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異世界とは愛すべき者達の居る世界  作者: かみのみさき
三章 異世界とは妖精さんが居る世界

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異世界サバイバルではありません.1




 ミルンの全力船漕ぎ漕ぎマックスパワーで海を漂い一週間が経過しましたね。

 マジでヤバいのこの状況。

 何がヤバいかって?

 ミルンやミユンの様な元気真っ盛りのケモっ子幼女幼児がだ、ずっと船の上で我慢出来ると思うか普通。俺の様にザッ、ニート万歳だったら狭い空間でも年中快適に過ごせるけど、この二人にそれを求めるのは酷というものだろう。


「お父さん──走りたいの! 地面に足を付けたいの! ゆらゆら揺れるのはもう嫌なの!!」


 船の上でミルンはジタバタと駄々を捏ね、下手をすれば船が壊れる勢いだ。


「もちゅもちゅ……ぬわぁい!」


 ミユンは更に意味が分からない。

 何も食べていないのに、もちゅもちゅと口を動かして何かを食べている。

 空気を食べているのだろうか……。


 ぶっちゃけ俺も──、少しだけ参っている。

 ニートだから堪えられると思ったけど、実際小船で一週間……暇過ぎて死ぬる。

 海の魔物達が攻めて来たら盛大にストレス発散をしようと思っていたのに、全く攻めて来る気配が無い。四日前から後方をつけて来ているヒレ……攻めて来る訳でも無く、ただひたすらに後をつけ、俺達を監視している様にも見える。


「試しに……空へミルン砲を放ってみるか?」


 もしかしたら黒姫辺りが空から来てくれるかも知れないし、撃って良いよねストレス発散出来るから!!


「お船壊れるから駄目!」

「ちにやくやい!」


 駄目かぁ……なら最終手段で、ミルンに取り敢えず真っ直ぐ漕いでもらおうか……。

 ストレス発散にもなるし、上手くいけばどこかの島に着けるかも知れないからな。


「ミルン! 波に揺られて漂うのは終了だ! オールを漕いで全力前進せよ!!」


 ミルンのイライラしていた尻尾がピン──ッとなり、目を見開かせてオールを持ち声を上げた。


「全速全身どこまでも行きます────!!」


 うん、どこまでもは止めてくださいねミルンさん、帰れなくなっちゃうから。

 前と同じく猛スピードを出して進むが、流石に二回目となれば慣れたもので、ミユンが『はゆいよや──!!』と悲鳴をあげながら俺に掴まり堪えているが、俺は別に何とも無い。

 考えてみれば俺自身が走る時に、これ以上のスピードは軽くでてるし、怖がる必要もなかったなと今更ながらにおもっ────たっ!?


 一瞬船が波に乗ってジャンプしたわ!?

 ごめん嘘! 怖い!!


「揺れる! 揺れてマジ落ちるって怖えぇ!!」


 ははは俺も船にしがみつくよ!!

 それから太陽が沈むまで────何時間だろうか……、ミルンはひたすら海を爆走し続けた。

 体力お化けになってるねミルン……。

 後方のヒレは──流石海の魔物だな。この船のスピードについて来てるし、なんなんだろうかあの魔物は……。


            ◇ ◇ ◇


 翌朝────

 いったいどれ程の距離を移動したのか分からないが、目が覚めると船が止まっていた。

 波の揺れも無く、ゆっくりと起き上がるとそこは────「陸地っだぁあああ!!」

 砂浜に船が乗っかる様な形で止まっており、波にさらわれる事も無いだろう。


「ミルン! ミユン! 起きろっ陸地だぞ!!」


 俺は直ぐに二人に声をかけるが、二人とも涎を垂らして起きる気配が無い。


 ミルンは爆走の所為で相当の体力を使って疲れているのだろうし、ミユンも俺に全力でしがみついていたからなぁ……。


「まだ寝かせとくか……」


 一度海の方を確認──まだヒレが見えるな。

 だけど、流石に砂場までは来れない様で、沖の方でピタッと止まり、全く動かない。


「害は無いから良いけど……何だろうなアレ」


 それよりも今は──だ。

 魔物が居ないか周囲を確認して──、森の奥には山が見えるな。

 ここが大陸なのか、それとも島なのかによって今後の行動が変わるからな。頼むから何処かの大陸であります様に!!


「魔物が居ないなら、ミルンやミユンが寝ている間に、仮設小屋を建てておくかな」


 ふははは! そんな事は想像していなかったけどもだ、ファンガーデンのセーフゾーンに置いてある物一式は、常に空間収納内に有るのだよ! 食料も、水も有るし、寝床も風呂もトイレすら有る! 


「本当にチート様々だなぁ……。後は魔物さえ出なければ、何も問題無しだ!!」


 空間収納から組立小屋セットを出して、一個一個枠に嵌め込んでいくんだけどっ! セーフハウスに有る設備わっ! ミルンに手伝って貰ったりっ! 建築屋のっ! 親方達にやって貰ったからっ! 自分でやるとっ! 糞重てぇなぁあああ!!


「しまったっ! ミルン起きてから始めればよかったな!! あ────重たいわ!!」


 それでも、俺が考え親方達が形にしてくれた組立式簡易小屋だ。糞重たかったけど、俺一人でも何とか建てる事が出来た。


 屋根付き壁無しの小屋だな。

 壁の代わりにテントシートを貼り付けて、金具で固定すれば──「完成っと」

 あとは──トイレと風呂だな。


 トイレは、土を掘り板壁をそこに埋めて、囲いを作り、先ずは土を盛り上げ一段高く、その上に便座を設置。

 便座にS字の管を取り付け、その管の反対側を囲いの外へと延長して、一段下に容器を設置して、それと繋ぎ合わせる。


「簡易水洗トイレの完成だな。排泄流す用の水は目の前に広がってるから、流し放題だ」


 風呂は勿論、なんちゃってドラム缶風呂だ。

 貴重な鉱物を使い、親方達が丹精込めて作ったお風呂。湯は冷めにくく、何気に疲れが良く取れるんだよ!!

 

「風呂は小屋の横で良いかな──完璧じゃん」


 側から見たら、この場所に何年いる気だよと言われそうな設備だが、これでも簡易なのだ。


 だって────『ミルン像』が無いからな!!

 ミルン像を置かない限り、お前達はずっと、簡易のままなんだ!!


「お父さんが……また可笑しくなったの!」

「まよう……こやい」


 二人が起きた様だな。

 今後の動き方を相談しようかねぇ。



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