遺跡発掘探検隊.4
この異世界に来て──あっ死ぬかもと思った事は幾度か有るけども、まさか昔ながらのトラップで死ぬかも知れないと思うとは……、リティナに合ったらお尻を全力で叩こう。
螺旋階段を岩に追われながら下りて来たけど、扉が前に有ったから勢いのままに打ち抜いて飛び込んだら、後まで来ていた岩がスッポリ嵌って帰り道を塞ぎやがった……。まぁ、止まってる岩ならどうにかなるから良いけどさ。
「ここが一番下かぁ……。何か、昔やっていたゲームに出てくる、迷宮を思い出す雰囲気だな」
看板立てて『〇〇の迷宮』って書いておけば、正にゲームのステージだぞこの外観。だって、高さ三メートル、横幅三メートルの、石で造られた通路の先に十字路が有り、絶対この場所で迷わす気満々ですって感じがするからな。
「それに──地下なのに明るいな。さっきリティナが言ってた光鉱石のお陰かな……、壁の上部に設置されてるのか」
これは結構貴重な鉱石では無かろうか。
見た感じ燃料要らずだし、採掘しまくって、空間収納内に保管しておこうかな。
さっきの、螺旋階段の壁に山程埋まっていたから、この場所調べた後に根こそぎ取るか。
「先ずは、この通路がどうなっているのかの確認と、木板を使ってマッピングだな……」
出来れば紙が良いんだけど、空間収納内には無いし、木板なら豊富に持ってるから表面削れば地図に出来るだろう。
罠に気を配りながら、方向を見失わない様に、十字路を進む際は歩いて来た床にも矢印を掘った木板を置いて、どんどんマッピングを進めて行く。
「何か少しだけ楽しくなって来たぞ……。異世界に来て、初めての冒険って感じがする!」
冒険と言う割には──ただひたすら十字路を前後左右しているだけ……。だけども、こんな感じの場所を一人で彷徨えるのって、なんかワクワクするよな。
ぐるぐると十字路を曲がり続けて、次は右だなと確認すると──初めて土壁が現れた。
ゆっくり近付いて土壁を触ると、ボロボロと崩れて来て──「なんだこれは……」と土壁に嵌っている陶器なるモノが目に入った。
「この平べったさに模様……皿か?」
しっかり嵌ってるから、力尽くだと割れる可能性があるな。それなら、『空間収納』で土壁ごと皿を取り込んで──確認確認っと。
「うん……土壁の中に結構あったのか。浄化の皿『毒無効』に、浄化の杯『毒無効』と、滅魔のナイフが『斬撃強化』で、滅魔のフォークが『刺突強化』と……。なんで食器類に付属効果が付いてるんだよ初めて見たわ!?」
と言うかだ──スキルや称号以外で、何某らの効果が発生するモノを見たの初めてじゃね。
何で急に見える様になったんだ……。
あの御使の剣や、桃色お化けの装備を空間収納内に入れても──、何も表示されなかったのに、前と何か違うのか?
「あの時と違う事……そう言えば、俺の右目の色が虹色になってるんだっけ……、その所為か?」
正直、自分で自分の目を見る事が出来ないから、いまいちどんな風になってるのかが分からないし、どうせなら虹色じゃ無くて、朱色か金色にして欲しかった。
「金色だったら、ミルンとお揃いだったのになぁ……。朱色だったら、魔眼っぽくてカッコいいんだけど、虹色って……微妙だぞ」
おっと、脱線してしまったな。
土壁の向こう側にも通路が有る様だし、空間収納でザクザク掘り進めますかね。
毒無効効果付きは結構有難いから、待たせているドゥシャさんやシャルネ、村長への御土産にしよう。同じ奴が結構見え隠れしてるし、割れも無ければ欠けも無いって、どれだけ頑丈なんだよ。
「ほい開通っと。慣れたもんだよマジで……」
交易路を掘り進めるよりか何億倍も楽だよね。
今度の十字路は──左右行き止まり?
直線だけなのは初めてだな……。若干坂道になってるし、行ってみるか。
◇ ◇ ◇
「岩が邪魔なの……えいっ!!」
硬い……手が痛いの。
魔法と合わせて撃ち込んだのに、この岩全然割れてくれない……。
「なんや偉い硬い岩やな。ミルンの魔法でも、少ししか傷入っとらんやん」
「これはぁ、ただの岩じゃないですねぇ」
ニアノールがぺたぺた岩を触っているけど、ただの岩じゃ無かったらなんなのかな。
「なんで魔王、このお岩放置したの? スキルで収納したら良いのに」
ミユンの言う通りなの。
お父さんは変なところでお馬鹿だから、きっとそこまで考え付かなかったの……。
確か随分前に、『何で俺の知能は上がらないんだよ糞リシュエル!?』って怒ってたの。
「このままじゃ、お父さんに追いつけないの!」
どうにかして、この岩を壊すの……。
ミユンが岩に近付いて行くの……まさか!?
「ミユンが食べるの──もちゅもちゅ」
「なんや……ミユンは岩食えるんか?」
「岩に齧り付く姿は、ちょっと怖いですねぇ」
ミユンは魔石を食べていたから、やっぱり岩も食べれるの──私より胃が丈夫なの!!
「ゆっくり食べるのミユン。お腹壊したら、お父さんが間違い無く怒るの!」
「しっとり系です……もちゅもちゅ」
「ウチ……こないな幼女に恐怖覚えんの、ミユンで二人目やで……。勿論一人目はミルンや」
「私は──見てたら慣れてきましたぁ。なんか流さんの子供って思ったら、不思議と違和感もありませんし、慣れって怖いですねぇ……」
リティナとニアノールが失礼な事を言ってるの……、私は別に怖く無いし、ミユンだってこんなに可愛いの! ミユンが『もちゅもちゅ』してる岩が溶けてるけど、きっと何かのスキルを使っているだけなの。
「お父さんが先に行くと、冒険の楽しみが減って行く気がするの……ミユン急ぐの!!」
「了解ミルンお姉ちゃん! もちゅ──っ!!」
岩がミユンのお口に吸い込まれて行くの。
流石にコレは……予想外です。
「岩は飲みもんちゃうわ!?」
「食べ物ですら無いですけどねぇ……」