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異世界とは愛すべき者達の居る世界  作者: かみのみさき
四章 異世界とは悪魔っ娘が居る世界
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領地運営は先ず破壊から.3



 村長を探しながら歩いていると、必ずと言っていい程に絡まられる。と言っても、別に俺が絡まれる訳では無く、『何でここに臭い獣が歩いてるんだぁ』とか、『この餓鬼、中々高値で売れそうじゃねぇか、ちょっと味見させろよ』など、ミルンやミユンに絡んで来るんだ。


「来るたびに即土に埋まるけど、なんでこの村、女性が居ないんだ……」


 口には出すけど、まぁ大体想像はついてる。


「この村嫌い! 滅ぼすの!」

「ミルンお姉ちゃんに賛成です!」


 真昼間に畑仕事をしておらず、子供の元気な声も聞こえないと言うことはだ、この村の財源として売られたか、売りに出す為に何処かに居るという事だな。


「ミルン、この村に、人や獣族達の臭いが多く集まっている所って分かるか」

「調べてみるの! スンスンッ──あっち!」

「ミルンお姉ちゃんのお鼻凄い!」


 そうだなミユン、ミルンの嗅覚はそんじょそこいらの獣族達には負けない、凄い可愛いお鼻だよな。

 ミルンの指さす方向へ、黒い虫の如く湧いて出るおっさんを土に帰しならが進むと──少しマシな家が見えて来た。

 殆どの家屋が昔のミルンの住居並みにボロい中で、あの家だけ隙間や穴が無く、どう見ても村で一番偉い奴の家だろう。


「あの中から臭いするの……血の臭い……」

「ミユンも感じるの、あの中は嫌」

「マジかぁ……二人共、周りを警戒しながら少し待ってなさいな」


 ミルンが嗅いだ血の臭いに、ミユンが嫌と言う程の嫌な感じとなると、流石に二人には見せられんからな。


「退路を確保しておきます!」

「怪しい奴がいたら捕えます!」


 ミルンとミユンがホッとした顔をしたな。

 結構な修羅場を潜って来てるとは言えまだ子供だし、嫌なモノを見せない様にしないとな。


 家の前まで進み、軽く扉をノックすると、『誰だよこんな真昼間に──えっ、本当に誰だよ』と髭面のおっさんが下半身丸出しで出て来た。


「どうもこんにちは、こちら村長宅で御間違い無いでしょうか?」


 営業マン時代のニコニコ笑顔で聞いてみる。


「あっ、あぁ俺が村長のバガズだが、えっ、本当に誰だよお前……」

「失礼、ご挨拶が遅れました。当方この度、辺境伯に任命されました、領主の──小々波流と申します。現在各村々を巡回しておりまして、そのご挨拶に伺った次第でして──」


 営業マン時代のニコニコ笑顔で言ってみる。


「はぁ、それはどうも……えっ、今何て?」


 どうやらこの村長は耳が悪い様だな、仕方無い、もう一度ハッキリと伝えてやろう。


「この地の領主、魔神流が遊びに来たぞ──」


 笑顔を消して威圧を解放──頭に角が生え、衣服が鎧と化し、その虹色の両眼を、前に下半身丸出しで立つ村長、バガズへと向ける。


「──っひゅっ──がっ──っ」

「領主の前で、下半身丸出しで、立ったままで良いと思ってるのかお前」


 精神破壊効果も、加減してるから意識有る筈なんだけどなぁ。いいや面倒臭い、アイツらに贈ればコレでも喜ぶだろ。


「え──っ、コホンッ。バガズ、不敬罪で有る意味地獄行きな」


 『緑化魔法』で根っこを呼び、バガズの脚を折る程に巻き付いて『ぎょぁあああ──!?』そのまま地面へと引き摺り込んで行った。


「さてと、家の中は──っ、臭せぇ!? けど何も無い?」


 ワンルームシャワー無しで、奥にはポットン便所……臭いはコレか? 

