言って影さん。
ほいほい、東が六名、北が二名、南が三名に西が一名で、西の魔王はシャルネのママさんと言う事で合ってるよね。
「良くこの大陸終わらなかったな……魔王多過ぎじゃね。十二名の魔王って、前の俺入れたら十三名で奇数だったじゃん」
「流さん、あくまでも我々が確認出来ている魔王のみで十二名です。他にも居る可能性は有りますし、この大陸の外側にも居るかもしれません」
なんか……魔王のインフレ過ぎるだろ。
物価高じゃあるまいし、魔王そんなに居たら歩くだけでエンカウントしました! 攻撃を受けて昇天しました! になりそうだぞ。
「魔王だらけって、殺伐とした世界だなぁ……」
「別に魔王だからと言って、強い訳では無いですよ流さん」
そうなのか? 魔王って、理不尽な強さを持ってるイメージが有るけど。
「流さんの様に、一長一短の弱点を持った魔王が大半ですね。流さんは腕力が無いので、接近戦に弱い傾向が有りますし。唯一突出して強い魔王をあげるなら、ジアストールに語られる魔王ですね」
ジアストールに語られる魔王って、俺の父さんじゃなかったか? 突出して強いって何してんだよ父さんっ、確かに俺が貰った力は突出してるけどさ……意味分からん。
「んっ……? じゃあ東の魔王、悪魔族の王って言ってる奴も大した事無いのか? 一夜にして国滅ぼしたって聞いたけど」
「我々も噂だけは耳にしていますが、どうにもハッキリしません。東の国を調査している影も、未だ魔王に遭遇していない様なので」
ふ──ん、東は小国が多いって言ってたし、調べるにしても年単位でも足りないだろうな。
「お父さんお話終わった?」
「パパ、お話長いの」
ミルンとミユンがそわそわしてる、そろそろ昼時だな、今日は何にしようか。
「私を見ても食べ物じゃないよぅ!」
「大丈夫コルル、流さんはコルルの部位を見て、お昼を決めようとしてるだけ……」
さっきコルルがコカトリスっていってたから、無性に焼鳥が食べくなって来たな。
「影さん厨房借りて良いか、情報の御礼に焼鳥作って振る舞おう。ラナスとコルルも食べるよな?」
「コカトリスのお肉……食べます!」
「大丈夫コルル、コルルの部位は使わない……」
なんだよコルルの部位って。
コルルは食べませんよ、羽根をさわさわするだけだぞ。
「ご馳走様になります流さん、久しぶりに流さんの料理が食べれるのですね」
「お父さんの料理はパワーアップしてるの!」
「焼鳥にお野菜を刺すの!」
へいへい、念の為ミウとメオちゃんの分も作っておくか、村長の事だから大丈夫だと思うけど。
「それじゃぁ、御手軽焼鳥作りますかね」
影さんの家の厨房は結構広い。
まだ小さいケモ耳孤児達が遊びに来る為、影さんの要望を聞きながら建てて貰った豪華仕様だ。
だから厨房が広くて使いやすいんだよなぁ。
空間収納から、コカトリスの胸肉を出して一口大に切り、肉のタレと魚醤に分けて漬け込みます。
漬けている間に長ネギっぽい野菜を出して、一センチ程の長さでカットしていき、細い串を用意して準備完了。
あとはひたすら胸肉と長ネギっぽい野菜を串に刺し刺ししつつ、炭に火を入れ焼き焼きていくだけだ!
「お父さん、お手伝いする!」
「刺し刺しはまかせるの!」
ホンマ……ええ子達やで二人共……。
「じゃあミルンはお肉お野菜斬り斬り係で、ミユンはそれをタレにモミモミして刺し刺ししていってくれ」
「お肉お野菜キルの!」
「モミモミして串に刺すの!」
一瞬ミルンの言葉が違う意味に聞こえたけど……気のせいだな。
「じゃあ俺は、焼き焼きしていきますか!」
炭火焼鳥の俺のこだわりは、焼き加減もそうだけど、焼いている最中にタレにもう一度潜らせ、味を濃くする二度漬けだ。
タレは自分で付けて食べるのも良いが、最初からしっかり味が染み込んでいればその必要は無いからな。
焼き焼きしながら隣をチラッと────
「斬り斬り斬り斬り斬りお肉をキルの!」
「モミモミ刺し刺しモミモミ刺し刺し!」
────二人共何か早くないか!?
これは急がないと肉が溜まる一方だ!?
火力を上げて──焼き焼き焼き焼き焼き焼き焼き焼き焼き焼き焼き焼き焼き焼き焼き焼き焼き焼き焼き焼き焼き焼き焼き焼き焼き焼き焼き焼き焼き焼き、ちょっと水分補給して、焼き焼き焼き焼き焼き焼き焼き焼き焼き焼き焼き焼き焼き焼き焼き焼き焼き焼き焼き焼き焼き焼き焼き焼きしながら皿を見て……百本近く焼いてないかコレ。
「ミルン! ミユン! 一旦止めて────」
「キルキルキルキルキルキルキルキルキルキルキルキルキルキルキルキルキルキルキル斬る!」
「モミモミ刺し刺しモミモミ刺し刺しモミモミ刺し刺しモミモミ刺し刺しモミモミ刺し刺し!」
あぁ──なんか懐かしいなコレ、二人共ゾーンに入って帰ってこないわ……ミルンには尻尾をモフモフして、ミユンには羽根をさわさわしてっと、これでどうだ!
「キルキルキルキルキルキルキルキルキルキルキルキルキルキルキルキルキルキルキルの!」
「モミモミ刺し刺しモミモミ刺し刺しモミモミ刺し刺しモミモミ刺し刺しモミモミ刺し刺し!」
気の済むまでって事ね……食い切れなかったら空間収納で保存しておこう。
ミルンとミユンは、それからもひたすらに作業し続けて、結局串が尽きるまでやり続け、計五百十本の焼鳥が完成しました。
「二十本は、泥棒娘とリティナへのお土産だな」
それから楽しく焼き鳥を食べ、ミルン百五十本、ミユン百本とお肉が消え去り、影さん、ラナス、コルルは十本ずつで満足したため、ミウとメオの分を除いても二百本空間収納行きになっちゃったよ……ミルンとミユンのお腹がまん丸で可愛いなぁ。
「それじゃ、ミルン、ミユンも行くぞ……」
このパターンも久々だよ……ミルンが床を這って俺の足にしがみつき、よじ上ろうとするけども、『お父さん、上がれない……』と歯を食いしばり、ミユンも同じく『パパ、抱っこを所望するの……』とへそ天してますよ。
ミルンは無限の胃袋の筈なのに、なぜか俺が作るご飯だけは有限の胃袋になるんだよ、料理に変な効果でも付いてるのかね。
それじゃあ、腕を回して腰を捻り、屈伸運動をしたら準備完了──っ「重っく無い!?」
少し成長してるからか、重量が以前より増えてますよねミルンさん。
「お父さんが失礼な事考えてる……気がするの」
「パパは大概変な事考えてるの」