遺跡発掘探検隊.3
リティナが勝手に、扉に触ろうとしたので拳骨を脳天にお見舞いして叱り付けました。
「──っ、何晒すんじゃボケェ!? ウチの頭にタンコブできたやないかい!!」
「今のはリティナ様が悪いですよぉ。どうやら罠が豊富な場所の様ですねぇ」
全くもってその通り。
ミルンやミユンならまだしも、触るなと言った矢先に何故平然と触るのか……、頭悪いのかな──このなんちゃって聖女。
「ニアノールさんの言う通りだ。さっきから俺に目掛けて罠が来てるから良いものの──、良くは無いけど、ミルンやニアノールさんはともかくだ、ミユンとリティナじゃあ避けれないし、マジで死ぬぞこの罠……」
リティナが頭をさすってるけどな、それで済むだけ有難いと思えよ。俺は悪い子に先ず言葉で注意を促すが、それでも他の人を巻き込み兼ねない事をするなら拳骨を落とす。
「……ウチが悪かったわ。でも扉開けられへんのやったら、先進まれへんやん。どうすんの」
「少し待て、見てみるから……」
扉に仕掛ける罠としたら──先ず天井と床を確認して、変な切れ込みが無いかを見た後に、軽く押したり引いたりしたら隙間を見る。
糸や金具の確認だな。
ゆっくりと扉を開けて行き、違和感が無いかを確認して──「大丈夫だな……」
「お父さんが真剣なの……空から槍なの?」
「魔王が真面目なの……世界の終わり?」
俺そんなに変なのかなぁ……。ミルンとミユンの毒舌っぷりに磨きがかかってるんですけど、絶対誰か教えてるよね。
ドゥシャさんかなぁ……ちくしょう……。
「螺旋階段かぁ……降りるの嫌だなぁ」
しかも──扉を開けて進み、一度上を見たら──丸い大きな岩がぶら下がっているし、何処かにスイッチが有るから気をつけないとな。
「四人とも、俺の後について来てくれ。不用心に壁触ったり、床の端っことかを歩くなよ。落ちたら死ぬし、上の岩が転がって来たら潰されて死ぬからな……」
「へいへい、流にーちゃんの後ろやな」
「次はミルンなの!」
「次はミユンなの!」
「なら最後尾は私ですねぇ」
緊張感のカケラも無いよこの四人っ。
女子女児合わせて四人も揃うと、俺一人だけでは制御できないぞ。こんな時、あの筋肉達磨村長が居てくれたらなぁ……生贄にするのに。
にしても──螺旋階段の壁……何かキラキラしてて綺麗だけど、何で作られてるんだ? いや、下手に近づいて罠が発動したらヤバいから確認出来ないな。
階段は石の様だし、本当に変な場所だよな。
「なんやこの壁、光鉱石でできとるやん」
リティナはこの壁のキラキラを知ってる様だな。ちとどんな物か教えて──と後ろを向いたら、リティナが壁をペタペタと触っているよね話聞かない聖女だなコイツっ。
────《ガゴッ──ズンッゴゴゴ》────
「おい……リティナお前……」
────《ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ》────
「……すまん、流にーちゃん……」
────《ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ》────
「お父さん走るの!!」
「魔王走るの!!」
「リティナ様っ!!」
うん────岩が転がって来てるよね!
「全員走れぇええええええええ────っ!!」
全力で駆け出すも──後ろのリティナが走るの遅過ぎてミルンとミユン、ニアノールさんが団子になって階段から落ちそうだ。
何処か──避難出来る場所は無いか!?
螺旋階段を走っていると──、壁に窪みがあり、小さい女性なら三人は詰めればいけるだろう「ミルン! あの窪みに岩が来たら魔法で吹き飛ばせ──!!」と指示をだして三人を窪みに押し込み、俺はまた走り出す。
流石にミルンの魔法でも、勢いのついた岩を壊す事は出来なくても、窪みにぶつからない様逸らす事は出来る筈──『吹き飛ぶの!!』
良しっ、あの三人は大丈夫だけど岩のスピードが速くなりやがったぁあああああああ!?
「なんでウチをアソコに入れへんのや!?」
「お前が元凶だろぉおおおおお────!!」
リティナを担いで走っているよどこまでもって、螺旋階段長く無いか──『窪みやっ!!』
っマジか────飛び降りて自分だけスッポリ窪みに収まりやがった!?