 ゆっくり部屋へと入り、部屋の中を確認するが何も無く──「地下室か……」

 バガズは間違い無く最中か事後だったし、何処かに地下へと行く何かが有る筈っ、ここか。


「これは、ミルンやミユンに見せれんわ……」


 金具を引っ張っると地下への階段があったので、下りて確認してみると──檻の中で、目が虚の獣族が複数のおっさんに弄ばれている真最中だった。


「あっ? 何だお前バガ────」

「おい!? 何だこりゃ────」

「テメェの仕業か! 何しや────」


 緑化魔法で次々と地獄に贈ります。

 さっきのバガズは贈る時煩かったので、埋まった瞬間、贈る手前で脚を折って、これなら悲鳴も聞こえないよな。


「緑化魔法、チートよりチートだ……」


 攻撃力は脚を折るぐらいだけど、贈った先にはハーピィやナーガ、ウッドドール達が居るので、オーバーキルになるだろう。

 檻は全部で六つ……あぁ、臭いの原因はこの子だったか。

 鍵を空間収納でくり抜き、檻を開けて一人一人ゆっくりと出していく。

 獣族の女性、人族の女性、総勢十一名。

 その喉元には傷が有り、誰一人声を発せずにいたが、俺の姿、角を生やし鎧を纏った姿を見た瞬間、首を垂れて泣き出した。

 俺は、一人を布に包み、彼女達を外へと連れて行くと、『待ってたのお父さん』、『その子、土に帰してあげるの』ミルンとミユンが優しい眼をしながら待っていた。


「そうだな、その前にミルン、影さんを二人程呼べるか?」

「大丈夫なの! ドゥシャに教わったから今直ぐにでも呼べるの!」


 ドゥシャさんがミルンに教えた魔法。

 ミルンでも俺には一切その魔法を教えてくれず、ドゥシャさんからも言ってはいけないと釘を刺されているらしい。


「影達来るの! お父さんが呼んでます!」

「──どの様な御用件でしょう流様」

「──御褒美を下さい流様」

「褒美は後日だ。一人はこの娘達の護衛兼炊事係としてここへ残り、一人はファンガーデンに居るリティナとニアノールさんにここへ来る様伝えて、治療が終わり次第この娘達をファンガーデンへ移送、保護対象として療養させろ。以上、行動開始!!」


 駄目だ、やっぱり若干怒りが抑えられず、キレ気味に言ってしまった。


「私がファンガーデンへ、影は炊事を!」

「この影が直ぐ御食事を用意致します! 影、早く金の亡者を呼んで来るのです!」

「お父さんが影を怖がらせたの……」

「パパ、魔神の姿を解くの! あと、早くその子を帰してやるの!」


 おっと、まさか影さんが怖がるとは。

 ミユンの言う通り、今はこの子を楽にしてやらないとな。


「誰か、この子の名前を知らないか。知ってたら文字で良いから教えて欲しい」


 捕らえられていた者達に聞くが、何か言おうとしているけど、首を横に振った。

 誰も知らない? 違うな、これは……文字が読めないのか。


「あぁっ……ゔぁな……ゔなっ……」


 一人の女性が声を発した。

 掠れた声で、必死に、必死に声を発した。


「うぁなか? 違う……ヴァナ? そうか、ヴァナって言うのか。友達か? そうか……」


 友達か……喉が切られて、声を出すと痛いだろうに、強い人だな。


「ミユン、土に帰すのはちょっと待っててくれ」

「分かったのパパ!」

「お父さんが魔法を撃つ気なの……警戒態勢!」


 酷いなミルン、お父さんはショックだぞ。

 ふぅ……攻撃系の魔法以外で使うのって、いつぶりだろうか。

 俺は、布に包まれた子に触れ、ただ祈る。

 苦しかっただろう、辛かっただろう、怖かっただろう、間に合わなくて御免な、助けられなくて御免な、生命を司る神が居るのならば、この子に次が有るならば、優しい生を、楽しい生を、皆と笑顔で過ごせますように、家族と楽しく過ごせますように、「この子に安らぎを」


 それは──いつか見たであろう光景。

 あの時は、リシュエルがミルンを助けたらしいが、この輝きはそれ以上だろうか。

 光の粒が舞い、布に包まれた子を優しく包み込むと、ゆっくりと空へ昇って行く。その光の中でこっちに手を振り、『のーしゃをお願い』とだけ言って、ケモ耳の女の子が消えていった。


「流石侵食度五十パーだな。安心しろよ、ちゃんと暮らせる様にしてやるからさ」

「……お父さんの魔法なのに破壊が無い!?」

「パパ、その子土に帰して良いの?」

 

 締まらないなぁ、良いけどさ。

 


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