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異世界とは愛すべき者達の居る世界  作者: かみのみさき
三章 異世界とは妖精さんが居る世界
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異世界サバイバルではありません.3



 目の前に、白い目で泡を吹いて倒れている人魚が居たとしよう。

 コレを魔物と捉えるか、魚と捉えるか、若しくは獣族達と同じ様な者と捉えるか、君ならどう捉える……。と人が居たら聞いてみたいと本気で思うよなぁ、この状況。


 因みにミルンは、『お肉……じゅるっ』と涎を垂らしながら、その人魚の立派な御山様をつついてるし、ミユンも、『たべゆ? じゅるっ』とミルンと同じく涎を垂らしながら、人魚の下半身を撫で撫でしている。


 確か人魚のお肉を食べると──、不老不死になるって伝承があった様な、無かった様な……気がするけど、こんな美人? 美魚? を食うのは流石に気が引ける。


「お──い、人魚さん起きろ──」


 ペシペシと頬を叩くが、その度に揺れる立派な御山様に目が──『お父さん……』行く訳がないじゃないか、ミルンがコッチをガン見してるけど何もしてないよ!!


「とりあえずセーフハウスに運ぶか。ミルンとミユンは──、『お魚獲って来るの!』そんなに食べたいのか……。分かった、あまり深い所に行くんじゃ無いぞ」

 

『わたちゅみょ、おちゃかにゃとゆ!』


 ミユンも残るみたいだな。

 ミルンがしっかり見ているし、俺はこの人魚を運ぶとしますかねっと「重っ……」


 尻尾側を持って引き摺るが、この人魚は結構重たい……マジで。

 肩を組むと、立派な御山様が当たって、ミルンの股間撲滅パンチをくらいそうだから、仕方無いんだよ。


 ずりずりと人魚をセーフハウスに運んで、板の上に寝せてから、しっかりと塩を揉み込み滑りを落として、鱗を────

「ひやぁああああああああ────!?」

────おっ目が覚めたかっ、俺は一体何をしようとしてたんだ!?


「危ねぇ──尻尾持ってたから、魚と思い込んで危うく捌くところだったわ……」


 バタバタと暴れてるけどここは陸地だからな。泳ぐ事も逃げる事もできないぞぉ。


「たっ食べ無いで下さい! 私はただ話を聞いて欲しくてっ、後をつけただけなんです!」


 そんな泣きながら言わなくても……、涙が落ちた矢先から真珠になっていくだと!?

 ほぁ──真珠なんてあの桃色お化けが付けていた装飾以外で見るの初めてだなぁ……。


「……人魚さんのグラム単価は幾ら?」


 捌き用の包丁を片手にもって、ニコォっと笑顔で下半身を撫で撫で……鱗痛いな。


「食べないでぇえええええええ────!!」


 涙がポロポロ真珠が沢山だぁ。

 この真珠絶対高級品だよな……とりあえず空間収納にしまって、欲の出しすぎは駄目だから──、このぐらいか。


「すまん冗談だ。流石に──意思疎通ができる乳丸出しの露出狂を食べる趣味は、俺には無いからな」


 ミルンとミユンは、涎垂らしながら斧持って捌きそうだけどね。


「本当ですか? それに、露出狂って何ですか? 酷く失礼な事と言う感じがするのですが」


 露出狂を知らないのか? ってそれはそうだな。海に住んでれば知る訳ないか。


「人間は服着てるだろ。そんでアンタは乳丸出しの全裸だよな。人の間じゃそんな奴の事を、変態か、露出狂という侮蔑の言葉で呼ぶんだよ」


 あっ……乳を腕で隠した。

 いやはみ出てるからね人魚さんや、これでも巻いておきなさいな。

 大きめの布を渡して、取り敢えず御立派な御山様を隠してもらったぞ。


「陸に住まう人は、こんなにキツい思いをして、こんな布を巻き付けてるのですね……」


 シュルシュルと器用に巻いていく。


「うぅむ……コレはコレで悪くないな……」


 ゆるふわロングのブロンドヘアーとそれと同じ色を宿す瞳が合わさり端正な顔立ちと言うこともあって海外の女優さんみたいな色香を醸し出してその御山様との黄金比たるや最早海の至宝といっても過言では無く腰のラインから下が輝く鱗に覆われたふっくらとした身が柔らかそうな魚類そのものであるがコレはコレで上半身とのバランスが取れておりぶっちゃけ物凄く美味しそうで──、『お、と、う、さ、ん?』


 ひぎゃぁああああああ────!?

「あっああ、ミルンかびっくりしたなあ!?」


 いつの間にかミルンが背後に来ていたよ。

 音も無かったし気配もしなかったな……まさか魔法で移動してきたのか!?


「お父さんは見境が無いの! お肉に劣情したらダメなんだよ!」

「おにきゅったべゆの!」


「ひぃいいいいいいっ!?」


 人魚に向ける眼が、獲物を見る眼になってるよミルンさんや──い。あと若干滑舌良くなってきてるなミユン……食べないぞ。


「二人共一旦落ち着きなさい。なんか──この人魚さんが、俺達にお願いがあるらしいぞ」


「もちゅもちゅ」

「食べないでぇえええええ!?」


 いつの間にか──ミユンが人魚の尻尾を『もちゅもちゅ』してるぞ止めなさい!


「うぅぐすっ、鱗が溶けてるぅ……」


 ミユンは酸でも出してるのか。

 軽く叱ろうかねぇ。


「ミユン、人魚さんに今直ぐ謝りなさい。じゃないと帰ったら、黒姫と一緒に影さん達に送りつける『ごえんやちゃい!』からな……」


 どんだけ影さん達を怖がってるんだよ。

 アレか──小さい子供が悪さしたら、ナマハゲが来るぞ的な感じで、影達に連れていかれるぞぉみたいな。


「すまなかったな人魚さん。コレ、回復薬なんだけど──、人魚さんに効くかな?」


 空間収納にずっと入れっぱなしだったアイテムだけど、劣化してないから大丈夫だよな。


 人魚さんは蓋を開けて回復薬の臭いを嗅ぎ、頷いたかと思ったら、溶けた鱗にそれを振りかけると──みるみる傷が治っていった。

 異世界回復薬凄い効き目だなぁ。


「有り難う御座います。この薬は陸地でしか作られておらず、海に住まう我々からしたらとても貴重な物。先程は悲鳴を上げてしまい、申し訳御座いません……魔王様」


 いやいやこっちも悪かったからな。

 寧ろ謝るのは──俺らと言うか俺だよね!

 さっき捌きかけたしな……?

 この人魚今俺に魔王って言ったか?


「えっ……俺、魔王じゃないけど?」


 取り敢えず……誤魔化せっ!

 何で人魚さんからその言葉が出て来るんだ、誰だよ広めたの!!


「私は……この海から見ておりました。あの空を割った、そちらの御嬢様そっくりの魔法を。そしてその魔力は、貴方様が纏うモノと全く同じモノ。貴方様は魔王様に間違い御座いません。どうか我らを──お助け下さい──っ」


 おうまいごってすってか。

 人魚さんのその姿……神に祈りを捧げる姿なんだけど──、魔王にソレってどうなのよ?

 祈るなら桃色お化けに祈ってくれ……。

 アイツ絶対喜ぶからさ……。



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