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異世界とは愛すべき者達の居る世界  作者: かみのみさき
三章 異世界とは妖精さんが居る世界
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砂漠にお花を咲かせましょう.1



 ミルンとミユンを連れて森へと足を踏み入れたけど、なんと言えば良いのだろう……小鳥や虫は居るが魔物の気配は一切無く、まるで──地球に有る普通の森の様な雰囲気に、よく分からない不安が襲って来る。


「魔物居ないの……」


 ミルンは少し残念そうだな。

 未開拓の、しかも大陸の外にある陸地で、新しいお肉でも探そうと期待してたのだろう。

 逆にミユンは、『やうそうみちゅえた!』と地面に目を向けて楽しそうにはしゃいでいる。


「どれどれ──空間収納で回収っと」


 ミユンが見つけた薬草を一度空間収納内へしまって、ステータス欄を見ればその薬草の名前が分かるからな。


「えっとこの薬草は……、『(いにしえ)の草』ってなんだよその名前……」


 明らかにネーミングがヤバい物じゃん。

 何この森……希少な薬草なのは分かるけど何に使えるか分からないし、何よりこの薬草が地面の至る所に生えているって怖いな……。


「まよう! かいちゅうちて!」


 地面に生えてる薬草を根こそぎ採れと……。

 まぁ進みながら回収すれば良いだけだから、別に構わないけどね。


「お父さん! あの山の上まで登ろ!」


 ミルンは退屈なのか、先に見える山を指差して訴えかけて来た。

 

 山か……走れば直ぐに頂上まで行けるし、山の頂上には大きな岩が有るから、そこに登ればこの場所を見渡せるか……。


「分かったミルン、山の頂上まで行ってみるか! それなら──久し振りに合体だ!!」


「分かったのお父さん!」

「がっちゃい?」


 よく分からない魔法は置いといて、空間収納スキル以外で唯一俺が誇れるモノ。


 ミルンを肩にセットイン! してからミユンを抱っこして────準備完了!!


「良しっ! 二人共しっかり掴まってろよっ!」


 地面を踏み込み全力前進で突き進む────ドゥシャさんをも舌を巻く『速力』でもって森を突き進み、ふと──あの頃を思い出す。


「この速力があの時有れば──、豚野郎からも簡単に逃げられたのになっと、森の中だから結構スリル満点だ!」


「枝が邪魔なのっ!」

「まようこやいの!」


 ミルンとミユンは必死だけどね……俺はまだ全力じゃあ無いんだよふふふ。

 真っ直ぐ道が開けた瞬間に、俺の全力疾走を二人に味わって貰おう。


 スポーツカー等敵では無いと言う速さで森を抜け、山を駆け上がって行く中でチラッと見えた洞窟────「人工物……?」

 急に止まると危ないので、先ずは頂上を目指すべく走り続ける事一時間程だろうか、突き出した岩の上で絶景を見渡している。


「高いし凄い怖いなぁ……落ちたら死ぬぞ」


「海が見えるの人魚が小さい!」

「こやい! かえゆのまよう!」


 ミユンは高い所は苦手なのか?

 まぁ海側は絶景でこれぞ大自然って感じなんだけど──、問題は逆なんだよなぁ、

 反対側をくりっと体を捻って見てみると、遥か先まで砂漠が広がっており、今居る場所とのギャップが凄すぎて何も言えない。


「お砂ばっかりで変な場所なの。お父さん、あの先に何が有るのかな……」


 何と返せば良いのか。

 地球だと──大体砂漠にはオアシスが存在しており、多少の生物も居た。

 サソリとか糞転がしとかサボテンとか。

 でも……あの砂漠は何か変なんだよなぁ。


「少し見に行ってみるか?」


「行くの!」

「おいゆのみにいゆ!」


 決まりだな。

 ならもう一度──「全速力だ!」

 反対側には森が無く、山と砂漠の間には草が生い茂っているだけなので、ひたすら直線コースだから全力で走れる。

 

 駆け登った半分の時間で山を下り、丁度草と砂漠の境目で一旦止まって様子を見る。


 ミルンは肩から降りて地面をまじまじと見つめており、ミユンもミルンの真似をしている。

 俺も地面の砂を掬い上げ見てみるけど……、どこかで見た事のある様な光沢をしている。


「こえは……まちぇきなにょ!」


 ミユンが急に声を上げた。

 まちぇきって何だ……空間収納内に入れて、確認確認────っ、嘘だろ……。


「この砂全部……魔石が砕けたあとか……」


 砂漠と思っていたら……魔石の粉?

 いやいやどれだけの量だと思ってるんだよ。

 山の上から見渡した限りだと──重量換算すら馬鹿らしい量の魔石だぞ!?


「お父さん、これ魔石?」


「そうみたいだなミルン。一体どれ程の量の魔物が死ねば、こんな──砂漠みたいな風景になるのか想像も出来ないぞ」


「……もちゅもちゅ」


 えっ────「ミユン吐き出せ!!」

 直ぐにミユンを逆さまにして背中を撫で、喉に指を入れて『──くゆちいのまよう!』吐き出させようとするが暴れて上手く出来ない。


「糞っ!? こうなりゃ水を山程飲ませて吐き出させるかっ、それとも不味いモノ食わせてゲロらせるかっ、どっちにするっ!!」


「お父さん落ち着いて!!」


 ミルンの一言で我に返った……。


「およちてまよう! まちぇきたえゆの!」


 魔石の粉を口にしても何とも無いだと……。

 以前リティナさんに聞いた限りでは、魔石は魔物の核であり、魔法を使う為の触媒であると言う話だったけど……、なんでそんなモノを食べて平然としているんだミユン。


「ミユン……お前は何者だ?」


 ずっと疑問に思っていた事。

 流石に魔石の粉を口にしたなら、聞くしか無くなるよなぁ。


 この異世界の魔物は──例えばオークがゴブリンを襲い捕食する際に、必ず魔石ごと噛み砕いて食べるという。その魔石から得た力を蓄えて、ハイオークや上位個体と呼ばれるモノへ進化するらしい。


 ならば────目の前で魔石の粉を口にしたミユンは一体何者なんだろうか……。

 

「まようと、おはなちちたいの!」


 俺と話……って言ってるんだよな。


「ミユンその前に吐き出すの──っ!!」


 真面目な話をしようとしたら、ミルンの強烈な可愛いパンチがミユンのお腹に突き刺さり、『ぶふっ────っ!?』と飲み込んでいた魔石の粉と、食べたお魚を吹き出して……その場に膝を付いて倒れ……意識を失った。


「ミルン今大事なお話してたのに!?」



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