知らない場所で遊ぶとこうなる.2
俺は急ぎ──、以前は屋敷で執務をしていた、村長が居るであろう役場へと向かい、部屋を開けて開口一番『旅行行って来るから』と、だけ伝え、中に居た村長が追いかけて来たが、俺の足にの速さに勝てる訳も無く、直ぐに自宅へと全力疾走で戻った。
「ドゥシャさんも一緒に来るよな?」
ミルンは一緒に来るだろうし、ミルンが来るならドゥシャさんも一緒だよな?
「勿論お供させて頂きます。いつ頃に出立されるのでしょうか?」
そうだなぁ……。食料諸々は──、俺の空間収納内に備蓄があるし、着替え一式と──、水樽を五十程かなぁ……。
移動中に、風呂が入れないのは嫌だからな。
魔法で出しても良いけど……、絶対にドゥシャさんやミルン、黒姫に止められるだろうし、水なら、幾ら有っても困らんからね。
「じゃあ早めに。明日出るから──、水樽五十と、着替え一式を用意してくれ」
「畏まりました旦那様。本日中に、全て御用意いたします」
うんうん。持つべきは完璧メイドさんだね。
「どこか行くの?」
「我は飛ばぬぞ……でも行くのぢゃ!」
「わたちも、つえていっちぇ!」
ミルンは尻尾をぶんぶんと振り回し、黒姫は警戒しながらも行く気満々。ミユンも置いて行く訳にはいかないから、一緒にだな。
結局、役場で照会したが、ミユンの親と思しき者が居らず、ミルンがミユンを離さないので、一旦我が家でお預かりしている。
「馬は私が用意しておきますわ。アルカディアスに来て頂くのですから、代金も要りませんの」
おっ……おう。
助かるけど──、別にシャルネの実家に行く訳じゃ無いからね。
「んじゃぁ──、馬は任せるよシャルネ」
相変わらずの鉄仮面だなぁ……。
あとは何も用意する物無いよ────
「流君は居るかぁあああああ────っ!!」
────案外早く来たな村長。
勢い良く『バキィッ!!』っと音を立てて扉を壊し、村長が汗だくになりながら入って来た。
「器物破損と、不法侵入罪だぞ村長──」
あっ、膝から崩れ落ちた……。
「頼むからっ、はぁ、はぁ、理由をっ、説明してっ、はぁ、はぁ、ふぅ──、生きたまえ!」
生き返りやがったな……しぶとい筋肉だ。
「村長は留守番な! 流石にガチの代表が居なくなったら──、不味いからな」
「私だってっ、休んでおらぬのだ!!」
へ──、珍しく本音で来たな……。
「じゃあ、村長も行くか? 俺は構わないけど──、役場の人達は何て言うかなぁ?」
「ぐ──っ、それを言われてわっ……ぬぅ」
村長は居残り確定だな。
戻って来たら──、少し休ませるか?
◇ ◇ ◇
まだ、日の光が遠くに若干見える程の早朝に、巨大な荷車を引き、キングマッスルホースが家の前に到着した。
「旦那様、御荷物は如何致しましょう」
「それは──、俺の空間収納に入れとくぞ。各自の衣類だけ馬車に積んでおけば、キングマッスルホースも、全速力で走れるだろ」
組立式の小屋や寝具等を全て、俺の空間収納内に入れておけば──、馬車内のスペースが広くとれるし、快適な旅になるからな……。流石に女性の下着や服は、自分で管理してくれ。
「畏まりました。御者はこのドゥシャが致します故、先に外にて、お待ちしております」
マジか。御者も出来るんだなドゥシャさんは……すげぇハイスペックよな……。
「お父さん! 準備できました!」
「ねみゅ……、……ゅ」
「眠いのぢゃ…馬車で寝るのぢゃ……」
元気なのはミルンだけだな……。ミユンなんて、ミルンに抱えられたまま寝てるし。
「おはよう御座いますわ魔王様。早くアルカディアスへ参りましょう」
早くって……アルカディアスの首都に着くのは──、馬車を休ませずに移動しても、大体一週間程かかるんだろうし、早くは無理だろ。
「急ぐ必要無いだろ。ゆっくりのんびりと、旅を楽しむんだからな」
そういや、シャルネとかレイズ国王って、どれぐらい時間かけてここまで来たんだ……。
いや、下手に聞いたら、何か恐ろしい事を言いそうだから……この件は置いておこう。
「ほいっ、ミルン達も馬車に乗りなさいな。俺は戸締りの確認したら行くからさ」
「安心安全防犯なの──」
えっ……どこで覚えたのそんな言葉……。走って出て行ったな……誰が教えたんだろぅ。
ミルンに母さんが教えてたとか──、有りそうだわ……。手洗いうがいに汚れを落とせって、良く父さんが言われていたからなぁ。
「おっと──急がなきゃな。待たせたらドゥシャさんに怒られそうだっ」
窓板よし、貴重品無し、忘れ物無しっと。
大丈夫だよな。
それじゃあ────「行ってきます!」
誰も居ないけど、なんか──、癖だよな。
馬車へと乗り込み『旦那様、遅いですよ』とドゥシャさんに軽く怒られ、いざ、生魚が待つアルカディアスへ────旅行だ!!