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異世界とは愛すべき者達の居る世界  作者: かみのみさき
三章 異世界とは妖精さんが居る世界
209/320

エイドノア世界会議.1



 俺が名付けたセーフアース。

 その新大陸の発見に、エイドノア大陸に住まう者全てが驚愕に包まれ、右往左往の大騒ぎを起こして急遽開かれた世界会議。その世界会議の中心で、腕と足を拘束されて逃げられない様に見張られて居るのが──魔王コト小々波流で御座います。


「何でセーフアースの情報が漏れてるんだよっ、ジアストール……」


 理由は分かってるんです。

 俺がファンガーデンに帰って直ぐ、どうやらミルンとミユンがケモ耳仲間に言っちゃった様で、そこから情報拡散が早いの何のって一瞬だったよなぁ……。女王ルシィに書簡を送ってから一週間程で返答が来て、プラス各国からの質問状も山程来て、急遽開催となった世界会議。


 そんなのに出るのは絶対に嫌だから──再度湖に飛び込もうとしたら、シャルネとドゥシャさんと影さん達と黒姫大人バージョンと村長が全力で襲い掛かって来て、簀巻きにされて馬車へと押し込まれ、そのまま二ヶ月間放置プレイですよマジで……。


 この年齢になって初めての体験でした。

 下の世話をされるのはな……。

 ドゥシャさんとシャルネが嬉々として俺の世話を行い、まさか大人になって布オムツを履く事になるとは思わなかったよ。


 因みに今回、ミルンとミユン、黒姫は、ファンガーデンで御留守番しているとの事。院長の影さんがしっかり見てくれている様だ。


 んで到着した場所は、北の帝国、東の小国郡、南の連邦国家、ジアストール王国の国境が重なる激戦地帯であり、魔物すら寄り付かないヤバげな場所。そこに陣を敷き、各国の代表が集まるコテージにて会議が開かれていた。

 今回、海洋国家アルカディアスは不参加を表明したが、代わりにシャルネが中立の立場で纏め役をするらしい……人選は大丈夫か?


「それでは──四カ国代表による世界会議を始めます。進行役はアルカディアス王の娘である私、『シャルネ・アルカディアス』がさせて頂きますわ。参考人として、件の魔王もとい、流様を同籍させます。問題行為が有れば即刻退席させますので、ご注意下さいませ」


 うん。どうやら各国のお偉いさんはシャルネの異名をご存知の様で、誰一人としてシャルネと目を合わそうとしない。


「なら先ずは──朕からジアストール王へ問う。ジアストール王よ。どうやって新大陸を発見したのか、海の魔物達を退けたのかを聞きたいのである」


 朕と偉そうに言っているが、少し小汚い格好の痩せ細った陰湿そうな男。後目争いを繰り広げている真最中の、北の帝国暫定皇帝『サハロブ・アヒージャ・ノゾ・ルプマンティ』という長ったらしい名前のおっさんである。


「ふむ……儂もそこに居る魔王からの書簡でしか、内容を知らぬでな。どうやって海を渡ったかは、そこの魔王に聞くが良い暫定皇帝殿」


 暫定皇帝だからか、ジアストール国女王、『ルルシアヌ・ジィル・ジアストール』はまともに取り合わず、そのまま俺に全振りしやがったぞ糞ルシィめ。


「朕に対してその無礼な態度は何ぞ! たかが小国の王の分際で!! いつでもジアストールなぞ滅ぼす事が出来るのだぞ!!」


「えっ、来たら殲滅するからな……」


 俺の一言で暫定皇帝のおっさんが黙った。

 と思ったらまた吠え出したな。


「大体なぜ皇帝である朕が! この様な汚らしい場所へ来なければならない! しかも纏め役が殺戮人形ではないか!! これは朕に対する不敬であるぞ!!」


「うるさい暫定皇帝だなぁ。何歳だよお前……」


 また暫定皇帝のおっさんが黙った。

 ルシィを含め、他国のお偉いさんが若干笑いを堪えているなぁ……。


「さっきから何なのだ貴様! この帝国の皇帝である朕に対して不遜な振る舞いっ! 死刑だ!貴様は不敬罪で死刑にしてやるぞ!! 誰か! 誰かおらぬか!!」


 なんかこのおっさん煩いなぁ。

 こちとら二ヶ月拘束されて苛々してる状態なんですけど『貴様の一族共々死刑にしてやるからな!!』──っ、うんコイツ殺るか!!


 ────『全力威圧だよねっと』────


「えっ────ひゃぁああああああああ!! 誰か朕を助けよ!! 助けよぉおおお!!」


 いやいや弱すぎだろこの暫定皇帝……。俺の威圧でビビると言うより、俺の角を見て怖がってるんですけど……。


「まぁどっちでも良いけどな。暫定皇帝様は──俺の家族を殺すって言ったから、別に俺が暫定皇帝様を殺しても問題無いよね。殺られる前に殺れって言葉も有るんだし、因果応報の先払いをさせてやろう……」


 大丈夫。俺は両手両足縛られたままだから動けないし、全力で魔法を撃つ事しか出来ないから、周りの代表さん達も巻き添えだけど許してね!


