領地運営は先ず破壊から.2
ルトナッカ山。
城塞都市ファンガーデンから、エンペラーマッスルホースに乗っても三ヶ月程かかると言う遠方に存在し、山とは名ばかりの小高い丘と言う事らしい。
元々は何とかと言う貴族の領地の一部だったが、前の王都であった大聖堂粉微塵事件の折りに失脚して、巡り巡って俺の領地になった訳だと……ごめんね。
「それじゃあ、その間の村々は領民になるのか」
「左様で御座います旦那様。また、その村々からも税を徴収せねばなりません」
はー面倒臭っ! 税に関しては、隣の部屋で黙々ムキムキしている村長に丸投げだ。
「それなら村々を回って現状確認しないとだな」
「お出かけなの?」
「畑を見に行くの!」
ここ居心地悪いし、外に出て村々の現状を調べた方が仕事してる感あるからな。ちゃんとお父さんは仕事をしてます感出さないと、ミルンとミユンの教育に悪いしね。
「旦那様自ら行かずとも、影達をお使いになれば宜しいのでは?」
「いや、先ずは俺の目で確認したい。百聞は一見にしかずと言うし、影さん達の報告にはムラがあるから不安だ」
ふふふ、行かせまいとするドゥシャさんだけど、影さん達とて完璧じゃ無いのは見て知ってるし、口論では負ける気がしないぜ。
「ならば護衛を──」
「護衛も要らない。逃げるだけなら、俺がミルンとミユンを担いだ方が速いし、ミルンとミユンも強いから、ぶっちゃけ護衛は足手纏いになる。だから要らない」
護衛なんて居たら、ミルン、ミユンと遊べないし、ゆっくり見て回れないからな。
「なるべくお早いお帰りを……」
眼が笑ってないよドゥシャさん……ちゃんと調べて来るから大丈夫だって。
「分かってるよ、それじゃミルン! ミユン! ドレスじゃ行けないから着替えて来るんだ!」
「ミルンは冒険モードに移行します!」
「ミルンお姉ちゃんの言ってる事が、時々ミユンには分からないの!」
それはねミユン……きっと俺の母さんが、前世の知識をミルンに埋め込んだからだと思うんだけど……やり過ぎだよね。
「お着替え完了なのお父さん!」
うんミルン見てた。
謁見の間にも関わらずミルンはその場で素早くしゃがみ、ドレスが浮いたままの不思議現象を目にしながら、気付いたら薄ピンクの半袖半ズボン元気っ子姿になっていた……今のどうやった?
ミユンはちゃんと隣の部屋に行って、筋肉ムキムキ村長に手伝って貰いながら着替えているんだろう。
「ミルンお姉ちゃん早いの!?」
「ミユンにはまだ負けない、早着替えは変な影に教えて貰ったの!」
ミユンも半袖半ズボンの薄緑元気っ子姿だな、性格も似ててマジで姉妹だよ。あと変な影さんってどの影さんなんだ……あの影さんか、あの影さんか、分からん。
「まぁ良いか、良し! 出『また仕事を放り出して逃げる気かね流君……』……村長留守番よろ! 行くぞミルン! ミユン!」
「行ってらっしゃいませ旦那様」
「待ちたまえ流っ逃げ足だけは速い!!」
「お土産買ってくるの──」
「筋肉行ってきまーす」
無駄に広い最早城と言える内部をミルンを肩車、ミユンを抱っこしながら疾走して、馬車を繋いでいる場所まで到着し、乗り込んで直様出発────「御者はミルンがするの!」
ミルンが御者席に座ると、エンペラーマッスルホース達は恐怖に怯え、荷車を繋がれている事も忘れ必死の形相で逃げようと走り出した。
「ふははは! お肉にされたく無ければもっと速く走るの──!」
「ひぃいいい!? 速いの怖いの!?」
「ミルンちょっと止まれぇえええ──!!」
エンペラーマッスルホース達は俺が何とか御者に座ると落ち着き、『ブッフホホフッ』とゆっくり歩いてくれたんだけど、ミルンが頬っぺたを膨らませてご機嫌斜めだよまったく。
「速く行かなかったらお肉にするの……」
「ミルンお姉ちゃん諦めが悪いの」
後ろで怖い事言ってるよ……時折りエンペラーマッスルホース達がチラチラ見てくるけど、俺が居る限りお前らは守るからな。居なかったらすまん。
そんな感じでパッカラパカラとのんびり進んでいます。
そういえば俺、村に行くのってラクレル村以来だよね。今やそのラクレル村も無くなって城塞都市ファンガーデンになっちゃったけども、少し不安だな。
「確か、王都から離れれば離れる程、獣族に対する迫害や差別がきついんだっけ」
「虐めてきたら玉を潰します」
「土に埋めて肥やしにします」
うん、ミルンとミユンに喧嘩売ろう者なら一瞬にして人生詰むだろうな。乙女か肥料か、どっちかしか選択肢はありません。
そんなこんなで隣の村まで来るのに五日かかりましたよ、遠いな。
「何も無い村なの、ボロ小屋なの」
「……土が弱ってるの、酷いの!」
だよなぁ、前のラクレル村と比べても雲泥の差と言うか、比較出来ない程廃れてるなぁ。
「村人はどこに──居たっ、第一村人発見だ。お──い、そこのおっさんちょっと良いか──」
声を出して呼ぶと、こっちに気付いたおっさんがゆっくりと歩いて来た。
「誰だおめぇ、獣臭せぇ餓鬼連れて……その餓鬼売物なら村長に持ってけ」
「ミルン臭く無い! コイツの玉潰す!」
「ミユン臭く無い! 土に埋めて肥料にする!」
因みに今現在、俺の服装は正装であり、胸元にはしっかりと国章が光り輝いている。いわゆる、公式に村に立ち寄ってますよと言うアピールなんだけど、そんな俺に今の言葉を吐いた。
「ミルン、ミユン、殺さない様に埋めて良し」
「おめぇ! 何言って────」
何かミルンとミユン、手慣れてきたよね。
ミルンが瞬時に玉と喉を潰して叫べない様にした後、ミユンが根っこを生やしておっさんを地中に引き摺り込んだ。
「もっと早く処理出来る様に頑張るの!」
「タイミングが重要なの!」
もしかしたら、俺の知らない所でドゥシャさんに鍛えて貰ってるのかな。
「んじゃ次だな、村長を埋めに行こう」
「了解しました!」
「サーチアンドデストロイなの!」
はい後書きのお時間です!
と言うよりも只々感謝を!!
皆様のおかげで20000PV達成しました!!
ただ感謝の気持ちを伝えたかっただけに御座います!
あとはレビューが増えたら良いなと思いながらも、のんびり続けていきますので見捨てないで下さい!!
ではではまたの後書きでぇえええ!?