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異世界とは愛すべき者達の居る世界  作者: かみのみさき
三章 異世界とは妖精さんが居る世界
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間話 小々波流の一人旅?.1



 行きは簀巻きで馬車の中で糞尿垂れまくりだったから気付かなかったけど、どうやらこの辺りは魔物の種類が違う様だ。

 俺が異世界に来て出逢った魔物と言えば、豚野郎にゴブリンとコカトリス、それにオーガや人魚にイカとタコ。

 今まさに俺を喰わんとしている魔物は、集団で空を飛び、立派な御胸様を隠さずに曝け出し、下半身に猛禽類の様な肉食系特有の爪を持つお姉様方。


「羽人とは違うんだよなぁ……」


 羽人族が間違われて狩られる原因の一つであり、地域によっては食用(意味深)とされる魔物──ハーピィ。

 俺の記憶だと、確か神様の使いだとか本に書いてた様な気がするけど、異世界だとマジでただの気の狂った露出狂だよね。


   ────キィエエエエエエッ────


 さっきからずっと金切り声をあげながら、俺を全力でロックオンして来るんですよ。発情期なんだろうか。


「空飛べるって言っても、今の俺は逃げ足だけは速いから捕まらないんだけどね」


 だから時折り立ち止まり、ハーピィに向かって「変態露出魔ばーかばーか」と煽りながら逃げてます。


   ────ギュイイイイイイアッ!────


 また金切り声上げたな。

 何であんなに激怒なんだろうか。やっぱり出会い頭に羽根をモフモフしたのが駄目だったんだろうか。それとも、モフモフした後に御胸様をガン見したのが駄目だったのだろうか。


 コテージを出て半日程歩いていたら、木の影で無防備にお休みしているハーピィ達を見つけて、羽根が気持ち良さそうだったから撫で回し、ついでに御胸様を眺めていた。そしたらハーピィ達が急に目を覚まして、俺と目が合った瞬間『ピィイイイイイ────!?』と鳴いたと思ったら襲い掛かって来た。


「何が気に触ったのだろうか──っと」


 時折り石を投げて来るから気が抜けない。

 まるで執念深い病んでる御嬢様だよね。

 おっ──目の前にコカトリス発見! と即捕まえて、「行け! 俺のコカトリス!」とハーピィに向かって全力で投げる!

 いい感じにハーピィの腕に収まり、見つめ合うハーピィとコカトリス。


   ────ピエエエエエエエッ!?────

   ────コケェエエエエエエ!?────


 瞬時にハーピィの一匹を石化させて地面に落ちていき、その石化ハーピィと地面に挟まれてコカトリスが圧死した。


「有難うコカトリス。お前の事は……忘れない」


   ────ピィイイイイイイイイ!────


 石化したハーピィに他のハーピィ達が群がって来たな。

 コカトリスがクッション代わりになって石化したハーピィに欠けは無く、仲間のハーピィ達が心配そうに石化ハーピィを見ている。


 良く見ると──石化ハーピィと他のハーピィ達の姿が若干違う。石化ハーピィには、他のハーピィ達には無い立派なモノが付いていた。

 お馬鹿の代名詞────立派なアホ毛が脳天から生えており、きっとコイツがハーピィ達のリーダーなんだろう。

 ツノ有りがリーダーだと相場が決まっているからな!


     ────ピィイイイ────


 さっき俺がモフったハーピィが、悲しい眼差しを俺に向けて来る……。


「おっ、俺の所為だってか……」


       ────ピィ────


 今にも泣き出しそうな声を出し、悲しい眼差しを俺に向けて来る……。ので、仕方無く今迄使っていなかった万能薬を取り出し、石化ハーピィに振りかけた。

 少ししたらピシッと石化ハーピィにヒビが入り、『ピュアアア!』と言う声と共に石化が解除されて、無事元の状態へと戻ったようだ。


 ハーピィ達がそれを見て安堵し、元石化ハーピィの周りを飛ぶ姿を横目に──俺はこっそりとその場から全力ダッシュをして森の中へと突撃。


「ふぃ……流石にこの森の中なら、見つかるまい」


 結構な距離を走ったので、流石に追跡は出来ないだろう。

 

「飯でも食べてから、元の道へ戻るか……」


           ◇ ◇ ◇


 ハーピィの長、『テトワル』は焦っていた。

 先程迄追いかけていた人種が気付いたら居なくなっており、空から人種が作った道なるモノを眺めても居らず、シュンと項垂れている娘の『エトワル』にどう説明したものかと頭を悩ませる。


「あの人種め、娘に求婚しておきながら逃げ出すとは……必ず捕まえねば」


 正直油断していた。

 たまたま寝心地の良い木があり、敵も居なかったので久々に熟睡していた。そうしたら、急にエトワルの悲鳴が聴こえ、敵かと飛び起きると──エトワルの羽根を人種が撫でまわし、あまつさえ見つめ合っていた。


 人種が決めたハーピィと言う種族名。別に何と言われようと構わないが、我々にも人種と似た掟と言うものがある。


『羽根に触れる行為は求婚であり、その際に目を合わせたら、必ず番いとする事』


 我々からは雄が産まれない。なので、道を歩いている人種や他の魔物を襲い巣に持ち帰って交尾をする際、掟にしたがって羽根に触れさせて目を合わしてから交尾をする。そしてその後に、大事な栄養源として喰うのだ。


「このままでは娘が繁殖できぬ……」


 別の男を当てがおうにも、先に番いの契りを結んだあの人種と交尾をさせねば、他の娘達が納得せず群れが崩壊してしまう。


「エトワルを……追放する事も考えねば」


 群れから離れてしまえば、十八番目の末娘であるエトワルは、容易く人種や他の魔物の餌食となり確実に死ぬであろう。


「お母様──」


「なんだアナワル」


 十二番目の娘『アナワル』が上がって来た。

 娘達の中で一番にエトワルを可愛がっており、エトワルが男を捕まえようとするとその男を殺し、エトワルが経験を積めない原因を作っている困った娘。


「あそこの森の奥──煙が出てるんですけど、まさかさっきの男じゃ無いですよね?」


「そんな馬鹿な人種が居ますか? 我々が遥か先迄見通す眼を持っている事なぞ、人種にはとうの昔に知れ渡っているのですから」


 そんな事をする人種なぞ、余程腕に自信がある者か、モノを知らぬ馬鹿かのどちらかであろうて。

 先程の人種がもし居れば間違い無く馬鹿の方であろう。逃げ足ばかり速く、あのコカトリスの一撃には驚いたが強者では無い。


「──あっ、エトワルが見に行った」


「大丈夫でしょう、放っておきなさい」


 万が一強者が居ても、逃げる事ぐらいならばエトワルにも出来ますからね。




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