「やめんか魔王! お主今絶対儂等を巻き添えにしようとしとるじゃろ!?」


 チッ……ルシィが気付きやがった。

 だってその残念皇帝モドキが俺の家族を死刑って言ったんだから──悪いのはそいつだろ。

 しかもだ、各代表は必ずお供を連れて来ているのに、この残念皇帝モドキは一人で来ているし、本当に代表なのかも怪しい。


「魔王様、この場はお鎮まり下さい。流石にこの場で殺してしまいますと、間違い無く戦争となってしまいますので。殺るのならば──会談終了後でお願い致します」


 シャルネが釘を刺して来たな。

 仕方ない……戦争は嫌だし、会談終了後なら殺っても良いと言われたし、我慢するか。


「残念皇帝モドキ……絶対逃さないからなぁ」


 反応が無い……気絶してるじゃん!?

 マジで残念皇帝モドキって、代表を騙ってるだけじゃ無いか?


「ふくくくっ──中々面白い見せ物ですね、ジアストール王よ。魔……流さんと言ったか。是非私も、どの様にして海を渡ったのか知りたいのだけど」


 コイツは──南の連邦国家代表『ハバノア・アスダオルタ』だったか。

 お供もそうだが、非常に若い。間違い無く俺より歳下だろうし、茶髪に端正な顔立ち、身体は細くて足が長いイケメン(死語)だな。


「ルシィに送った書簡にも書いたが、娘二人と舟で遊んでたら遭難して、一週間程漂って飽きたから、また舟で遊んでたら着いた。以上だ」


 因みに人魚達の事は秘密にしてある。

 きっと、海を安全に渡るには彼女等が居なければ無理だろうし、あの地を、ジアストールも含め誰にも侵略させない為に、絶対に知られちゃいけない。


「ふむ……、本当かどうかの判断が難しいな」


 そりゃあ俺が嘘を吐いてないからな。

 海千山千の腹黒達を騙すには、下手な嘘より真実を伝えるに限る。ただ──伝えていない事が有るだけだからな。


「では次は私ですね。お初にお目にかかります魔王……いえ、守護者様。私は和土国の代表、『傘音技・珠代』と申します。幾度か御手紙を送りましたが、まさか遭難されていたとは知らず、御身が無事で安心致しました」


 かさねぎ……たまよ?

 すんごい和を感じさせる名前なんだけど、和土国って──確か間者とか送り込んで来てる危ない国だよな……精霊信仰だっけか。

 しかも俺の事を守護者って言ったか? 

 何の守護者だよ。

 見た目は和風な御嬢様だけど、絶対腹黒だろこの代表……。


「私共からお聞きしたいのは二つ。今回の新大陸の発見に、世界樹様が関わっているのかどうかと、精霊様が関わっているのかどうかです」


 意外と簡単な質問だな。


「セーフアースの発見にその二つは関わって無いぞ。マジで偶然に辿り着いたからな……あそこに行く方法も、ぶっちゃけ黒姫に乗って行くしか無いしな」


 今回のセーフアース発見に世界樹も精霊も関わっておらず、後から世界樹ワープでリティナとニアノールさんが来たからな。あと──どうやら世界樹ワープは人を選ぶらしく、リティナやニアノールさんは言わずもがな、俺、ミルン、ミユン、黒姫、ドゥシャさん以外の人達は行く事が出来ず、ちょっとだけ安心した。


 犯罪者が来られても面倒臭いしな。

 村長は凄い悔しがってたけど。


「左様で御座いますか……。話は変わりますが、どうでしょう守護者様。精霊様と御一緒に──和土国へ移住されませんか? 勿論、守護者様に見合った待遇をお約束──『ならん!!』あらジアストール王、どうなさいまして?」


「そこの魔王は我が国の貴族じゃ! 他国に移住なぞ認めぬし、儂が許さぬ!!」


 うわぁ……女の戦いだよ怖いなぁ。


「可笑しな事を言いますねジアストール王。私共の調べによりますと、守護者様は正式な貴族位を与えられておらず、相談役という意味の分からない事をさせられていると、分かっております。守護者様に対してその様な物しか差し上げれぬのなら、我が国に来て頂いて政務を取り仕切って頂いた方が、良いかと思いまして」


 えっ、政務を取り仕切るの何て嫌なんですけどって言ったら、絶対駄目な雰囲気だよなぁ。


「ふんっ! 情報が古いわ! そこの魔王には、アルカディアスとの交易路作りと新たな大地の発見による功績で──、辺境伯となる予定なのじゃ。婚約者も二人程居るでの、他国へ渡す訳がなかろう!!」


 ルシィの後で、静かに立っているドゥシャさんがこっちを見て来て頷いたけど、マジでやりやがった。嫌な有言実行だぞこれ……。


「いやいや、まだ予定ですわよね。それに、守護者様の御意思を無視しての爵位など、何の意味がありましょう」


 それは大いに賛同する。

 俺に爵位なんて無意味だぞルシィ。

 逃げたい時に逃げる──それが俺だからな。


「こらこら二人とも、流さんが困っているじゃ無いか。流さん、なんなら連邦へ来ませんか? 連邦なら好きな職につけれますし、無理に国政に関わる必要もありませんよ?」


「横から口を挟むで無いわハバノア!」

「守護者様は渡しません!」


 流石のイケメン(死語)も、女傑というか何と言うか、怖い女性には勝てない様だな。


「というかシャルネさんや……止めろよこの喧嘩」


「まだ大丈夫ですわ。ただのじゃれ合いですの」


 さすがですシャルネさん。

 鋼鉄の表情筋ですね。



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