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異世界とは愛すべき者達の居る世界  作者: かみのみさき
三章 異世界とは妖精さんが居る世界
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遺跡発掘探検隊.5



 薄暗い、坂道上り──延々と。歩みを止めず、正に人生……流、心の一句ってな。

 地味に傾斜角度が酷くなった……さっきまで緩やかな坂だったのに、今は傾斜角四十度ぐいじゃ無いかなぁ。


「なんか──疲れるなこの坂。帰る時は、絶対滑り台として使ってやる」


 肉体的には疲れないけど、延々と坂を上るのは精神的に疲れるし、坂の先が見えるんだけど──なんか全然進んでる感じがしない。


 この感じは、どこかで体験した事が有る?

 どこだったかな……。

 一旦立ち止まって──って、ゴールが勝手に離れて行くんだけど!?


「そうだよ! この感じはランニングマシンだ! なんだこの嫌がらせの様な仕組みは!?」


 せめて音ぐらい発しろよ気付かんわ!!

 再度歩いて確認……うん。

 俺の歩く速さと同じぐらいの速度で、床が良い感じに動いているな。なら、軽く走って──このぐらいは床も余裕と……。


 それなら────「全力で走るっ!!」


 床が動く速さ以上の速さを、出せば良いだけの話だわな──っ、到着っと。ふははは、この程度で俺が止まると思うなよ!!


「運動不足解消には良いけど、これ作った奴はどうやって通ってたんだ……」


 趣味が悪いにも程がある。

 俺だから良いものの、村長やリティナは上がれないんじゃ無いか……、あいつ等が四苦八苦してる姿見てみたいな。


「んで、あそこがゴールかな……」


 細い通路を進んで行くと、広い空間の中に一際目を引くモノが存在した。


「これは────壁画か……すげぇ……」


 縦十メートル、横幅二十メートルぐらいの壁一面に──鮮やかに彩られた壁画。いつの時代に描かれたモノかは分からないが、その壁画の中に、見たことのあるモノが存在していた。


 壁画の中心に描かれたモノ。

 世界樹の様な大木と、大砲みたいなモノに、あとはそれを覆い尽くすかの様に描かれた、槍を持つ天使の様な翼を生やした存在……。


「これは……リシュエルなのか?」


ピンポンパンポーン(上がり調)


レベルが1上がりました(私の先輩達ですぅ)


ピンポンパンポーン(下がり調)


「どうやってコッチを見てるんだ、糞リシュエルめ……、次姿見せたら──即ミルン砲を打ち込むからな」


 おっと──今はそれよりも壁画だな。

 この描かれた大砲は、俺が空に向けて撃った魔法だよな。確か取説がこの右目に映って……『神殺し』って言う物騒な神器で、それの触媒が──あの魔石の大地と……。

 この壁画の下部分。

 魔物達なんだろうけど、それらを殲滅しながらエネルギーを確保して、壁画の上部に描かれた存在に向けて、魔法を撃ち込んでいる。そして、その上部に描かれた存在の中にも、多分だけど知ってる奴が居るな。


「この色合いにこの姿……、桃色お化けか」


 神と世界樹が戦ってる様に見えるんだが、俺の知識だと──この二つの存在って、別に戦う必要は無い筈だよな。神が世界を管理すると過程してだ、世界樹はその世界を支える存在じゃあ無いのか。それに、壁画の世界樹の下側に、小さく描かれた存在。


「これ、間違い無く魔王だよなぁ、角有るし」


 大砲の発動条件は『魔王』である事と、『世界樹の守護』を得ている事だったか……。なんで魔王と世界樹が神に喧嘩売ってるのかね。


「あ──分からん! 考えるのは苦手だし、今は壁画よりも温泉だよ温泉。何処に有るんだ──扉が有るな」


 あの先が温泉か?

 扉に向かい、罠を警戒しながらゆっくりと開けていくと────「……なんだここ?」

 十畳程の広さの空間には、石で作られた竈門の様な物と壊れたテーブル。棚にはあの食器類が積まれており、更にはベッドと思しき石の台など、見た感じ住居みたいだ。

 

「埃まみれだし……温泉はどこだ?」


 トイレっぽい穴の横に、また扉があった。

 開けて中を確認。


「……水脈か」


 さっきまでの人口的な造りでは無く、自然に出来たであろう、大量の水が緩やかに流れている場所。水を触るとそれ程冷たくも無く、もしかしたら以前は温泉だったのではと思わせる。

 

「まぁ、このぐらいの温度なら浸かれるか。ミルン達来るまでに掃除して、軽く埃を洗い流しておこう」


 部屋の中も俺自身も、埃まみれだからな。

 

