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異世界とは愛すべき者達の居る世界  作者: かみのみさき
三章 異世界とは妖精さんが居る世界
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異世界サバイバルではありません.4



 人魚さん曰く────ここ最近になって、海の魔物達が騒ぎ出し、種族間での縄張り争いが勃発。多数の同族が襲われて、少なく無い被害がでているとの事。


「俺が助ける義理は──、無いよな?」


 そう言った争いは地球でも山程有るし、下手に関わると碌でも無い事になる。


「それが……、その争いの発端が、魔王様のお放ちになった……あの魔法なのです」


 うぇっ? なんでミルン砲が種族間での争いに関係するんだよ。全く関係が無いし、こじつけにも程があるぞ?


「いやいや、そんな馬鹿な事が有るかよ。なんで俺の魔法で争いが起きるんだ?」


「それは────」

 

 人魚さんの話を聞くと、馬鹿らしくなる。

 俺の放ったミルン砲を遠くの海から見て恐怖を覚え、傘下に加わりたい者と、逆に力を見せつけたい者が争いを始め、力を見せつけたい者が勝てば、エイドノア大陸へ攻め込むと言う何とも馬鹿な話だ。


「黒姫が居るから絶対勝てないよ?」

「わたちもいゆのよ!」


 ミルンの言う通り。

 下手にエイドノア大陸に攻め入れば、あのリシュエルと、タイマンで互角だった黒姫に消炭にされるだろうし、桃色お化けも未だにファンガーデンで暮らしているから……無理じゃね。

 ミユンは何を言ってるのか分からん。


「え──っと、人魚さんや。魔龍って知ってるか?」


 確か黒姫は──五百年程眠ってたって言ってたから、人魚さんが知ってるかどうかなんだが、『はい、魔龍様の事は存じております』問題無い様だな。


「その魔龍……復活してて、エイドノア大陸でのんびりしてるから、攻め込んだら全員消炭になるけど──、大丈夫か?」


「えっ…………」


 人魚さんが固まった……。

 ミルンが、人魚さんの魚部分を涎を垂らしながらペロペロしてるけど、一切動かない。

 コレは──桃色お化けの事は黙っておいた方が良いな。


「お腹空いたの! お魚食べたい!」

「わたちゅみょ!」


 人魚さんの目の前で……ミルンさん、ミユンさん、パネェっす。

 そういやミルンがデカい魚抱えてたな……それなら、丸々一尾の焼き魚にしよう。


 部屋の中にある調理場じゃあ無理だから、一旦外へ出て、調理場を設置。と言っても魚の丸焼きだからさして手間も無く、デカい魚の鱗や内臓を取って、太めの木の杭をぐりぐりと差し込み、石で囲いを作った砂場へ刺して、枯れ枝を敷き詰め火をつける。

 

 軽くレモモを振りかけて、じっくりと、だが強火でしっかり炙っていくと──良い匂いが辺りに広がっていくなぁ。


「まっ魔王様!! 魔龍様が御復活なされたと言うお話は真実で御座いますか!?」


 人魚さんようやく動いたな。


「本当も何も一緒に暮らしてるからな。のぢゃのぢゃ煩いけど──と、良い感じに焼けたな。ミルン、ミユンお魚焼けたぞ──」


「お魚──!!」

「おちゃかにゃ──!!」


 ミルンは耳をピコピコ尻尾を振り振り可愛いし、ミユンは背中の小さな羽がパタパタしているなぁ。

「人魚さんも食うか? あっ……」

 しまった……ついその場の勢いで失礼な事を言っちゃったぁ。


「頂きます魔王様……本当に魔龍様と一緒に暮らしているのですか……あら美味しい」


 人魚さんがお魚を普通に食べている……。

 ミルンとミユンも若干衝撃だった様で、魚を手に取ると人魚から離れて食べ始めたし。


「人魚は怖いお肉……ムグムグ」

「はやえてたべゆよ……もちゅもちゅ」


 ミルンはまだ人魚を食おうとしてるな。

 襲って来るならまだしも、無抵抗の、しかも上半身は美人な人魚さんを食うのは──、流石の俺でも心が痛む様な気がする。

 

「まぁそんな訳で、俺がわざわざ人魚達を助けてもしんどいだけ。どうぞお互い好きに争って、エイドノアへ攻め込んでも良いぞ。さっきも言ったが、攻め込んだ奴等は消炭だろうけどね」


 もしかしたら黒姫が食べるかも知れないけど、ぶっちゃけどうでも良い。俺が守りたい者達の中に、お前らは居ないからなぁ。


「そんなっ……助けて頂けないのですか!? 出来る事は何でもします! この身体を食したいのであればっ、好きにして下さっても結構です! ですからどうか! どうか我が子達をお助け下さい!!」


 人魚さん子持ちだったのかよ。

 どうりで大人の色気と言うか、俺の食指が動かなかった訳だよ……。

 えっ動いてた? 気の所為です。

 むぅ……子持ちかぁ……イクラ……はっ!? いかんいかん人魚さんの子供をイクラと一緒にしたら……でも、イクラは食いたいなぁ。


「報酬は? 動くからには──そうだな、食べ物なら赤い粒々の卵みたいな奴が有れば良いし、貴金属や宝石でも良い」


「さすがお父さん、無料では働かないの!」

「むよう?」


 ふははは誰だってそうさミルン。

 もし人魚さんに『タダで助けて』と言われたら、一生水槽にいれて、泣かして真珠を取り放題にするだろう。


「ひっ──っ、お支払いします! 赤い卵は私のお腹から出せますし、貴金属も沢山御座います! それでどうかお願い致します!」


 人魚さん卵だせるの!? 

 うん! 凄く気になるけど──『いらんわ!』

 普通のお魚からならまだしも、人魚さんの卵は食いたく無い!!


「人魚の卵……じゅるりっ」

「たえれゆの……じゅるっ」


 ほら……そんな事言うから、ミルンとミユンの人魚さんを見る目が──お肉を見る様な目になっちゃったよ。


「どうなっても知らんぞ俺は……。それで、争っている奴等はどんな魔物だ?」


 海の魔物なんて知らないぞ俺は。


「争っているのは……オクトパスマンティス族と、パラダイスクラーケン族です。巨大な者達なので、暴れられると私達ではどうにもならず、食べられてしまいます」


 あ──うん。

 タコなの? カマキリなの? どっちなの?

 楽園のイカって何?

 頭がハッピーなのか?


「良しっ、イカ焼きとタコ焼きにしよう。そいつらをこの浜辺まで呼んでくれ。速攻で豪炎ぶっ放して焼くからさ!」


「それは出来ますが……何卒、他の海に住まう者達の事をお考え頂きます様、お願い申し上げます魔王様……」


 大丈夫だ、安心してくれ! 海が干上がる程の威力は出ない筈だからな!


「ミユン。一緒に森へ逃げる準備をするの。お父さんがまたやりそう……」

「まようこやいっ!」



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