────《ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ》────
しかも良い感じにコーナーの角斜め下だからアイツ無事だしっ、俺だけ収まる窪みがありませんよね──「あっはっはっは──!」
────《ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ》────
「あんの糞聖女っ──自分だけ逃げやがってぇええええええ────っ! 走るだけなら疲れないけどっ、この下り坂は何処まで続いてるんだよ長いわ!!」
ちくしょぉおおお──っ! 下った先が壁だったら俺ぺっちゃんこ確定で死ぬからな! 死んだら化けて出てやるあのなんちゃって聖女めぇえええええ────!!
◇ ◇ ◇
「お父さん……下りて行っちゃったの」
お父さんなら私より速いし、いつの間にか色々やからして戻って来るから大丈夫なの。
それよりも『聖女が聖女じゃないの!』ミユンの言う通り──リティナがやらかしたのに一人だけ助かってるの……。
「いや──死ぬとこやったわ。ミルン、ミユンもすまんかったなぁ、ニアは怪我無いか?」
「大丈夫ですリティナ様。それと──今お二人に近付かない方が良いですよぉ」
ちっ、ニアノール良い勘してるの。
お父さんを一人だけにして、自分だけ助かったリティナに対して──ボディにパンチを撃とうと思ったのに、リティナが一歩下がったの。
「ミルン待ちーな。今ウチを殴っても何も解決せーへんし、何より今は流にーちゃん追う事の方が大事やろ。なっ!」
「魔王ならこんな時でもボディなの!」
「ミユンは良く分かってるの。お父さんなら、こんな時だからこそボディを撃つ……」
お父さんなら──ボディを撃った後に、更に追い撃ちをかけるの。敵と認識したら容赦なく攻撃して、相手の心をバキバキに折る……。
「リティナだから多少手加減するの。でも──容赦はしない……」
「ちょい待ちって! なんや流にーちゃんどんな教育しとるんやって、目がマジやん!? ニア助けて!!」
「聞いた話によるとぉ、今のミルンさんは、あの殺戮人形を押さえ込める実力なのでぇ……、応戦しても負けますし、誤って怪我でもさせようモノならぁ──、流さんにどんな事されるか分からないのでぇ、無理です!」
ニアノールは良く分かってるの。
今の私ならニアノールに勝てるし、私が怪我をしたら、お父さんがブチ切れしてニアノールはモフモフの刑で、リティナは何されるか分からないの。下手をすれば──黒姫の角でお尻を刺す刑なの。
「ニアァアアアっ!? 分かったミルン! ならこの場所の光鉱石を掘った分でどうや!? 勿論使い方も教えるしっ、他の鉱石も有ったら教えるからなっ!?」
「この大地はお父さんが見つけたの。だからここに有る物全部、お父さんの物になるの」
「魔王の物は、ミルンお姉ちゃんの物なの」
ミユンは賢いの。
このピカピカの石は私の物です。
「──っ、分かったわ!! なら今後、ファンガーデンで治療費稼いだら十パーセントミルンにやるから! なっ、それで堪忍してや!!」
「足りないの! 五十なの!」
「魔王の小遣いにするの! 八十なの!」
ミユンは物凄く賢いの。
ブラフの金額をあえて大きくする事で、リティナの次の突っ込みを誘導してるの。
「あんたら二人とも悪魔か!? 破産するわ!! せめて四十やろ!!」
「じゃあそれで良いの」
「納得の価格です」
治療院を破産させず、ギリギリ運営できる程に搾り取れる金額になるの。
「リティナ様……ミルンさんにやられましたね」
「えっ……あっ、ウチ今了承して……」
ニアノールは良く分かっているの。
ミルンはしっかりお勉強して、こっそり治療院の運営費用と二人の給料を確認済みなの。
「これでお金が自然と入って来るの!」
「知らない間にお金持ちなの!」
リティナが膝から崩れ落ちたの……。
大丈夫、しっかりリティナのお給金からも四十を引いておくの!!
「おどれ等しっかり魔王の娘やぁああああ!!」
リティナが当たり前のことを言ってるけど、私とミユンは流お父さんの娘です。だから働かないお金を稼ぐの!!
「「ニート万歳なの!!」」