砂漠にお花を咲かせましょう.3
魔石の海が広大な砂漠になったので、実験と称して試しに水をかけてみる。
「おぉ……水を吸い込んでいくなぁ」
「もちゅもちゅ……うみゃぁ」
そして瞬く間にカラカラの砂に戻った。
海側は緑豊かな大自然でこっちはカラカラの砂漠地帯……。その理由は、さっきまで在った魔石の砂の所為だとして、どうやって緑を生やすかだなぁ。
「もちゅもちゅ……うまままっ」
「ミユンがおかしいの……」
何故こんなに一生懸命に考えてるかと言うとだ────この大地に人が住んで居ないなら、俺が勝手に家を造って別荘地にしようと思いついたからだな。だって魔物の気配が無く、自然に豊かで実りも豊富だし、ここに畑を作れたら絶対にスローライフ出来るだろ。
「もちゅもちゅ……うまぁ」
水か肥料か両方か。
あの山の土を持ってきて、ここの砂に混ぜてみようかな……直ぐに土の栄養が尽きるか。
「おいちかった……」
何か……ミユンの体大きくなってね?
さっきまでミルンよりも遥かに小さくて、黒姫幼女バージョンよりもちょっと小さかったのが──、ミルンより若干小さいぐらいにまで成長してるんだけど……。
「ミユンが大きくなって抱っこ出来ないの!?」
それは──ミルンが抱っこしようにも、ミユンの足先が地面に擦るから無理だろうし、なんなら少しミルンよりも発育が宜しい……大人になったらボインちゃんと呼ぼう。
「まよう! なえちょうらい!」
何だ……急に喋り出したと思ったら何か欲しがっているけど、なえちょうらい? あぁ、『苗』ちょうだいか。
苗なんて俺は持ってないぞ。
分かったよ、ちょっと待ってろ──念の為空間収納内を確認してみましょっと。
「え──っと、一覧の中に苗は──」
(一覧)
ミルンの尻尾の毛玉
ミルンの耳毛
ミルンの髪の毛
肉屋の在庫▼
農作物▼
門兵Dの不倫相手の家の鍵
門兵Fの不倫相手の家の鍵
門兵Hの不倫相手の家の鍵
隊長室の扉の鍵
門兵詰所の鍵
門兵女性用詰所の鍵
流れのお金▼
ミルンのお金▼
ルシィのお金▼
ミルンのドレス
ミルンの服(男用)
ケモ耳っ子服▼
王都の香辛料▼
ミルンの牛っぽい肉(198キロ)▼
ミルンの豚っぽい肉(210キロ)▼
ミルンのコカトリスの肉(178キロ)▼
オークの骨▼
コカトリスの骨▼
ミノタウロスの骨▼
オーク肉(150キロ)▼
コカトリスの肉(90キロ)▼
ミノタウロスの肉(190キロ)▼
マグロっぽい魚(300キロ)▼
真鯛っぽい魚(二十尾)
カツオっぽい魚(十尾)
あじっぽい魚(七十尾)
サバっぽい魚(十五尾)
秋刀魚っぽい魚(三十尾)
サザエっぽい貝(六十二個)
シジミっぽい貝(二百五十個)
ウニっぽい何か(七十個)
カニっぽい何か(六十杯)
パラダイスクラーケンの焼き身▼
ハッピークラーケン(三十五杯)
オクトパスマンティスの焼き身▼
オクトパスイージー(四十杯)
魚醤「58リットル」
水47樽
王都の作物の種▼
王都の野菜▼
王都の果物▼
王都のキノコ▼
王都の調理器具セット▼
王都の建築資材▼
王都の家具▼
テント一式▼
組立式簡易小屋▼
金の器
金の皿
金の精霊像
金の裸婦像
金の塊(二キロ)
金のブレスレット
金の鎧
金の盾
金の剣
金の指輪(十個)
世界樹の苗木
人魚の涙(三十六粒)
回復薬(十九個)
解毒剤(十個)
万能薬(十個)
古の草▼
魔石の砂▼
時詠みのオラクル
魔王流の角▼
「桃色お化けに返すの忘れてたなぁ……、時詠みのオラクルって不穏な単語だぞ。えっとぉ、苗苗苗は──有るなぁ苗木……世界樹のだけど」
まぁファンガーデンに世界樹生えてるし、何に使うか分からんけど良いかな。
「コレで良いかミユン?」
空間収納から世界樹の苗木を取り出してミユンに渡すと──『あい! もちゅもちゅ』と、そのまま食べてしまった。
「────んっ? 俺は何を見せられてるんだ」
「ミユンが苗をたべちゃったの……」
魔石を食べたり世界樹の苗木を食べたりと、意味が分からないぞミユンさん。
ミルンと一緒にミユンを観察していると、そのままよちよちと四足歩行で砂漠と緑の境目まで進んで行き、『はえゆの!』っと声を上げて両手を地面に叩きつけた瞬間────砂漠の中から巨大な根っこが現れて絡まっていき、まるで巨大な大木の様な姿となり、さっき迄砂漠であった大地に薄っすらと緑が生え、所々に花が咲いていく。
「なんか……今日は驚く事ばかりだけども……、コレは流石にやり過ぎだろぉ……」
「お花がいっぱい……綺麗なの……」
砂漠と思ったら魔石の粉で、魔法使ったらリシュエルの住まいをぶち壊して、ミユンが世界樹の苗を食べたと思ったら砂漠を緑豊かな大地へと変えた……。しかもあの根っこが絡み合って大木に見えるヤツはどうみても──世界樹に見えるんだけど、世界樹って世界に一本だけじゃ無いのかよ。
駄目だ……頭が痛くなってきたっ。
「魔王の要望通りなの!」
「ミユンが喋ったの!?」
「ミルンの喋り方そのまんまかよ!?」
ミユンがマトモに喋ったと思ったらミルンの影響なのか、喋り方がそっくりだ。
「えっと、ミユンさんや。君は一体何者なんだい?」
砂漠を一瞬で緑豊かな土地にするなんて、正直言って桃色お化けより凄い事だと思うんですけど──、また神様とかですかね。
「ん──っと、私は魔王にお話があって……え──っと……、なんだっけ?」
「忘れてるのかよ!?」
なんだ? 幼児だったから忘れたとかか?
と言うか幼児から幼女になって、流暢に喋ったと思ったら急にお話って──どう言う事なんだよ。
「ミユンはお馬鹿なの?」
それを言っちゃあいけませんよミルンさん。
ミユンは頭を抱えて思い出そうとしてるけど、忘れているって事はそんなに大事な話じゃ無いって事ではなかろうか……。
「ミユン、無理に思い出す必要も無いんじゃないか。もしかしたら、ふとした拍子に思い出すかも知れないしな」
「分かった……喉元まで来てるのに思い出せないとは……、そわそわするの!」
「ミユンは難しい事を考えちゃ駄目なの! 一緒に木に登って遊びましょ!」
ミルンはミユンの手を引っ張って、大木に向かって行った。
あの木に登るのか……怖くて無理です。