遺跡発掘探検隊.2
「ふ──ん、世界樹の根っこが足に絡みついて来て、目が覚めたらあの場所に居たと……、不思議体験してるなぁリティナは」
リティナとニアノールさんに此処に何故居るのかの事情やらの情報交換をしたんだけど、ファンガーデンからこの場所まで一瞬で移動って、転移魔法みたいで格好良いし羨ましいな。
「流にーちゃんの方が不思議体験やろ……。ミルンの爆走からの大海原で遭難して未開の大地に降り立ち、人魚の魔物を従わせて海の魔物を焼いて食べ、魔石の粉で出来た大地を発見したと思うたら──誤って魔法の連鎖反応起こしてよう分からん魔法ぶっぱなした挙句、右目が虹色の気色悪い色になって、もってた余りの粉をそこのミユンがもちゅもちゅ食べてから世界樹の苗も食べて、砂漠になっとった大地を世界樹ごと楽園として復活させたってなぁ────、やっぱりおどれの所為やないかぁかあああああああああ!!」
それは違う。
俺は世界樹の苗をミユンにあげただけで、まさかもちゅもちゅ食べるとは思わないし、しかもそれで世界樹が出て来るとは思わんだろ。
「だから俺は悪く無い!」
「なんや意味分からん事言いよってからに!」
「リティナ様、あまり怒ると流さんの思うつぼですよぉ──、ここは冷静にならないとぉ」
流石ニアノールさん、俺のやり口をご存知の様で何よりだ。
「んで、その世界樹転移装置っぽいのは使えるのか? それが使えれば、ファンガーデンまで帰るのに超楽ちんなんだけど」
「試そう思てやったてたんやけど無理やったわ。なんや理由はよう知らんけどな」
「リティナが世界樹にお願いしたの!」
ミユンが何か言ってるぞ……お願い?
「リティナ、世界樹に願い事でもしたのか?」
「やっとらんわ! ウチがあん時思っとったんは──休みたいし温泉行きたいやな!」
「私も、あの時は──温泉に行きたいって思ってましたよぉ」
まぁ分からんでも無いな。
治療院の開設に伴って、リティナとニアノールさんに補助員を付けても、奇跡を行使出来るのはリティナだけだし、負担をそれなりにかけていたからなぁ
「あそこの御山の中に温泉が有るの!」
ミユンさんそれ初耳なんですけど……。
俺が爆走しながら見てた限りでは──、温泉なんて無かった筈だけどなぁ。
「ほんまか? ミユン言うたな、それ何処にあんねんな」
「お山の中の洞窟に有るの! 森の妖精達が教えてくれたの!」
洞窟────あの遺跡っぽい洞窟か!
確かに一瞬だけ見たな。
あの洞窟の中に温泉って、湯気とか一切出てなかったんですけど……、本当に有るのか?
それにミユンの言動が若干ファンシーになってるし──、なんだよ森の妖精達が教えてくれたのって可愛いわ!!
「ミユンは嘘付かないの! このミルンが保証します!!」
ミルンさんや、なんだその安心不動産を勧める様な大会社の社長さんみたいなセリフは……どこで覚えたのその言葉?
「なんやそれなら──世界樹の奴は、ウチ等の為にココに連れて来てくれたっちゅうんか?」
「話を聞く限りだとそうみたいですねぇリティナ様」
二人して未だ信じられない様だな。
分かるよ──俺も同じ立場だったら間違い無く疑心暗鬼になって、魔法の一つや二つを無駄撃ちするだろうからな。
「なら試しに行ってみるか洞窟。場所は俺が知ってるし、何だったら一緒に探して入りたい。寧ろ探して入浴したい」
温泉が有るならマジでこの場所に移住を検討する所存! 若しくはスケールがデカい版のセーフハウスならぬセーフアースだな!!
「まぁ……温泉には入りたいしな。流にーちゃんに案内頼むわ」
「私も賛成ですぅ。温泉に入りたいですからぁ」
温泉探し確定だな。
「ミルンとミユンも勿論行くよな?」
「ミユンと遺跡探検するの!」
「お姉ちゃんについて行くの!」
ミルンとミユンが、姉妹に見えてくる程シンクロしてるんですけど……可愛いを通り越してなんか尊い……。
「なら──遺跡探検するついでに、のんびり温泉に浸かりますかね」
◇ ◇ ◇
そして来ました──、人工物だろお前っていう見た目の遺跡であろう洞窟……どっちやねんって、突っ込みを入れたくなるなぁ。
だって、何か神殿っぽい柱は有るんだけど、その先には岩をくり抜いたような洞窟の入口が有るし、だから間違って無いんだよ。
「良しっ! 遺跡に入る前に点呼をとるぞ! 先ずは俺から──イチ!!」
「ニなの!」
「サンなの!」
「えっ!? なんや急に『リティナ早くしろ!』っ──分かったわ! よんや!!」
「ご、ですぅ」
「宜しい──今から突入を開始する! どんな危険が存在するか分からないから、慎重に慎重を重ねて行くぞ! 突入──!!」
「なんやこのやりとり……」
「いつもの変なお父さんです」
「いつもの変な魔王です」
何か後ろで俺の事言ってる?
まぁ良いけど……中は結構明るいな。太陽光を、上手く取り入れる仕組みでもあるのか?
魔物の気配は無いけど……なんか不気味と言うか、やっぱり人工物感があるんだよなぁ。
「壁の素材は……普通の岩だなぁ」
「お父さん! この壁の所だけ出っ張りがあるの! 押して良い?」
出っ張り? どんな『──押すの!』ミルン待ちなさ──「うおっ!?」
ミルンが出っ張りを押した瞬間俺の眼前を矢が通り過ぎ、壁に打ち刺さったんだけど……、あと一歩踏み出してたら俺に刺さってるよね。
ミルンやミユン、リティナには、高さ的に刺さる心配は無いけど……俺とニアノールさんは普通に刺さる高さです。
「ミルン、不用意に怪しい場所を触っちゃいけません。下手したらお父さんが、串刺しになってそのまま死んじゃうからね……」
「分かったのお父さん……御免なさい」
良々、これで先へ進めるな……。
「魔王! あそこの床変なの!」
今度はミユンかよ『踏むの!!』何で踏むんだよぉおおお「おおおおっ危ねぇっ!?」
今度は天井から俺目掛けて槍が降ってきたんだけど、なんとか避けられた……。
「ミルン、不用意に怪しい場所を踏んではいけません。下手したらお父さんが、串刺しになってそのまま死んじゃうからね!」
「分かったの魔王……御免なさい」
俺……さっきと同じ事言ってないか?
「なぁ流にーちゃん。あそこの扉、なんか怪しいんちゃうか?」
「先ずは調べてからだ!! 触ったら殴る!!」
マジで殴るよ命がかかってるからな!!