知らない場所で遊ぶとこうなる.4
アルカディアスの検問所を抜けてから三日。
俺達はアルカディアスの首都でのんびりと────では無く、首都に近い海沿いの村で、のんびりとしていた。
だって……海産物が欲しいだけだから、無理に首都まで行く必要無くね? と思ってしまったので、それなら騒がしい都じゃ無くて、もう町でも村でも良いよね──と我儘を通し、村での魚介類買占めを実行中。
「兄ちゃん! そいつぁ売れねえぞ! 都に持って行くんだからなぁ!!」
「いやいや鮮度が命だろ! 都まで二日! その間に少しでも痛んだら勿体無いから! 俺にそれを売ってくれ!!」
村の漁師達と直接交渉。
真鯛っぽい魚や、ヒラメっぽい魚等、所々牙がデカい魚が多いけど、刺身に煮物に焼き物に! 絶対美味いだろ!!
そして────目の前にはマグロっぽい魚!
これは是非とも買取りたい!!
「言い値で買う! だから売ってくれ!」
「無理だって言っとるがっ! 金何ぞいらねぇや! 俺らは漁師! 金が無くても食っていけらぁね!!」
ぐ──っ、中々折れないなこの漁師さん。
金が要らないならっ、コイツはどうだ!!
「魔物肉と交換ならどうだ! その魚の重さの倍の量を出す!!」
「────っ!? なぁにホラ吹いてんだぁ! 何処にそんな量もってやがる!」
食いついたな『有るぞここに!!』
魚ばっかり食べてるから、他の肉も食べたくなる時があるもんなぁ!!
空間収納から六百キロの肉達を出して、漁師の眼を釘付けにする。
「オメェさん魔法使いか!? 凄げぇ……コレなら──、女房も精をつけれらぁあ! 分かった! ここの魚全部もってけ──!!」
よっしゃぁあああっ!!
肉の在庫は減ったが、ジアストールに戻れば山程手に入るし、マグロっぽい魚ゲットだぁあああ────!!
「お父さんが嬉しそう! お魚さんっ」
「これミルン、お魚をツンツンするで無いのぢゃ。眼がコッチを見て怖いのぢゃ……」
「おぉう、みやいえ!」
コレで魚介類が手に入ったな。
空間収納内で保存しておけば、いつでも新鮮な魚介が食べ放題だ!!
「旦那様、あちらに鉄板を用意致しました」
流石ドゥシャさん!
俺の事を良く理解してるよね!
「海産物のバーベキューだ! 食うぞ──!!」
異世界でこんなバーベキューが出来るなんて、最高だよなぁ……あれ?
「そういや、シャルネは何処言ったんだ?」
村に来て直ぐは居た筈なのに──、周りを見ても、姿が見えないんだけど……トイレか?
「シャルネなら首都へ行かれました。なんでも、検問所の件に関して、直接王妃へ文句を言って来るとの事。放って置いても問題無いかと思われます」
そっ、そうなんだ……。
あのシャルネが文句を言うって──、絶対物理で押し通るだろアイツ……。
「まぁ良いか。それよりも今は──、バーベキューだよっ、ひゃっほ──い!!」
「お魚さん食べるの?」
「眼が怖いのぢゃ……」
「やぁ! こやい!」
ミルンの尻尾は若干揺れているから、興味はありそうだけど──黒姫とミユンが一歩どころかドン引きだな……。
◇ ◇ ◇
「黒姫とっちゃ駄目! それはミルンの貝なの!!」
「ふははは甘いのじゃミルンよ! 今の姿の我に敵うとでも──っ、魔法は狡いのじゃ! それは我のツマミぞ!」
「ふわわわ……。うみゃうみゃっ、ふわわわ……。うみゃうみゃ……」
さっきまであんなに嫌がっていたのに……。
貝類に魚醤を垂らして焼いていたら、三人共が鼻をすんすんっ、とし始めて、涎を垂らしながら貝類やら魚達に狙いを定め、出来たぞと言った瞬間に襲い掛かって来た……。
黒姫なんか、わざわざ大人バージョンになってまで、必死に食べようとしているし、その黒姫に対して、ミルンが魔法で応戦している。
ミユンだけは……貝を黙々と食べてるけど、何か幸せそうな顔してるな。
「死ぬかと思ったぁ……。ほいドゥシャさんの分はコレね──」
「有難う御座います旦那様」
ドゥシャさんにも、焼いた魚や貝を渡したけど、俺は焼き魚や貝よりも──、刺身を食う!
まな板設置良し!
刺身包丁良し!
マグロっぽい魚は、ファンガーデンに帰ってから捌くとして、今はカツオっぽい魚だ!!
先ずは、水で洗って鱗を取るっ!!
確か──、ヒレの下に包丁入れて、逆側も同じ様にっ、そしたら頭の骨が上手く切れる筈っと──。
腹から下に包丁を入れて、逆も同じく、そしたら頭を持って────もぎる!!
「次は……何だったかなぁ……」
「旦那様。私がお斬り致しましょうか?」
……そうだった。別に自分で捌かなくても、万能メイド様が居るじゃん……。
「お願い出来るかドゥシャさん」
「お任せ下さいませ。ふ──っ、シィッ!!」
何故かカツオっぽい魚を空中へ投げ、ドゥシャさんが息を吐き出した瞬間に、綺麗な刺身が空を泳ぎ────飛んで来た鳥に何枚か取られ、それ以外が皿に並んだ。
「旦那様の料理を奪うなどっ、許されない蛮行っ、あの鳥を焼き鳥に致しますので、暫くお待ち下さいませ!!」
ドゥシャさんがプチ切れじゃん。
別に少し取られただけだから、良いんだけど……刺身食べてまってようかな。
ムグムグ……美味いっ。
魚醤と抜群の相性だなぁ……。
ミルン達がコッチを凝視してるけど、このお魚は流石にあげれません。
「お父さんが……生食してるの!?」
「生で魚を食ってるのぢゃ!?」
「まようこやい!?」
なんか非難してないかなあの三人。
新鮮なお魚は、生でも美味しいんだぞぉ。
うまうま……清酒が欲しい……。