魔王って沢山居るんですね.1
ミルンが、アトゥナと言うリティナと同じオルカス姓の泥棒娘を担いで走ったのでそれを追いかけ、両手で土を被せている所に追い付いて、「ミルンやめなさい!」ギリギリ何とか止める事に成功した。
「あと少しだったのに……泥棒は滅殺なの……」
どうやらさっきの駆けっこでこの町の道を覚えた様で、俺の方が足が速いにも関わらずミルンに追い付くのに時間がかかってしまった。
「ミユンが追い付いていたら危なかったな……」
ミユンなら穴を掘らず、根っこを使って一瞬で地面に引き摺り込むからな。
「だずがったぁあああ──! おっさん助けに来るの遅いから埋められて殺されるのかと思っだぞ!」
泣いてるとこ悪いけど泥棒娘さんや、お前半ば埋まってるぞ。
ミルンは穴掘るの早いな……流石犬耳娘だ。
「お父さん! ミユンが追い付いたらこの泥棒を埋めるの! 若しくはセーフアースに送って魔物達のご飯にするの!」
流石に子供は殺りたくないぞミルンさん。
セーフアースに女の子送ったら、男と違って直ぐにご飯にされちゃうからね。
足さえ折らなければ襲われる事は無いだろうけど、絶対大丈夫とは言えないし。
「うん、却下です」
「お父さんは優し過ぎるの、泥棒には地獄を味合わせないと駄目」
「何話してるか分からんけど、まずこの植物みたいなの解いてくれよ……地味に苦しいっ」
それは駄目かなぁ、解くと逃げそうだし、泥棒したのは間違い無いから、多少でも罰は受けて貰わないと。
「ミルンお姉ちゃん速いの……ミユンが埋める前に半分埋まってる!?」
ミユンはゆっくり走って来たな、釘を刺しておきますかね。
「ミユン、この泥棒娘は埋めたら駄目だぞ。ちょっと聞きたい事もあるしな」
リティナと同じ姓なのもそうだけど、なんでこの泥棒娘、畑仕事出来ないのかが凄く気になるんだよ。だってここから見てる限りだと、獣族達も人間も普通に畑弄ってるし。
「なぁ、これ解いてくれよおっさん……このままだとこの二人に喰われそうなんだけど……」
「その二人はただ見張ってるだけだぞ、人間なんて食べない……ミユン、食べちゃ駄目だぞ」
ミルンは大丈夫だろうけど、ミユンは何でも『もちゅもちゅ溶かす!』みたいな感じで食べそうで怖い。
「パパ失礼なの! ミユンは何でも食べる訳では有りません! ちゃんと選別してるの! この泥棒を食べるとしたら……じゅるりっ」
「ミユン食べちゃ駄目なの! しっかり太らせて丸々したお肉にしないと……じゅるりっ」
「なぁおっさん大丈夫なんだよな!? コイツら何で俺を舐めてるの!? 舐められたとこピリッとするんだけど!? なぁおっさん無視するなよぉおおお────!!」
大丈夫だ泥棒娘、それはただ甘噛みしてるだけで、本当に喰う気なら今頃は……考えるのやめよう、グロは精神的に駄目だ。
「……領主様、何をなされておるのですかな」
騒ぎに気付いて誰か伝えに行ったのか、町長の爺さんが歩いて来やがった。
「騒がしくしてすまんな爺さん、そこの娘が俺の財布を盗んだから、追いかけて取り押さえていたんだ」
「財布を盗んだですと、一体誰が────っ!? 何故お前が外に出ておる! お前にはっ、家から出るなと何度も言っておろうが!!」
急に大声出すなよ爺さん!? ビックリしてミルンとミユンが威嚇態勢とってるじゃん。
泥棒娘を見た瞬間急に態度変わって怒るとか、情緒不安定爺さんかよ。
「うるせー糞爺! 俺を毎回閉じ込めやがって! 俺だって飯が無いと死ぬんだよ! あんな糞の塊食えるか! ばーかばーか!」
「──っなんだとっ! 穢れた存在であるお前をそこまで育てたのは誰だとっ!」
穢れた存在……この泥棒娘が?
この異世界でよく聞く言葉、その言葉の多くは──人間から獣族に向けられて使われていた筈だけど、泥棒娘って人間だよな。
褐色肌に銀髪、青の瞳、それ以外別に変わった所は無く、角も無いし尻尾も無い、羽根も無いしモフれる箇所が無いし……普通?
黄金の瞳を持つミルン、全体的に緑のミユン、真っ黒な黒姫、桃色お化け、銀髪に真っ赤な瞳のルシィ、銀髪褐色肌の青の瞳のリティナ、銀髪褐色肌の青の瞳の泥棒娘……カラフル過ぎないか異世界……普通って何だろう。
「私がどれほど────キャンキャン!」
「俺は何も────キャンキャン!」
まだキャンキャン言い争ってるのかよ、煩くてマジでキャンキャンって聴こえるぞ。
「おい爺さん黙れ、領主命令だ説明しろ……」
「爺煩いの! 次煩くしたら玉潰す……」
「潰した玉は土の肥やしにします……」
ミルンとミユンと軽い俺の威圧だよ、静かにしないと動けないままにミルンに玉を潰されて、残骸はミユンによって土の栄養にされちゃうぞ!
「──っ、分かりました、御説明致します」
「俺に玉はねぇ!」
爺さん……股間を手で守っても、ミルンの可愛いパンチなら『抉り込む様に潰すの!』手ごと股間を潰すから意味無いぞ。