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異世界とは愛すべき者達の居る世界  作者: かみのみさき
四章 異世界とは悪魔っ娘が居る世界
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知らない町を駆け回ろう.2



 おぉ、中も小綺麗な町だな。

 傭兵のおっさんの反応を見た限りだと、獣族に忌避感がある様には見えなかったし、マシな町なのかね。


 エンペラーマッスルホースは、馬車ごと町に入って直ぐの馬房に預けて、のんびり徒歩で町中を散策しています。勿論ミルンを肩車、ミユンを抱っこの完璧仕様だ。


「しけた町なの、ご飯の匂いがイマイチです」

「土はそこそこ良質なの、でも糞尿落ちてるのは勿体無いです」


 せっかく俺の脳内でシャットアウトしてそこそこ小綺麗な町と思い込んでたのに、ミユンがぶちまけました──うん臭いんだ。


「なんで下水処理してないんだよ中世かよ。糞尿が落ちてる隣で屋台開いてるし、ミルンの嗅覚もこれならイマイチになるわ」

「前のラクレル村より落ちてるの」

「拾って畑にポイしたい……」


 ミユン、本気で頼むから拾うなよ。


「拾ったらミルンのご飯はお野菜だけで、ミユンのご飯は油マシマシお肉にするからな」

「飛び火してきたの!? ミユン! 拾ったら怒ります!!」

「油マシマシは嫌です! 絶対拾わないの!」


 コレで大丈夫な筈だ……不安だけど。

 にしても、ミルンとミユンを装備した俺の姿を誰も見て来ないってのは不思議だな。王都でミルンを肩車してた時なんて、ジロジロとウザいぐらい見てきたのに。


「この町には、獣族は居ないのか……」

「向こうから臭ってくるの」


 ミルンが指差す方向を見ると、人一人通れるぐらいの細道ですね。


「路地裏かよ、町長に会いに行ってから見に行くか」


 適当な屋台で焼き串を買って、食べながら歩き、町の一番奥、町長にしては中々の豪邸の前まで来た。


「このお肉不味いの、ムゴムゴ……」

「土の肥料にもならないの、もちゅもちゅ……」


 あの、オークの睾丸ですら旨旨と食すお肉マスターのミルンが、しょぼしょぼ顔をしながらお肉を食べ、ミユンは辛口酷評一直線にお肉を溶かしているんだけど、俺はそんなに不味く感じなかったんだよなぁ。


「ミルンとミユンが嫌がるお肉って、一体なんのお肉だったんだ?」

「もう食べれない……お父さん食べて」

「舌が腐るの……パパにあげます」


 はいはい、ムグムグ……別に不味く無いんだけど。


「んじゃ、目の前のお宅に突入しますか。ミルン、ミユン、準備は良いな……」

「いつでも大丈夫です!」

「町長を土に埋めるの!」


 よっしゃ、それじゃあドアを────

「毎度──! 御届け物で──す!」

「料金は後払いなの! お金を用意しなさい!」

「無ければ土に埋めるの! 肥料にする!」

────開けた先に人が居たけど家政婦さんだろうか、俺達の姿を凝視して固まった。


 三十路手前のお姉ちゃんだな……何か俺見て震え始めたぞ。


「おーいお姉ちゃん、町長に領主が来たから、さっさと来いって伝えてくんないか?」

「……ひぇっ!? 旦那様ぁあああ! 旦那様ぁああああああああ────っ魔王がキタァアアアア!!」


 動き出したと思ったら片足引き摺ながら走って逃げやがった。

 俺を魔王呼びって事は、何処かで会った事あるお姉ちゃんなのかね。


「この臭い知ってるの……前にミルン捕まった時に眺めて笑ってた奴なの」


 ミルンが捕まったって、そんな事あったっけ……あぁ! ラクレル村の村人だった奴か!


「良く覚えてたなミルン」

「あの時の奴等のお顔は忘れません」

「ミルンお姉ちゃん執念深いの」


 そういえばあの時──何人か脚を狙って魔法の火矢ぶっ刺したわ、だから片足引き摺ってたのかあのお姉ちゃん。


「どなたですかな……人の家で騒いでいるのは」

「旦那様っ、アレが魔王です!」


 おぉ、ようやく来たな。

 あれがここの町長か、爺さんじゃん。


「ガリ細爺なの、栄養足りて無い?」

「あれじゃあ土の肥やしにならないの!」


 二人共、それ埋める前提だよね。


「爺さん、そこのお姉ちゃんが言ってる事は古いぞ。この地の領主、小々波流だ。今は治める村々を巡回中でな、危ない村を潰して回ってるんだ」


 さてさて、爺さんの反応や如何に。


「その胸元の国章……これはこれは、領主様自らが来られるとは、本来ならばこちらから出向かなければならないモノを、大変申し訳ございません。何も御用意出来ておりませんが、せめてお茶でもお飲みになって下され」

「──っ旦那様!? この者は魔王です! 穢らわしい獣を側に置く魔王なのですよ!」

 

 爺さんは丁寧な物腰だな、流石年の功と言うべきだろうか、全く何考えてるのかわからん。


「使用人風情が口を挟むでないわ! このお方は辺境伯様なのだぞ! 首が飛ぶ前に奥へ引っ込んどれ!」

「──っ」


 ほぉ……俺の雰囲気を読んだな。

 ミルンとミユンを貶すなら、次は腕を使い物にならない様にと考えていたのに、娘か孫か、上手く逃しやがった。


「勘の良い爺なの、あと少し遅れてたらお父さんが怒ってたの」

「パパが怒ったら町が消えます」

「ふむ、話に聞いたよりも怖いお方の様ですな、こちらへどうぞ」


 誰に何を聞いたのやら。

 俺は普通にしてれば怖く無いし、殴り合いなら爺さんにだって負ける男だぞ。



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