表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界とは愛すべき者達の居る世界  作者: かみのみさき
三章 異世界とは妖精さんが居る世界
234/317

間話 対外的な準備物.1



 大きな地震があった日から二ヶ月が経ち、都市の至る所で倒れた家屋の復旧も済んで俺はのんびりと、ミルンを肩車、ミユンを抱っこしながら服飾店に足を運んでいた。

 黒姫はミユンを見ながら『我の場所が取られたのぢゃ!?』と涙目だったけど、ミユンが『黒姫お姉ちゃんは優しいお姉ちゃんなの!』と言うだけで黒姫はデレデレし始めて、今は後ろをのぢゃのぢゃと歩いてくる。


「あそこか、ファンガーデンに服屋が出来てたなんて、俺知らなかったなぁ……」


 商会長のドゥシャさんが色々と、職人達を集めては何かしてるなぁとは思ってたけど、まさか服や宝飾品にまで手を出しているとは……万能メイド過ぎるだろ。


「ここはミルンの大好きな場所なの。キラキラした物が多くて楽しい!」

「魔石があったら欲しいです! 土弄りの為にパワーアップするの!」


 ひかり物が好きなミルンにとっては天国だろうけど、ミユンさんや……また食べるのか。


「魔石なぁ、俺も吸収出来るみたいだけど……まさか食えと言うのか!?」

「ミユンの真似をするで無いぞ流、スキルならば手に持って力を意識すれば良いだけなのぢゃ」


 食わなくて良いのね、良かったぁ。

 因みに何で俺達が服飾店に向かっているかと言うと、朝っぱらから王都の使者が来て、『陞爵の儀には参加せずとも、身なりだけでも貴族としてしっかりして下さい』という女王からの言伝があり、ドゥシャさんやシャルネ、ミルンやミユンや黒姫までもが頷いて、こうして仕立てて貰う為に出向いてます。

 ドゥシャさんが『旦那様自ら行かなくとも』と言ってたけど、普通の家屋に住んでるから貴族的にはどうなのって言ったら渋々了承してくれた。


「屋敷も建築中だからなぁ……」


 魔龍の川近くの城壁を拡張して山の斜面をくり抜き、その部分に俺の屋敷が造られている真っ最中……王城じゃないんだからデカ過ぎないか。


「さて着いた……よし、ミルン、ミユン、黒姫、分かってるよな」

「もちなのお父さん」

「なんの事なの?」

「またなのぢゃ! またなのぢゃ!」


 それじゃあドアをゆっくり開けて────

「いらっしゃいませお客────」

「金は要らん服を出せ!」

「御洋服よりもお菓子を出すの!」

「お菓子と魔石を献上するの!」

「のぢゃ!? えーっとっ、のぢゃ!!」

────やっぱり黒姫だけが微妙にズレる。


「あぁ、小々波様でいらっしゃいますね、ドゥシャ様より承っておりますので、こちらの部屋へどうぞ」


 糞っ、どうやらいつの間にかドゥシャさんに先を越されていた様だな、店員に一切の同様が見られない。


「お菓子を要求します!」

「魔石を献上するの!」

「畏まりました御嬢様方、お菓子と、安価では御座いますが砕けた魔石を御用意致します」


 何ここの店員の対応……絶対ドゥシャさんが関係してるでしょ。


「我はお茶で良いのぢゃ」

「えっ……畏まりました、毒濃味茶をお持ち致します」


 黒姫だけ雑対応って何でだ?

 しかも毒濃味茶って何茶だよ、絶対不味い奴だろ。


「我だけ素っ気ない態度なのぢゃ……」

「もしかして黒姫だけペット枠なんじゃぁ」

「我はペットでは無いのぢゃ!!」

「お部屋へ行くのー!」

「魔石たべるの!」


 店員に案内された部屋へ入ると、成程これは所謂上客用の商談部屋だ。

 ソファも革張りで作りが良いし、テーブルの上には焼き菓子やフルーツ等、自由に食べて下さいと言わんばかりに盛り付けされた皿が置かれている。


「いらっしゃいませ領主様、私、こちらで商いをさせて頂いております、パゥンと申します」

「ああ、宜しくパゥン」

「ミルンです! これ食べて良い?」

「ミユンです! 魔石がないの!」

「我は黒『どうぞお召し上がり下さい、魔石ももう直ぐ御用意できますぞ』のぢゃっ!!」


 黒姫の自己紹介中にパゥンが被せて来たからのぢゃのぢゃ怒っちゃったじゃん。こいつ怒ると面倒なのに……何してるんだよ。


「何故我だけ雑扱いなのぢゃ! 流石の我とて怒るのぢゃ!」

「まあまあ黒姫さんや、ここは大人の態度で許しておあげなさいな。もしかしたらドゥシャさんが、変な事伝えたのかも知れないしな」


 マジで黒姫だけダイレクトイビリだよ。

 何考えてるのドゥシャさん。

 

「それで、こちらがドゥシャ様より御指示があった品になります。どうぞ試着なさって下さいませ、細かい修正も必要になりますので」


 うわぁ……側から見たら豪奢な軍服だぞ。

 俺に似合わない白地に金の刺繍が所々に散りばめられ、地球で言う所の中世の貴族服と言うよりも、現代の士官服を豪華にした様な見た目だな。

 取り敢えず着てみたけど……似合わん。


「お父さん……似合わないの」

「パパに白地はダメです、せめて黒なの」

「悲しい程似合わぬのぢゃ」

「大変お似合いで……御座います……」


 こらパゥン嘘吐くなよ。

 ミルンやミルンや黒姫はな、絶対御世辞は言わないから間違い無く似合って無いんだ。


「うん、白地は却下だな。せめて黒地にして、金の刺繍も胸と袖だけだな」

「もっ、申し訳ございません! 直ぐお持ちしますので暫くお待ち下さい!」


 やっぱり用意してやがったな。

 白地の服は誰の要望だろうか……まて、白の正装っ!? 絶対買わないからな!!


「あの服絶対婚礼用だろ……危ねぇ」

「ドゥシャも敵が多くて必死なの」

「魔石来たの! もちゅもちゅ……」

「あの感じぢゃと、白地の服はドゥシャとシャルネ、二人の仕業やも知れぬのぢゃ」


 俺まだ結婚しないし、頼むから小細工を仕掛けて来ないで欲しいなぁ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