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異世界とは愛すべき者達の居る世界  作者: かみのみさき
四章 異世界とは悪魔っ娘が居る世界
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プロローグ② 連邦国家調査報告



 私はジアストールが誇る暗部の影の一人、麗しの影っす。

 何か陛下から『ちょっと行って内情を調べて来るのじゃ』って無茶な命令されたから、連邦国家の中でジアストールに一番近い国、『ジュアベスト』に仕方無く調査に来たっす。

 何の材料で建造されたのか分からない家に、道も舗装され、夜でも明るい安全設計の町っすね。夜なのにこんなに人が出歩いてるなんて、不健康まっしぐらっす。

 

「でも、夜にこんなに店が開いてるなんて不思議っすね」


 あの街灯、魔石を使う際の微弱な力の漏れを感じないっすけど、一体何を使ったらあそこまで明るくなるっすかね。それに、柱が何本も道沿いに立っていて、そこに黒色の紐が這わされてるっすけど……まさか、古代の技術っすか。


「前に調査に来た影からはこんな事報告されて無かった筈っすけど……これは非常に不味いっす」


 確か古の人種は、魔石を使わずに生活していたって記録が少しだけ残ってたっすけど、連邦国家がそれを復元したっすか!?


「これは念入りに調べないと……特に武器っすね」


 流さんの持っている様な『神殺し』が武器として使われたら、流さんは兎も角ジアストール国が滅んじゃうっす。

 先ずは警備隊の持ってる武器を確認した方が良いっすね。国境の部隊は剣や槍しか持って無かったっすけど、国内の兵士の武器はまだ確認してないっすからね。


「何処かに巡回している兵士は……居ないっす」


 お腹減ったっす。取り敢えず腹ごしらえっす、腹が減ってはゴブリン倒せぬって言うっすからね。

 

「出来ればお酒が呑める店──あそこっすね」


 入口に黒服が立っている高そうな店っす。

 ああいった店は、服装や所作一つで客を選ぶっすから、今の私が入ろうモノなら首根っこ掴まれて裏路地へポイされちゃうっすね。


「それじゃあ、お着替えっす!」


 こういう時には、美人に産まれてきて良かったと思うっすね。院長程では無いっすけど、これでもエルフっすからね。


「良しっす! 後は口調口調っと……あーあーこれで大丈夫かしら」


 黒の生脚全開悩殺ドレスっす!

 流さんなら間違い無く三度見して、ミルン御嬢様に玉殴りの刑に処される事間違い無しの完璧仕様っす!

 焦らず騒がず遅過ぎず、されど早足にもならない足取りで、優雅に歩いて店に近づくと──黒服が一礼して扉を開けてくれたっす。


「いらっしゃいませ、大変失礼かとは存じますが、御予約はされておりますでしょうか」

「いいえ、していないわ。久々に一人で出歩いたの、駄目かしら」


 完全予約制ならここで終わりっすけど、入口の黒服が扉を開けたって事は──『畏まりました、席へ御案内致します』予約無しでも大丈夫って事っすからね。


 席へ案内されながらも店内を見ると、中々面白そうな人や物が沢山有る。

 軍服を着た角族が食べているモノ──何の肉なのか臭いが酷く鼻が曲がりそうだし、あそこの人種が呑んでいるお酒も──非常に鉄分臭い。使っているカトラリーも妙に白くて音が変だし、どこかで見た事のある様な感じっす。


「こちらへお掛け下さい」


 店の右奥の角の席……全体を見れて、良い感じの場所っすね。


「こちらがメニューになります、御決まりになられましたらお呼び下さいませ」

「ええ、有難う」


 メニューっすか、何が書かれているのかなっす……ふむふむ、オーク肉にコカトリス肉、ミノ肉を使った料理ばっかりっすね。

 さっきの酷い臭いの肉は何なんっすか、試してみるしか無いっす。

 確かこのベルを鳴らすと『御決まりでしょうか御嬢様』給仕係が来るっすね。


「えぇ、出来ましたら彼方の殿方と同じモノをお願いしたいのですけど」

「畏まりました、直ぐ御用意致します」


 さてさてどんなヤバいお肉なのか、少しだけ楽しみっすよ。

 

「大変お待たせ致しました、ゴブリンの股肉を使ったステーキになります。ゴブリンの生き血のワインと合わせて、お召し上がり下さい」


 はぁ……ゴブリンの股肉……ゴブリン肉!? そりゃ臭い訳っすよ! 何でゴブリン肉なんて出してるっすか!? 

 どんなに空腹の魔物でも喰わないと言われているゴブリンの肉を何でこんなオシャレなお店で食べないといけないっすか!?

 でも頼んだからには食べないとっ、給仕がジッと見てくるっすぅううう!!

 うぅっ、臭いっす……先ずは飲み物で口の中をまもっぷっっっ!? 生臭ぃいいい!! 危うく吹き出す所だったすよ!!


「そうでしたわ、さっきゴブリンの生き血って言ってましたものね……」


 何であそこの席の人は、あんなに美味しそうにゴブリン肉を喰えるっすか。こんな肉を喰えるとしたら、それこそ不死族系の魔物だけっす……まさか、あの男が魔物────な訳無いっすよね。店で堂々と食事する魔物って、どれだけ知能が高い魔物っすか。


「御嬢様、お召し上がりになられないのですか?」


 おっと、不審がられちゃ不味いっす。

 はぁ……後で胃薬買いに行くっす。


「大丈夫よ、頂くわ……ムグムグ」


 ぎゃわぁああああああ────!? 

 口の中で生臭さと腐臭とゴミの臭いが合わさってそれを纏めるのはさっき呑んだゴブリンの生き血でこの世の汚物を詰め込んだかの如き肉の塊からぬめっとした廃汁が滴りその臭いが鼻を突き抜けて空間を支配する一種の呪いであろうというか絶対食べ物じゃ無いっすぅうううううう!?


「大変にっ美味ですこと、友人にもお勧めしたい程ですわ」

「有難う御座います、また何か御座いましたらお呼び下さいませ」


 やはり食べれるかどうかを見ていたっすね。今直ぐにでも御花畑で吐き出したいっすけど、食べ切るまでは動けないからヤバいっす。

 こんな場所に調査に行かせるなんて……絶対今度、陛下に食べさせてやるっすっうぷっ!?



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