エイドノア世界会議.2
俺の立ち位置を、本人の意向ガン無視で言い合う姿を眺めて一時間ぐらいだろうか。流石に疲れたのか、ルシィと傘音技さんは息を切らせて椅子へと座り、何とか落ち着いた様だ。
「それでは、議題に入りたいと思いますわ。今回流さんが発見した大地──その地の所有権をどうするかです。因みにアルカディアスの意向としては、その地は流様が発見した事と、その地へ行く手段が黒姫様しか無い事から──所有権は流様に有ると判断致します。しかし今回アルカディアスは中立の立場故、ここで決まった事に文句は言いませんわ」
いや、シャルネなら──文句は言わないが手は出しそうなんだけど。
「発見した者がその地を所有するというのには、賛成だけどね。その場合ジアストール的には他国を跨いでの領地となる訳だけど、そこはアルカディアスとして良いのかな?」
イケメン(死語)が揺さぶりをかけて来た
イケメン(死語)だけあって爽やかに言ってるけど、詰まるところはジアストールの国力増加を止めたいのだろう。
「御安心下さいハバノア代表。御父様いわく──『流殿一人でも、我が国は滅ぶ』との御言葉を皆様に伝える様、言われております」
レイズ国王余計な言伝頼むなよ!?
ほら──和土国と連邦国家の代表が、二人して俺を凝視して来たじゃん!!
「成程……新たな魔王は規格外か……」
「流石守護者様……。他国の王を既に傘下におさめているのですね」
んな訳あるかよ。
レイズ国王を傘下におさめても、実質的な権力を持っているのは王妃らしいからな。まだ一回も会った事無いし、絶対シャルネより化物だろうと想像できる。
「ふん、連邦も和土国も安心せい。ジアストールとしても、新たな地を我が国の物とする事は無いのじゃ。あくまでもその地は魔王の物。その地で何が発見されようと、我が国が取り上げる事は無い。発見されても輸送する手段がないからのぅ」
ルシィの奴しれっと嘘吐いたな。
最後の輸送する手段が無いってやつ。
俺の空間収納使えば、其れこそ生き物で無かったら好きなだけ持って来れるからね。女は怖いよ……嘘吐くタイミングが絶妙。
「それもそうだね。でも──魔龍は巨大だから、手ぶらで帰って来たって事は無いのだろう」
俺は黒姫って名前しか言ってないのに、黒姫イコール魔龍って知ってるんだな。和土国だけじゃ無くて──連邦国家の間者も紛れ込んでいるのかね。
「旦那様、宜しいでしょうか?」
ドゥシャさんが聞いてきたので頷いて、気絶している帝国を除いて代表二人に御披露目だ。
「毒無効効果付きの皿だ。俺がセーフアースで発見して、状態が良かったので持ち帰った。今回数枚しか持って来れなかったが──二人なら幾らで買う?」
数枚どころか山程持ってるけどね。
空間収納様々だよ。
「毒無効だって? 少し鑑定させてもらうよ」
「守護者様が仰るのなら、間違い無いでしょう。我が国の通貨をご存知無いかと思われますので、代わりに金十キロを御支払致します」
連邦国家のお付きさんは鑑定出来る様だな。
和土国は──信用している様に見えて、チラチラと連邦国家の方を見てる。
お付きの人がお皿を見て──冷や汗を流し、恐る恐る皿を置いて『アーティファクト』と口に出してしまった。すぐさま口を押さえたけど遅いよねーお馬鹿さん。
「はぁ……本物か。毒無効の皿なんて、割れた破片が時々出土するぐらいなのに、完品なんて初めて見たよ。これならそうだね……和土国が言った金十キロだと足りないね。これ一つでその国の王は、毒殺に悩む心配が無い食事を取れる訳だから、一種の国宝だよ」
へ──、その国宝いっぱい持ってますけど。なんなら今頃ミルンとミユンのご飯用お皿となっています。
なんか和土国の代表が顔を曇らせたな。
金十キロで足りないから、ショックでもうけたのか?
「なら──今後の友好の証として、この魔王よりそのお皿を進呈しよう。勿論無料でな」
あっ……二人共固まった。
まぁ、国宝級って言われた矢先に──あげるよその皿なんて言われたら、びっくりするよな。ルシィも口をあんぐりしてるし──ってルシィ知らなかったの?
「旦那様、陛下には一切伝えておりません。陛下のお馬鹿顔を見たかったモノで、如何でしょうか」
「さすがドゥシャさん良い仕事だ!」
ドゥシャさんにはナイフとフォークという、側から見たら普通の食器の武器をプレゼントしたからな……賄賂じゃ無いよ普段使いです。
「あはははっ! 流石に驚いた! 国宝級と知っていながら、それを簡単にくれるだなんて。失礼流さん、有難く頂戴するよ。これで温かい食事にありつける……」
「守護者様からの頂き物、有難く頂戴致します。この皿は毒抜きとして活用致します故、何卒ご理解下さいませ」
傘音技さんは理解が早いな。
毒無効の皿って事は、毒抜きに使える万能調理器具にもなるって事で、例えば──汚染された食べ物を置くと、汚染が除去されます。
実験済みですから間違い無しだ。
「あぁ。あげた物だから、好きに使ってくれても構わないぞ」
「魔王! 儂には何も無いのか!?」
えっ……ルシィも欲しいのか?
仕方ないなぁ。
「俺に特権をくれるなら──あげても良いよ?」