           ◇ ◇ ◇


「リティナ! 頑張るの! 君なら出来る!」

「聖女! 腕を振るの! 顔怖いの!」

「リティナ様、足をもっとあげてぇ」


「なんでウチだけ走らされんねんなぁあああああああああ────!!」


 入口を塞いでいた岩をミユンが、『もちゅもちゅ』と溶かしながら食べた終えたので先へ進むと、十字路だらけの道があった。けども、お父さんが床に矢印の書いた木板を置いていた所為で迷う事なく進むことができ、冒険探検出来なくてちょっと不満です。


 そして長い坂道があったので、皆んなで歩きながら進んでいたのだけど、何故か一向に進まない……。立ち止まると、勝手に床が動いていたので、ミユンと駆けっこをして頂上に到着したの。


 どうやら走ってる人と、歩いてる人がいる場合、歩いてる人の速度に合わせて床が動くみたいで、ニアノールが頂上に辿り着いた瞬間、リティナの歩くスピードと床が同じ速度となり、今現在リティナが必死になって走っているの。


「なんかロープでも無いんか!? ウチ走るのそんなに得意ちゃうねんてぇえええっ、息切れてしんどっ──また下りて来てもうたやん!?」


 さっきから、走っては途中で立ち止まって下まで戻って、走っては途中で転けて下まで滑り下りて、走っては苛々声で何かを言って滑り下りて、『ウチだけ置いてけぼりかい!!』と誰も置いて行くなんて言ってないのに、地面に足を打ちつけて鼻息荒くなっているの。


「リティナが怒ってるの……全然怖く無い」

「聖女が聖女の顔をして無いの……ある意味怖いの」


「ロープは無いですねぇ。流さんなら色々持ってそうではありますが、今のリティナ様を置いて行くと──後で愚痴三昧ですので離れる事が出来ません……」


 解決する方法は有るの。

 でも、面倒臭いから言わないの。

 だって、お父さんなら絶対に言わないし、何ならリティナを放置して先に行くと思うの。若しくは────「リティナ! 幾らだすの!」と交渉するの!


「流にーちゃんに影響されすぎやろミルン!? アンタ──さっきの四十で、満足やないんかい!」


 獲れる所から根刮ぎ獲るの!

 なんだったら、お父さんが言っていた利子付きの貸しにしても良いの!


「十日で三割の利息なの、リティナどうする?」


「ミルンお姉ちゃんが悪徳商人なの! この国は未だ法整備が完璧じゃないから、やりたい放題出来るの」


 王国の法には、金銭の貸借りは当事者間で取り決めて良い事になっていて、幾ら利子をぼったくっても違法じゃないの!

 貴族位がある人なら制限されるらしいけど、ミルンは唯の一住民なので、問題無しなの!


「流さんより酷いですねぇ……。女王陛下に掛け合って、ミルンさんを貴族に『今回だけ助けるの! 貴族は嫌!!』そうですかぁ」

 

 失念していたの……リティナは女王と知り合いだったの。お父さんが言うには、私のパパが元王族らしいので、下手をしたらどこぞの貴族の養女にされて、お父さんから離されるの……それは絶対に嫌!!

 ニアノールはやっぱり侮れないの……。


 一度下に下りて、リティナと二人でゆっくりと上り、先にリティナを走らせて着いた瞬間に、私が全力で駆け上がれば──良いだけなのです。


「最初からそうしろやぁあああ────っ!?」


「リティナが遅いのが悪いの!」

「聖女が体力無いのが悪いの!」

「リティナ様。帰ったら、私と一緒に訓練しましょうねぇ」


『うがぁあああ────っ!!』って聖女が怒っているけど、ドゥシャの迫力の十分の一ぐらいなので怖く無いの。


「お前等……声めっちゃ響いてんだけど……」


「──お父さん!」

「──魔王なの!」


 お父さんが迎えに来てくれたの!

 久しぶりに肩の上に乗って、今日はずっとこのままです!!

 ミユンは黒姫の定位置を奪ってるの……黒姫居ないから問題無しなの!!


「流にーちゃん来んの遅いわ!!」


「あっ……俺を見捨てたリティナじゃ無いか。尻を百回叩かれるか、黒姫の角で尻を刺されるか、ちゃんと選んでおけよ」


 お父さんが若干威圧を使ってるの。

 中途半端に角が出てる……触り心地抜群!

 リティナが尻を隠して逃げようとしてるけど、この場所には逃げ場が無いの。


 ご愁傷様です……。



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