知らない場所で遊ぶとこうなる.1
右見て──、何も無い地平線。
左見て──、何も無い地平線。
後見て──、ヒレが見える地平線。
前見て──、ミルンに抱っこされたミユン。
下見て──、ちょっと良い小船。
上見て──、澄み渡る青い空……。
さあ、ミルン、ミユンもご一緒に────
「ここわぁっ何処だぁあああああ────!?」
「お父さん煩いの!!」
「うゆちゃゆの!」
────ミルンとミユンが超厳しい!?
はいっ、と言うわけで──、現在何も無い海をただひたすらに漂流している訳ですが──、かれこれ三日は経ってますよね! はっはっはっ!!
えっ……三日漂流しているにしては元気過ぎないかって? だって空間収納に山程水と食料があるんだぞ──、だから何も問題無しだ!!
小船の上だからって──、運動しないと体がなまるからな! しっかりと腕立て腹筋スクワットを────十回やったら直ぐ飽きたよ!
「おっ…お父さんが……壊れたの!」
「まよう……だゆぢょゅ?」
はっはっは! 二人共安心しなさい! こう見えても俺は────超焦ってますからね!!
だって……食料有っても……トイレがね……。
大海原にダイレクトですから……。
お魚さん…大喜びだね……。
「そこに群がる魚達を……、ミルンが狙うんだぜ……。全力で止めたけどね!!」
異世界と言っても……ゲームじゃ無くて、現実だもんなぁ……。
「お魚ぁ……釣れないの──!」
「よちゃかやさわゆ!」
ミルンとミユンは元気だねぇ……。
小船と言っても全長五メートル程の良い大きさの船なので、寝るにも問題無しっと……。
寝転がり、空を見上げてふと思う。
コレは何処まで、流されて行くのか……。
「はぁ……。長い休暇と……思えば良いか」
何でこんな事になったのか……寝よ……。
◇ ◇ ◇
それは──ここ城塞都市ファンガーデンと、海洋国家アルカディアスとの、交易路が開通してから十日経ったある日の事。
ふと────俺は思った。
仕事を休んでも、問題無くね……と。
国家間の条約での交易は、ジアストールが建国されてから初めての事とはいえ、このファンガーデンに来る人数はたかが知れていると思っていた。
アルカディアスでも、噂になっているから。
何の噂かって──?
勿論魔王様の事だよ……。
しかもあのレイズ国王っ……魔王と娘が婚約するかも────やったぁあああ──!! みたいな事を、堂々と自国の民に宣伝しやがった!!
あの殺戮人形と、世にも恐ろしい魔王が居るこの、ファンガーデンに……、誰が来るんだと本気で思っていた。
はい、開通して二日目からは地獄ですね。
来るわ来るわ商人共がわんさかと……。
流石、海洋国家ならぬ、商業国家アルカディアスだよ。
売りに来てるのは勿論、塩、塩、塩、塩、塩、塩、昆布に魚醤!? 塩、乾物、乾物、塩、塩、魚醤!? みたいな感じかな。
勿論魚醤は買占めたぞ!
これぞ権力の成せる技だふはははは!!
但し……生魚が無い!!
いくら探しても、アルカディアスから来る商人達が持って来る中に、生魚が無いんだ!!
試しに聞いてみたら────
「ここに来る前に、痛んでダメになっちまうよ」
────って普通に言われた……。
水揚げされた魚は、直ぐに開き乾物するか、アルカディアス内で消費されてしまい、他国へ出すには無理があるとの事。
「まぁ……、交易路が出来ても、アルカディアスの一番近い村まで、一週間じゃあなぁ……」
冷凍技術が無い世界……魚は直ぐに痛んでしまうから、氷魔法か、水槽作って運ばない限り、このファンガーデンで出回る事が無いだろうなぁ……。
などと思いながら、来客の対応と、持込品や手土産等の確認。都市内部での空き地の斡旋や、商売許可証の承認のチェック等、死ぬ程忙しく、再度! また! 逃げようと──、頑張ったんだ……。頑張ろうとしたんだ……。
だけど────俺に逃げられない様、餌付けされたミルンが横で見張りをしている為……俺はやるしかなかった。
「お肉のためです!!」
目がもうお肉しか見てないよねミルンさん。
それから数日……。
来る商人の数が一定数となり、役所の人員で捌ける様になったので、ようやく地獄から解放されたんだ!!
なればこそ!
仕事の疲れを癒さねば!
今後の仕事から──『全力で逃げるからな!』
「魔王が急に、元気に成りおったのぢゃ……」
「まようあしょゆの!」
幼児と幼女は置いといて──だっ!
魚だよ生魚! 魚醤が有るなら食べたくなるのが男の性だよね!!
「どうしたのお父さん?」
「また旦那様が……変な御顔を……」
よしっ、黒姫かキングマッスルホースに乗って────『海に行こう!!』
「あら──、私共の国に行かれるのでしたら、道案内はお任せ下さいませ」
えっ!? シャルネッ、お前も来るの!?