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異世界とは愛すべき者達の居る世界  作者: かみのみさき
三章 異世界とは妖精さんが居る世界
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間話 小々波流の一人旅.3



 ハーピィって大食漢なのな。

 豚野郎の煮込みを明日の朝の分まで作ってたのに殆ど一匹で食い尽くしやがった。んで、今は膨らんだ腹を守る様にまるまりながら、俺に羽根を触らせてます。


 ハーピィの羽根。その肌触りはあのミルンの尻尾と甲乙付け難い質感であり、"ふわふわ"であり"さらさら"である。ミルンとミユンが居たら、間違い無く俺と同じくこの羽根を撫で回すであろう。


「ピィーピュー『あーそこそこ』」


 翻訳内容が合ってるのかと疑問に思うが、このハーピィが嫌がって無いので、当たらずも遠からずといったところだろう。


「なんでこんなに懐くかね……」


 魔王スタイルならいざ知らず、今現在は威圧も出して無いし角も生やしていない。しかも合った時は叫ばれたのに、今はこんなにも触らせてくれる……なぜに。


「ピピュピュアッ『お母様の気配がする』」


「急だなおい!」


 即用意していたテント等を空間収納内へ移動させ、辺りを警戒すると──翻訳機能が音声を拾ってるのか、『人種には我々の居場所が分からぬ様だ』とか『なんでエトワルはあんなに無防備に寝てるのだ!』とか、ある一定の方向に視線を向けると、文字が右目に表示される。


「敵感知にも使えるなコレ……」


 その方向を見ても何も無く──いや、一瞬透明な何かが動いた様な気がする。ハーピィってあんな特性有ったっけ?


「風景に擬態してるのか、凄いな」


「ピュアピピピッ『褒められたー』」


 いや別にお前を褒めた訳では無いが。

 良く見ると草木や地面に違和感があり、俺にバレていないと思っているのか雑にも程があるぞハーピィ達よ。


「じゃあ軽ーく威圧さんカモーンぬ!」


 あっ、なんか調整効かないぞヤバい。

 パタパタと飛ぶ鳥を落とす勢いで、ハーピィ達が落ちて来たり地面に倒れたりと姿を現し、白目を剥いたまま動かない。


「ピピピピピッ『恐わわわわっ』」


 また翻訳バグったな……。

 さっきまで丸まっていたハーピィまでもが更に丸まり、ガタガタと震えている。

 そんなに震えんでも良いじゃ無いか。本来ならコッチが震える立場の筈なんだかなぁ。


「……今なら安全に離れられるか。すまんかったなハーピィさんや、コレ仲間達と分けなされ」


 空間収納から牛さんブロック肉を出して、震えるハーピィの頭を一度撫でてからゆっくりと移動する。


「ピィ……」


 後ろから一瞬声が聞こえたけど、そっちを向いてないから翻訳できんし、振り向いたら駄目な気がする。


「──元気でな」


 そう言ってから全力疾走でその場を離れた。

 だって──あの場に居たら、またあの羽根をモフモフしたくなるんだもの! 

 この辺りには他の魔物は居ないし安全だろうから、あのハーピィだけでも起きていれば大丈夫だろ。


         ◇ ◇ ◇


「────っエトワル!!」


 目を開けて周りを見ると娘達が倒れており、直ぐに容態を確認して安堵する。

 いつの間にか意識を失っていた? いや、あの時──あの人種から発せられた殺気で気絶したのか……。

 あれは以前にも一度感じた事がある。

 私がまだ幼い時に出会い、私以外仲間や母を殺し尽くした魔王という存在だ。


「なぜ我々は生きている……」


 確かに……以前私が出会った魔王では無い別の個体であったが、見た目は人種なのだ。あの様に気絶している我々なぞ、捕まえるか殺すなどして、町なる場所で売り払うなりする筈なのに……なぜだ。


「お母様起きた!」


「おぉエトワル! 無事だったのか良かっ……何を食べている?」


 エトワルが無事だったのは嬉しいが、あの人種が残した火にエトワルが肉の塊を近付けて、若干良い匂いがしたところで──モソモソと食べている。


「皆んなで食えってあの人種がくれた!」


 エトワルの言っている事が理解出来ない。

 あの人種がくれた? 

 我々に獲物を?

 そんな馬鹿な話があるモノか! 人種なぞ、我々からしたら食うか食われるかの天敵であり、先程の人種はもしかしたら魔王なのかも知れないのだぞ! それが何故我々に何もせぬのだ!


「あの人種、私の羽根を優しい目で撫でてた! しかも私の言葉理解してたの!」

 

「なんなのだあの人種……、また求婚をして逃げたのか。しかも人種が我々の言葉を理解しただと……有り得ぬ事だぞエトワル」

 

 我々の言葉を理解出来る人種なぞ会った事も聞いた事もない──が、確かにあの人種は我々に対して一切攻撃をしてこなかったな。挑発はしてきたが逃げるばかりで、人種ならば騒ぎ立て襲って来るのに……不思議な奴だ。

 

「お母様……私あの人種と一緒に居たい。怖がってしまったのに獲物をくれて、やさしく頭を撫でてくれたの」


 エトワルは余程あの人種を気に入った様だ。だが、我々は人種から魔物と恐れられる存在であり、エトワルがいくらあの人種を気に入ろうとも狩るか狩られるかしか無いのだ。

 しかし、番にするという掟を守る為には、あの人種が居らねばどうする事も出来ぬ。


「仕方あるまい。ならばエトワル、お前は人種の言語を覚えて、羽人族に擬態してあの人種を追うが良い。それが出来なければ、お前は追放──二度と戻って来れぬ様、羽根を折って置き去りにする」


 同じ有翼どうし敵対しておらず、羽人族ならば我々と話す事が出来る為比較的安全であり、確か──獣族等の多種族が住まう場所があると以前喰った男が言っていた。そこならば、我々が行っても即襲われる事が無いだろう。


「どこに羽人族は居るの?」


 確か──「ファンガーデンと言っていたな」

 魔龍の川が有る近くだと言っていたので、我々の速さならばそこまで遠くは無い。


「娘達が起きたら先ずはその肉を喰おう。何の肉かは知らんが、良い匂いだ」


「物凄く美味しいよお母様!」



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