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異世界とは愛すべき者達の居る世界  作者: かみのみさき
三章 異世界とは妖精さんが居る世界
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語りべの精霊.4



 『語りべの精霊』が初めて確認されたのは、かつて神々と魔王が戦っていたとされる古の時代にまで遡るとされる。

 他の精霊と比較しようが無い程に稀有な存在であり、文献にも僅かしか載っていない。


 一般的にはと言う注釈が付きますが。


 およそ五百年ほど前、丁度魔王と黒姫様がいちゃついていた時でしょうか。魔王、師、黒姫様の他にもう二人、魔王の側でお茶を淹れたり掃除をしていた妖精の姉妹が居ました。

 魔王と黒姫様、師と私にしか姿は見えず、その所為で良く周りから病を疑われたりもしましたが、それでも魔王はその妖精達を見放さずに、まるで家族であるかの様に接しておりました。

 そんな優しい日々が続いていた時、ふと──妖精の姉の方の様子がおかしい事に気が付いた私は、師を直ぐに呼び容態を確認して貰いました。師は妖精の姿を見て顔を曇らせ、私にこう言いました。


『語りべの精霊となっている。何かが力を貸さねば妖精が精霊へと成る事など有り得ない。力を貸した者を消さなければこの精霊は助からない』


 語りべの精霊は、語り終えたらその存在が消えて無くなると言うのは知られているが、語る事を止めたとしても役目を全う出来ないとして、その存在が消えて無くなる。

 助ける方法はただ一つ。

 力の源を断ち切り、精霊から妖精へと元に戻す事。


 結局力の源を探し出す事が出来ず、それならばと魔王は精霊と二人きりになりその語りを聞いたのだろう──戻って来たのは魔王一人で、残った妹の妖精に何かを伝えていた。そして魔王は袋から枝を取り出して妖精に差し出し、妖精はそれを受け取ると何処かへと姿を消した。


 私が次にその妖精と出逢ったのは、ファンガーデンに世界樹が復活した時でした。

 私は姿が見えるだけで話は出来ませんので遠くから見るだけでしたが、時折黒姫様が『のぢゃのぢゃ』と話をされていたのを見ております。

 いつの間にか消えており、ミルンさんが知らない精霊を連れて居て、今まさに『語りべの精霊』に関する事を知りたがっている。


「同じ事が、また起きているのですね……」


            ◇ ◇ ◇


「以上が、私の知る語りべの精霊に関する情報です」

「知りたい事全部知ってた……年の功なの」


 目付きが鋭くなったけど、今のは褒め言葉です。

 これでミユンを助ける事が出来るの。要はミユンに力を貸している存在を消炭にして、ミユンを妖精さんに戻せば良いだけなの。

 妖精さんに戻ったら……ミルンには見えなくなっちゃうけど、ミユンの命を護る為なので我慢するの。


「誰がミユンに力を貸してるのか……」


 あの御使のリシュエル? 違う気がする。

 じゃあアルテラ……あの桃色さんは食っちゃ寝しているだけの変神だから関係無いの。

 確か前にリティナが何かを言ってた様な── 『そのミユンちゅう精霊な、世界樹と同化しとるで』──っ、世界樹と同化!


「ミユンは世界樹の力を貸りて語りべの精霊になったの! 前にリティナが──ミユンは世界樹と同化してるって言ってた!」


 世界樹を消せばミユンが助かる! さっさとあの木を木材に変えるの!


「待って下さいミルンさん、語りべの精霊が世界樹と同化しているなど有り得ません。同化するという事は──片方が消えたら、同化している片方も消えるという事ですよ」


 なんで……世界樹が消えたらミユンは妖精に戻らないの? ミユンも消えちゃうって事? でもこのままだとミユンが消えちゃって、護る為には世界樹を消さないといけないのに、その世界樹を消したら同化しているミユンも一緒に消えちゃう……。


「ミユン…消えちゃう……」


 震えが止まらない。

 今さっきまで護れると思っていたのに、このままじゃ何をしてもミユンが消えちゃう。

 頭が回らない。

 息が……苦しい……。

 お父さん……お父さんならどうにかっ。

 

「ミルン君!! 心を強く保ちたまえ!!」

「──村長っ、でも、このままじゃ!」

「ならば皆で考えれば良かろう!! 今の話で大体の事は分かったが、ミルン君だけでは手詰まりなのであろう!! ならば周りの者達を頼らぬか!! 流君なら──無理と決めつける前に足掻いて足掻いて足掻きまくるぞ!!」


 そうだ──お父さんなら諦めない。諦めずに足掻いて足掻いて時々逃げて、可笑しな事をしてしれっと助けるの……。


「よく分からないけどミウも手伝う」

「メオもいるのでちゅ」

「私も失言でした、解決策を考えなければなりませんね」


 私だけじゃ無理でも、このファンガーデンには沢山の仲間が居るのだから、その全員に助けを求めたら良いの。

 ミユンには知られちゃうけど、このままじゃジリ貧だから仕方無い。


「村長! 城塞都市ファンガーデン代表代理の権限を執行するの! 全住民に情報を求めます! 有力な情報にはミルンのお金を全て渡すの!」


 リティナから接収し続ける権利を譲渡すれば、お城を建てるぐらいのお金になるの!


「……焚き付け過ぎたやも知れぬ」

「ミルンが元気になった!」

「目が怖いでちゅ……」

「流さん……早く帰って来て下さい……」


 ミユンを絶対助けるの!!



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