間話 対外的な準備物.3
黒姫の背に乗ると、ジアストールの王都まで一瞬……とまではいかないけど、昼前には普通に着いたよ速えぇな。
龍の姿のままだと流石に不味いので少し手前で降りてから、懐かしき正門に到着した。
「ここで俺、全裸になったんだよなぁ……」
「いや全裸てなんぢゃ!?」
「パパが公衆の面前で全裸……なんで?」
「門兵が悪いの! お父さん怒らせたの!」
ミルンさんや、その言い方だと、俺が怒ったら全裸になる変態に聞こえるから駄目だぞぉ。
「それじゃあフリーパスで入ろうか」
「お父さん、水晶触らないの?」
「触らないぞ、俺には特権が有るしな」
そう言って正門の人の列を横目に進むと、『止まれ貴様! ちゃんと列に並ばぬか!』って普通に槍向けられて怒られたんだけど、ルシィの奴通達してないのか?
「城塞都市ファンガーデン代表の流だ、通してもらうぞー」
「止まれと言っている! 誰か来い! 侵入者だ!!」
槍を退けてくれない……。
後で王城に魔法ぶち込もうかなぁ。
「やっぱりここの門兵は質が悪いの!」
「パパに槍を向けてる……埋める?」
「待つのぢゃミユン、少し様子を見るのぢゃ」
あぁ、奥からガチャガチャと門兵集まって来たよマジでうぜぇ『怪しい奴め! その様な穢らわしい獣を連れおって何を考えている!』コイツら全然変わって無いぞルシィ!?
「人変わってるのに中身一緒の屑じゃん……」
「お父さん! コイツぶん殴るの!」
「溶かして肥料にするの!」
「城ごと滅するのぢゃ!」
あの時と違ってこちとら戦力過多だから、門兵なら一瞬でこの三人に細切れにされるぞ。
「貴様等何をしている!!」
誰か来たな、あれは──「貞操帯さんじゃん」
立派な服を着て、ちゃんと出世してる様で何よりだな。
「書記官殿! 怪しい奴が門を通ろうとしているのですお下がりを!」
「怪しい奴だと────ひっ!? 流さん!」
手をヒラヒラさせて挨拶したら一瞬貞操帯さん怯えたな……なんでだよ。
「書記官殿お下がりを!」
「全員武器を下げなさい!! 貴方達は誰に刃を向けているのか理解しているのですか!!」
急に貞操帯さんキレたんだけど……怖えぇ。
「何を仰るのです!? この様な不審者など、王都に入れる事は出来ませぬぞ!!」
「この方があの魔王だとしてもですか!!」
その一言で────門兵達が固まった。
「ちゃんと似顔絵付きで通達したでしょう! そちらの流さんは陛下より特権を授かり、国内であればどこでも──例え王城であっても、自由に出入り出来るのです! 万が一それが害されれば他国に魔王が行ってしまい、我が国の脅威と成るのですよ!!」
なんだちゃんと仕事してるじゃんルシィ、取り敢えずこの門兵だけ絞めとくか。
「と言う訳なのだが、お前……俺の家族に穢らわしいとか言ってたよな」
「玉潰すの! 乙女にします」
「畑の肥やしにします」
「尻にブッ刺すのぢゃ」
「流さん! 皆さんも落ち着いて下さい!」
貞操帯さんが何と言おうと、コイツは言っちゃいけない事を言ったんだから、ちゃんと絞めとかないとね。
「ひっままま魔王さささ様っとはしし知らずっ、もっもっもうしわわわ────」
ありゃ、立ったまま失神したぞ。別に俺、まだ威圧とかして無いんだけど……何でだ?
「お父さん、若干角が生えて威圧だしてるの!」
ミルンの言葉で頭をさわさわ……どうやら怒りで知らない間に出てた様だな、解除っと。
じゃあこの門兵、若干精神汚染喰らってるじゃん……まぁ良いか。
「今のうちに畑に撒くの!」
「尻がガラ空きなのぢゃ!」
「流さん止めて下さい!」
いや、別に止めなくても良いだろ。
畑に撒かれて尻に穴が開くだけだからな。
「あっ、忘れる前に、俺今魔王じゃ無くて魔神になったから、通達変更よろ」
「魔神って何ですか流さん!?」
魔神って何かと聞かれたら……魔神だろ。
違うか……改めて聞かれると、魔神って何だろうか。
「魔神って何だろうか貞操帯さん……」
「御自身で言っておきながら私に聞かないで下さい! あと私の名前は『ラナ・セルブ』です! いい加減貞操帯はやめて下さい!」
そうだラナさんだった、忘れてたよ。
「んじゃ俺達行くから、この門兵の──あれ、アイツどこ行った……」
「土に帰しました!」
「生きたまま埋めたの!」
「我は知らぬのぢゃぁ」
外に埋めて来たって早いな、流石に死なれちゃ目覚め悪いからラナさんに掘って貰うか。
「ラナさん救出よろ」
「何故私ですか!?」
◇ ◇ ◇
「んで、おばあちゃんの洋服屋で色々買い漁った訳なんだよ。取り敢えずあのパゥンって奴は都市から追放なドゥシャさん」
「畏まりました旦那様。御迷惑をおかけし、誠に申し訳御座いません」
ドゥシャさんがちょっとしょんぼりした顔になってて少し可愛い。
「だから言ったではないですかドゥシャ、あの商人は少し胡散臭いですわと」
「はい、シャルネの言う通りで御座いましたね」
ほぅ、シャルネはあのパゥンが獣族に嫌悪感と言うか、差別的な人物だと気付いていたんだな。
「なんでシャルネは気付いたんだ? パッと見ただけじゃ分からんだろ」
「それは、店を出す際に、走り回る獣族達、特に角族の子供を見た時の目が嫌悪感に満ちておりましたの。あれは駄目すわ」
角族限定か……そりゃドゥシャさんには分からんわな。だってドゥシャさん、犬耳に嫌悪感出してる人なら分かるけど、それ以外は普通だからね。ミルン特化型ドゥシャさんだ。
「お恥ずかしい限りで御座います、今後は他の者の意見も聞いた上で判断致します」
「そうした方が良いな。この都市は多種族が入り乱れた都市だから、迫害や差別は絶対的に取り締まらないと終わるからね」
人だろうが獣族だろうが公平に裁きます。
なので、逆に獣族が人を差別したとしても、ちゃんと裁きますからね。
「そういや、あの三人はどこ行ったんだ。帰って直ぐに荷物を持って、走って行ったけどさ」
「ミルン御嬢様達は他の子供達と遊ぶとかで、湖へ向かわれましたね」
元気なのは良い事だ。
出来得るなら子供達には、種族的な差別の無い住処にしたいもんだな。
コンコンッ────「失礼します!」
誰か来た様だ、急ぎか?
「なんだネリアニスさんじゃん、お久だけど──どうしたそんなに怒って?」
「流さん! 急いでっ、商業門へお越しください!」
なんだよそんな顔で……血管出てるぞ。
「魔物の群れが普通に列に並んで入ろうとしています!!」
「なんじゃそりゃ……」
「ネリアニス様、御冗談が過ぎます」
「魔物って、そこまで頭が良く無い筈ですわ」




