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異世界とは愛すべき者達の居る世界  作者: かみのみさき
四章 異世界とは悪魔っ娘が居る世界
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プロローグ③ 帝国調査報告



 私はジアストールの暗部である影の一人だ、名前は忘れた。

 今現在帝国の皇帝の座は空席であり、三人の息子娘達が次代の皇帝に成るべく、勢力争い真っ最中の内戦状態である。

 ぶっちゃけ今なら私一人でも帝国を終わらせる事は可能であるが、それをドゥシャに進言したら説教を半日程された……解せぬ。

 周りを見ると、村の焼跡と、切り刻まれた村人達の残骸があちこちに散乱しており、このまま放置しても帝国終わるんじゃないかと思わせる程に酷い有様だ。

 これをしたのは、『サハロブ・アヒージャ・ノゾ・ルプマンティ』という長男だったな。魔王様、今は魔神様になったのだったな。魔神様に対して、朕朕朕朕と不敬な態度をとっていたという塵以下の存在だ。


「私に任せて貰えれば、直ぐにでも首を落とせるのだがな……」


 他国への干渉はなるべく避けたいのだろう。

 まわりくどくて焦ったいな。


「──んっ? 何か聞こえる……」


 どこからだ……下?


「た…すけ……」


 声色から察するに子供か……さてさて、これはどうしたものだろうか。

 ドゥシャならば『見捨てなさい』と言うだろうし、魔神様ならば『何処に居る! 今直ぐ助けろ!』と言うであろう。

 これでは一対一だな……あぁ、ミルン御嬢様ならば『助けて育てるの! 妹にするの!』と言うだろうな。二対一だ、諦めろドゥシャ。


「あそこか……」


 燃え難い瓦礫が上手く重なって火から守ったのか? いや、違うな……これは人為的に被されたモノか。

 瓦礫の上に有るモノ。

 恐らくはこの下にいる子供の親だったであろうモノ。


「子を守る為に命を賭してか……」


 そのモノを布で優しく包み、瓦礫を一つずつ崩さない様にどかしていくと──小さな娘が蹲る様にして座っており、助けを呼んだのはこの娘で間違い無さそうだ。


「て…んし…さま…」

「私を御使などと一緒にするな、今出してやるから大人しくしてろ」


 娘を瓦礫から出して近くに座らせ、直ぐに火を起こして体を温めさせる。

 娘は見て分かるほどに痩せており、帝国の現状そのものと言って良いだろう。


「ついでに何か食わせるか……」

「てんし……さま…おか…さんは……」


 ふむ、未だ眼に力が無いな。これでは助けたくとも直ぐ死ぬぞ、仕方無いな。

 布に包んだモノを娘の前に置き、ハッキリと伝える。


「これがお前の母親だったモノだ、瓦礫の上に残されていた」


 さて、これを見てどちらに転ぶか。


「あっ…あぁ……あぁあああああああああっ」


 その布に包まれたモノを抱き上げて娘はただただ弱い声で泣き続けた。それこそ、真上にあった陽の光が傾き、辺りが暗くなるまで娘は泣き続けた。

 私はその娘に干渉せず、スープを作りながら待ち続けた。


「てん…し…さまっ」


 ようやく泣き止んだな……。

 娘はゆっくりと顔を上げると、その眼にはどす黒い闇が広がっており、生きる為の目標を見つけた者が纏う力強さを感じさせた。


「先ずはコレを食え、話はそれからだ」

「は…い……」


 その娘は泣きながらスープを呑み、野菜を食べて直ぐ、意識を失うかの様に寝てしまった。


「ふむ、影にするにはまだ小さいか……見習いとしてジアストールへ連れて行くかな」


 ドゥシャには怒られるだろうけど、魔神様やミルン御嬢様に伝えるぞと脅しをかければ大丈夫だろう。

 私は、布に包まれたモノを見て優しく言う。


「安心しろ、貴様の娘を強くしてやる」


 負けぬ様に、死なぬ様に、苦しくても辛くても、どんな理由が有ったとしても、前へ進める様に。


「さっさと『サハロブ・アヒージャ・ノゾ・ルプマンティ』を消さないと……帝国が滅ぶぞ」



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