遺跡発掘探検隊.1
突然だが──皆んなは古代遺跡をご存知だろうか。遥か昔に人々が暮らして居た時の、名残りとでも言うのだろうか。歴史的遺産であり、その中には時代的にも考えられない技術や物が存在したりと、ロマン溢れる場所だ。
しかし、映画の様なトラップが存在したとは考え難く、落とし穴ぐらいは有ったとしてもだ、石壁を押したら床が抜けたり崩落したり、床を踏んだら岩が転がって来たり、歩いていたら槍が飛び出したりと言う物は、当時は存在してたとしても、流石に劣化して使えないだろうと──俺は思っていた。
俺は今、その考えを改める。
何故かって?
それはね────
「今現在進行形で岩から逃げてるからだよぉおおおおおおおおおおおお────────!!」
────全力疾走して坂を下ってるんだけど、下手したら足を踏み外して真っ逆さまの落ちたら死ぬ場所だよね──この場所!!
因みに俺の頭の中では、小さい時の運動会で聞いたリレーの時の曲が流れているんだけど、あれって曲名なんだったかなぁ────っ余計な事考えてたら本当に死ぬっ!!
「あんの糞聖女っ──自分だけ逃げやがってぇええええええ────っ! 走るだけなら疲れないけどっ、この下り坂は何処まで続いてるんだよ長いわ!!」
ちくしょぉおおお──っ! 下った先が壁だったら俺ぺっちゃんこ確定で死ぬからな! 死んだら化けて出てやるあのなんちゃって聖女めぇえええええ────!!
俺──この世界に来てから、走って逃げてばっかりな気がするんだよねぇっ!! 何でこんな事になるのかなぁああああああああ────!!
頭の中で走馬灯の如く──時間が遡る────
◇ ◇ ◇
「お父さん、リティナとニアノールが来たの!」
「魔王、聖女と猫耳が来たの!」
幼女がテントに入って来て直ぐ、二人声を揃えて良く分からない事を言ってきた……。
リティナとニアノールさんが此処に来たってどう言う事? あいつ等は今頃、いつもどおり湖のお掃除をしている頃合いの時間だけど。
「ミルン、ミユン、リティナとニアノールさんが来たってどう言う事だ? ここは海を渡らないと来れないし、似た魔物でも現れたか?」
俺は現在テント内でまったりと横になり、昼寝を満喫しようとしてるのだけど──っと引っ張るな引っ張るなっ。
「こっち来てお父さんっ!」
「魔王来るのっ!」
二人の幼女のチカラが強くて踏ん張れないんですけど……、また厄介な話じゃ無いだろうなこれ。
「分かったから引っ張るなって──、なんだよ」
と、後をついて行ったら世界樹の根っこに座ってくつろいでるよマジで……あっ、こっちに気が付きやがった。なんか走って来るけど殺意満々に拳を握って────
「アンタ何してくれとんじゃボケェッ!! ウチ等を殺す気か────!!」
────と殴りかかって来たんだけど今の俺の速さを舐めるなよリティナ。そんなへっぽこパンチなぞ避け『私も居ますよぉ』た先にニアノールさんがナイフを持ってっ!? 全力でバックステップじゃ──っ、ふははは!!
「なんや流にーちゃん!! ウチ等の攻撃避けるってそこまで強うなっとるんか!?」
「動きが速いですぅ。あの頃とは雲泥の差ですねえ……本気で殺らないと」
なんで会うなり殺る気なんだよ……。
「ちょっと待て二人共! 俺はミルンとミユンが呼んだからココに来たのであって、本当にお前等が居るとは思わなかったし、寧ろ何でこの場所に居るんだよ二人共!?」
「なんや……流にーちゃんの所為や無いんか?」
「リティナ様、流さんは本当に分からない様ですよぉ……。考えが直ぐに顔にでるので分かりやすいですぅ」
だから何の事だよ!?
二人して良く分からん納得の仕方しやがって、俺にも分かる様に言ってくれよ……。
「リティナ、ニアノールさん。頼むから説明してくれないかな……、この場所の説明もするからさ。取り敢えずニアノールさんはナイフを仕舞って下さい……」
刃先がコッチを向いたままなんです。
簡単に刺せると思うなよ──っ、逃げる準備は万端だからな!!
「お父さん! リティナ! 喧嘩駄目なの!!」
ほらぁ……リティナの所為で、ミルンが頬っぺを膨らませてぷんぷん怒ってしまったじゃないか。あの状態のミルンなら──まだお肉で済むけど、やり過ぎたらパンチが来るからな。
「わーったわミルン。ウチの早とちりやった……すまん流にーちゃん」
「いや、意味も分からず襲って来たから──不敬罪で一ヶ月給料無しなお前」
「何でやねん!?」って驚いた顔しているけど、現在のリティナの立場は城塞都市ファンガーデンの専属医であり、俺と村長が個人的に契約している形となっている。
本来──聖女は教会に所属しているが、女神アルテラ本人? がファンガーデンに居る事と、教会からは給料が出ない為に、俺に頼るしかない状況と言う訳だな。
「大丈夫だ。ニアノールさんは未だ未遂だから、ちゃんと給金支払うので安心して下さい」
「本当ですかぁ──良かったぁ。お休みの日にお肉を食べに行きたいので、助かりましたぁ」
猫耳が可愛いからね!!
ピコピコと動くその耳と気分で動くその尻尾が無ければ給料カットしたけどね。
「おどれ顔にでとるぞぉ──」
「お父さんはいつも通りなの……」
「これが……魔王なの……」
リティナだけじゃ無くてミルンやミユンまでも俺を見つめてっ、お父さん恥ずかしくなっちゃうよ「イケおじだろ、ふふっ」
「キモいわボケェ!?」
「お父さんは時々格好良いの。今は違う……」
「魔王気持ち悪いの! 元に戻るの!」
泣いて良いかなぁ……「ニアノールさんは?」
「生理的に無理ですぅ──あっ、嘘ですよぉ」
……テントに戻って寝よう。
今日はご飯作る気力も無いし、まだ昼過ぎだけどニアノールさん居るなら何か作るだろう。
「お父さんがしょげた!?」
「魔王の背中が小さいの……なんで?」
「アカン……アレはふて寝する気やでニア!!」
「全力で止めますぅ!!」
テントにとぼとぼと向かう俺を四人で囲み、ひたすらに褒め言葉を投げて来るけど────
『よっやからし男!』
『子供大好き変態さん』
『植木職人なの!』
『お肉屋さんなの!』
────と全く褒め言葉じゃ無いよねぇ!?
取り敢えずテント戻ってお茶飲もう……。