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異世界とは愛すべき者達の居る世界  作者: かみのみさき
三章 異世界とは妖精さんが居る世界
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聖女の外遊?



 交易路の開通式で、流にーちゃんがやらかした後の数日間は、忙しさの極みやった。


 人の往来が激しくなるっちゅう事わや、魔物に襲われてそれなりに怪我人も増えるし、ぶっちゃけ回復薬じゃあ間に合わへん棺桶に片足突っ込んどる奴も来る訳で──、今も何人かが、流にーたちゃんが考案したストレッチャアちゅーもんに乗せられて運ばれて来とる。


 最初見た時は「ただの荷車やんけ!?」って流にーちゃんに言ったけど──、流にーちゃんは『どこがやねん!?』って返してきおった。


「リティナ様、此方の方は回復薬で問題なさそうですぅ。そちらの方の治療を優先して下さい」


 ニアがサポートについとるから多少は楽やけど、ずっと働き詰めでそろそろキレそうや。


「わーったニア。えっと……うわおっさん腹から飛びてとるやん。ちょっと我慢せーよっと『いぎゃぁあああああっ!?』煩いっちゅーねん!」


 飛び出したもん仕舞わんと治し時にはみ出たままやから、また腹掻っ捌いて入れなあかんようになるし、そんなん面倒臭いねんて……。


「ほれ、コレで完璧に治ったやん。ちゃんと払うもん払ってや──おっさん」


 因みに支払いを拒否したら二度と歩けん身体になるで──マジで。

 正確には──ニアに頼んで、負っていた傷以上の傷を負うんやけど、その時の治療代は通常の五倍やねん。

 それでも払わんかったら、この都市の警備隊に通報してから全財産没収となる。

 但し、獣族も含めた子供達の治療費用は無償やし、この都市の居住権を持っている人なら割安で治療を受けれる。


「流にーちゃんほんま良う考えるわ……」


 奇跡を何回か行使して、回復薬で済む者はそれを使い治療していく。


 あらかたの治療を終えて血糊の付いた服を着替え、世界樹へと向かう為準備をする。

 治療薬の在庫は山程有るし、世界樹の葉一枚を薄めて作るため無くなる事は無いが、万が一の為に葉の予備を用意しておかなければならない。


「ほんま……ウチずっと働いとるけど、なんであのボケは外遊行っとなるねん羨ましいわぁ」


「まあまあリティナ様。最近は怪我人も減って安定しておりますので、少ししたら温泉にでもいきましょう」


 ニアの言う通りやなぁ。

 山の上やから、あの流にーちゃんにくっついとる黒姫はんに乗せてもろて、数日のんびりせな過労死するわ。


 準備をして──ほな世界樹へ出発やな。

 と言ってもさして時間がかかるわけでも無く、今日も湖の中心で気持ち良さそうに葉を揺らしとるなぁ。


「何や緑が濃くなってへんか?」


「そうですか? いつも通りに見えますけどぉ」


 ほな準備運動から──イッチニーサンっシっーっと──、この準備運動も流にーちゃんから教わったけど、筋を伸ばし過ぎず適度に身体を温めてから入ると、物凄い泳ぎやすいねん。


 ゆっくりと湖の中に入って──籠を浮かして落ち葉を獲り獲り今日もいっぱいやん。


「いっぱい浮いてますねーリティナ様。世界樹さんの生え変わり時期でしょうかぁ?」


 毛根とちゃうでニア。

 でも確かに……浮いとる落ち葉の量が尋常じゃ無い量やし、やけども世界樹の奴は元気に緑を濃くしとる……、なんでや?


「リティナ様──、なんか世界樹さんがゆっくり根っこを伸ばして来てるのぷ────」


「何言うとるんやニア。ここはまだ浅瀬やし、そないな事うぷっ────ぷはっ!? なんやコイツっ足掴みよってのぷっ────のぽぽぽぽぱやせや!!」


 ヤバい息でけへん!?

 油断したっニアは──ニアも引き摺り込まれとるっ、あかんてコレっ意識が……。

 世界樹の奴……何考え……。


           ◇ ◇ ◇


「死ぬわボケえぇ────!?」


 あっ……ありゃ?

 なんや此処は……花畑?


「もしかして天国かいなここぉ!?」


「リティナ様──苦しいですよぉ──」


 んあっ、ニアを下敷きにしてもうてた……、苦しいって感じとる事はウチ生きてる?

 周りを見ても花畑──「でかっ!?」

 後ろを見たら世界樹やないかこの大木。

 でも、湖やないでここ……。


「ここどこやねん……」


「綺麗な場所ですねぇ。でもーあそこに何故、流さんのテントがあるのでしょう?」


 えっ、どこやどこや──ホンマにあるやん流にーちゃんが考えたテント!? 何でこないな花畑にテントあんねん……。


「考えてもしゃーない。ニア、あそこま『リティナなの!』ぎゃぁあああ────っ!?」


 急に上から何やって──ミルンやないか!?


「なにしとるんやミルン! 驚かすなや!」


 木の枝にぶさらがって逆さまの状態でコッチを見とるミルンがおるっちゅー事は、あの流にーちゃんが何かやらかしおったな!?


「貴女だあれ?」


「うぉっ!? こっちも気がつけへんかった。何やアンタ、一回だけ開通式の時に見た事ある顔やけど──こない大きかったか?」


「その人はリティナなの! そっちはニアノールで、その子はミユンなの!」


 紹介してくれるのはええけどミユンって、どう見てもこの子精霊の類やろ……。何ちゅーもんを連れとるんやあのボケにーちゃん……しかもこの精霊、世界樹と同化してるし。

 アカン、考えるのは止めや。

 あの馬鹿にーちゃんに会ったら説明しよ。


「ミルンが言った通り、ウチはリティナや。こう見えて聖女をやっとるで──よろしゅうな」


「ニアノールですぅ。リティナ様のメイド兼護衛を務めておりますので、宜しくお願いしますねミユンさん」


 ……何やコイツ……何か言えや。何マジマジとこっちの顔見て来るねん……怖いんやけど。


「聖女……何処かで聞いた事あるの……。あそこで泳いでた人! 私はミユンなの!」


 何で知っとるんや!? 

 あとウチは好きで泳いどるんやない! 世界樹の落ち葉を手に入れる為に仕方なく泳いどるんや!!


「おっ……おぅ、よろしゅうな」


 何か納得いかへんなぁ。

 ここがどこか分からんけど、要は世界樹が何某らの力を使って、あの湖とこの場所を繋ぎおったっちゅーところやな……。


「リティナ待ってて、お父さんを呼んで来るの」


「私も行くの! 待ってミルンお姉ちゃん!」


 なんか……黒姫はんやあのミユンちゅう精霊……、流にーちゃん変なモンの親になる呪いにでもかかっとるんか……。



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