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異世界とは愛すべき者達の居る世界  作者: かみのみさき
三章 異世界とは妖精さんが居る世界
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むかーしむかしある所に.2



 緑豊かな草原で、俺とミルンとミユンで鬼ごっこをしている。


 鬼は勿論ミルンとミユン。


 二人の手には懐かしき豚野郎の斧が煌めき、『お父さんの股間潰すの』とミルンが口から涎を垂らし、『魔王の股間もちゅもちゅするの』とミユンが溶かす気満々の酸を口から垂らし、二人は嬉々として俺を追いかけて来る。


 俺は何故か走る速度が出せず、徐々に──、徐々に──、二人が迫って来ており、足を止めたら即男のアラフォーバージョンに成る事間違い無しであろう。


 ふと、前方から何かが迫って来る。

 二人に追いつかれまいと走りながら目を凝らし、前方から迫って来る存在を確認すると、俺の口から『ひょぇっ』と良く分からない音が出てしまう程に動揺してしまった。


 だって──豚野郎の大群だぜ、虎馬さんが走馬灯宜しく頭の中を駆け巡るよ。前方の豚野郎に後方のバーサーカー(股間潰しの達人)って、間違い無く俺の玉獲りに来てるよね。


 でもこの距離なら大丈夫だ、『豪炎』の一発でも放てば豚野郎なんてただの焼豚だ。

 いくぞ『──豪炎!』っ焼豚になれや!

 セーフアースのタコとイカをただの食材に変えたお馴染みの魔法が────ポッと小さな火しか出ないんですけど……なんで? 


 あっ、ああああああああ来るな豚野郎ぉおおおおおおおおおおおおお『プギャアアア!』、『玉潰す股潰すの!』、『もちゅもちゅ!』おおおおおお!?


 俺は全力で右へ方向転換して走った。

 顔から涙や鼻水や涎を撒き散らしながらみっともなく走った。


 己の尊厳を守る為に、ただ広がる草原を。


 どれくらい走ったのか、草原を抜けて砂利道となり、更に抜けて砂の大地に辿り着いた。

 いつの間にかミルンやミユン、豚野郎の追っ手が居なくなっており、俺はただ一人、砂の大地を進んで行く。


 暑い……照り付ける太陽の光で、今にも乾燥肌になりそうだ……水が飲みたい。確か空間収納内にまだ水樽があった筈────ステ画面が出てこないぞ、マジで意味分からん。


 おっ、遠くで誰か立っている。

 丁度良い、水を持ってたら少し貰おうか。

 ステ画面が出てこないと何も取り出せ無いし、さっきの魔法といい一体どうなってるんだ。

 おーいそこの人ー、水を持ってたら分けて欲しいんだけどー、聞こえてるかー。


 少しずつ近付いて行ってるけど、一向に反応が無いのは無視されてるって事か? なんだよこっち見て来たじゃん。何か凄い見たことある様な若いにーちゃんだなぁ。


 よいっしょっと、ようやく着いた。

 日本人っぽい顔してるけど、なんで俺を凝視してるんだよ初めまして!


「なんでここに居る……」


 えっ、なんでここに居るかって知らんがな。いつの間にかミルンとミユン二人に追いかけられてたんだから。と言うか此処どこ、アンタ俺の事知ってるのか?


「流……そうか、コレは世界樹の記憶共有か」


 やっぱり俺の事知ってるじゃん。

 でも俺はアンタの事を知らないんだけど、いや、何処かで見た事ある様な感じなんだけどもさ、何処で会ったっけ?

 

「少し老けたな……見た目だけなら俺より歳上になったか……」


 誰が老け顔だこのガキ! いや、その言い方だとその見た目で俺より歳上なのか!?


「流がいつの時代にこの世界に来たのかは知らんが、どうやら世界樹が渡りを担ってくれたらしいな。保険が効いた様だ……」


 なんで保険なんて言葉、アンタ異世界人か! 


「流、俺は死ね無い身体になっているから、お前の時代にも何処かに居るだろう。いつか会いに来い」


 人の話聞けよガキ!? 死ねない身体ってなんだ龍にでも成ってるって言う気か!

 

「今から俺の記憶をお前に埋め込む。大量の情報がお前の頭の中を掻き乱すだろうが、妖精を助けたければコレに耐えろ」


 はっ? 何言ってるんだこのガキ……俺にアンタの記憶を埋め込むってどゆこと?


「いつか、また会おうな……最愛の息子よ……」


 あれ、そうだよこの顔……父さんの若い時の写真にそっく────「父さんっ」────ぐぅうううううううううう頭がっ、割れるっ、何だよコレっ、マジかっ掻き乱すってレベルじゃねぇええええええええ!?

 この記憶量っ、激やばじゃねぇえええのぉおおおおお!!

 

 俺より冒険してんじゃねぇえええ────!?



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