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異世界とは愛すべき者達の居る世界  作者: かみのみさき
三章 異世界とは妖精さんが居る世界
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馬鹿が魔神と成ったなら.4



 朝の吹き抜ける風が心地良い。

 城壁の上で、俺は遠目にミルンとミユン、黒姫が土弄りをしているのを眺めながら、ゆっくりと背伸びをする。

 ミルンは転生した母さんの娘で、黒姫とミユンは遥か昔、複製体ではあるが父さんの仲間だった。

 

「んで、主の命令とやらでリシュエルを探していた御使か……」


 最近リシュエルの忌々しいアナウンスが無いんだよなぁ。御使達を退けた後なら、嬉々としてアナウンス鳴らしそうなのに。


「リシュエルの気配を纏ってるねぇ、そりゃステータスにあるからなぁ」


 父さんは半不死になってリシュエルの枷を外してたけど、その外し方が今一理解出来ん。


「にしても……妖精ってうじゃうじゃ居るのな。よく見たらミユンの周りにくっついてるし、あれは──何の妖精だ?」


 害は無いだろうし、ミユンの方が格としては上だろうから大丈夫だろうけど、鬱陶しそうに払ってるな。ミルンなんか、気配の方に向けて可愛いパンチで追い払ってるし。


「ふぅ、それじゃあやりましょうかね」


 昨日は眠くてやらなかった事。

 女神アルテラがこの地に居なかったら、流石に黒姫だけじゃあ護れなかっただろうし、世界樹と成ったミユンの姉が居なければ、俺が居ても力不足で詰んでいただろう。


 一つ言える事は、俺の大事な家族を危険に晒した奴がいる。

 リシュエルと、御使達の主という者。

 リシュエルは見つけたら殴るとして、じゃあ主とは誰なのか……神様だよな。

 

「意識を集中……集中……集中……」


 イメージするのは昨日の姉妹砲。

 但し、今回はオリジナル神殺しを使わずに、俺の魔法で再現してみます。だって、昨日の姉妹砲の威力が思った程強くなかったからな。

 と言うか、やっぱりリシュエルが悪い。

 今回なんてアイツの所為で御使達が来た様なものだし、なんなら全部の元凶がアイツに起因している気がしてならない。でも、リシュエルも御使なら、それを管理する上司の職務怠慢とも考えられる。じゃあ、今回の件も含めて纏めて主とやらにぶつけても、問題無いよね。


「集中……『神域への扉』っと」


 おぉっ出来たな。


 雲より僅か下に現れた輝きを放つ豪奢な扉。

 その扉の先には──輝きを放つ扉とは真逆の、蠢く闇が広がっていた。


 地獄の門ではなかろうか、どう見ても神域に通ずる空間には見えないんだけど。

 別に俺が扉を通る訳じゃ無いから良いんだけどさ、見てくれ悪すぎるだろ。


「準備完了! 魔神に変!身! 言ってみたかったんだよな──!」

 

 さぁ、ちょっくら神様に、お仕置きだよ。


「すぅううう──っ、部下の管理ぐらいちゃんとしろや糞ボケがぁあああ────!!」


 空に向けて魔法を撃った。

 うん、俺はちっとも成長してないよね。

 少し考えてみて欲しい。

 魔王の時に放ったミルン砲は、空間を裂き、リシュエルの棲家を貫いた。

 魔王の時でそれだ。

 じゃあ魔神に成った今の俺が、魔法を全力で撃つとどうなるか──「そうなるのかぁ」


 ファンガーデンを覆い尽くす程の巨大なミルンとミユンが、扉に向かって飛んでいく……。

 ミルンは輝く斧を持ち、ミユンと仲良く手を繋いで扉の先へと進んで行く……。

 そして少しして扉が消える瞬間、『やめてくれぇえええ──!!』と老人の悲鳴が大地を揺るがした。


            ◇ ◇ ◇


 真っ白い空間で転生神は腕を組んで胸筋を膨らませながら、リシュエルの捕縛を命じた者達からの報告を待っていた。


 彼奴等からの報告が来ない。

 リシュエルを捕縛する様命じてから少し経つが、毎日報告する様にと伝えているにも関わらず報告が一切来ない。


「まったく……何をしておるのじゃ」


 他の神に聞いてみたがリシュエルを見た者は居らず、地上に居るにしても、儂等に見つからないとはどう言う事なのかが分からない。

 普通なら気配を察知して、捕まえていてもおかしく無い程の時間が経っている。


「やはり、儂の眼を欺く手段を持っておるのか」


 神域に居らぬと言う事は、地上の何処かに隠れておるか、若しくは何者かに姿を変えておるのやも知れぬな────!?


     ──────ピシッ──────


「何じゃっ儂の領域に亀裂が!?」


 何者じゃっ! 儂の領域に亀裂なぞあの『神殺し』であっても不可能なのじゃぞ!

 まさか他の神が攻めて来おったのか!?

 いや、その様な馬鹿者なぞ、この神域に存在する筈が無いのじゃ!


「────来る!」


     ──────パリィンッ─────


『股潰す! 玉潰す! 股潰す! 玉潰す!』

『もちゅもちゅ! もちゅもちゅ! もちゅもちゅ!』

 

 何じゃコレは!? 魔法生物っいや、これは──我等に連なる魔法!!


「これはいかん!」


 すかさず自らの杖を取り出して力を行使しようとするが──「何故力が出ぬのじゃ!?」


『玉潰す! 股潰す! 玉潰す! 股潰す!』

『もちゅもちゅ! もちゅもちゅ! もちゅもちゅ!』

「しまっ────」


 狙われている場所はただの一つ。

 そこに振り下ろされる斧。

 切り落とされたモノ。

 切り落とされたモノを喰われ、弾け飛ぶその魔法を見て、儂は────心からの叫びを上げ、生まれて初めて、意識を失った。


 後にアルテラから聞いた話だが、神域と地上が繋がっている間は、地上への影響を考慮して神の力が弱まり、強い神ほど制限されるとの事。

 そんな事、地上に行かないから知らなかったわ。


「なんで貴方、少し内股なのよ」

「煩いわよアルテラ、無くなったから仕方ないじゃないの」


 アルテラからクレームを聞いて直ぐ、転生神(乙女)は直ぐに行動、神域に一つのルールが定まった。


 地上の魔神、小々波流には手を出すな。



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