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異世界とは愛すべき者達の居る世界  作者: かみのみさき
三章 異世界とは妖精さんが居る世界
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働きたくない症候群.5



 もう間も無く、交易路の開通式が始まろうとしているが、俺は、村長から進行役と聞いていた。進行役の筈だった。


「あの脳内筋肉めっ……、嘘吐きやがったっ」


 俺は現在貴賓席で、アルカディアスのレイズ国王と、ジアストールの女王ルシィに挟まれながら、進行役の村長を睨みつつ、恨み節を吐いている。


「魔王が御機嫌斜めなのぢゃ」

「お父さん。お静かに!」

「ぬみゅぃ……」


 俺が勝手に動かない様、ドゥシャさんの指示により、肩の上にドレス姿のミルンが乗り、右膝に黒姫、左膝にミユンが座って、下手に動けない仕様となっております……。


 王様に挟まれて居るにも関わらず、こんな姿で堂々としている俺に、両国の貴族達は、呆れを通り越して、ドン引きだよね。


「というかさ……、なんでリティナはしれっと、一般席でだらだらしてるんだ。アイツ聖女なんだから、こっち側に座るべきだろ」


 最近は、世界樹の葉っぱを集めるのに、湖で毎日泳いでいた様だけど……、聖女が何してるんだよ。


「なんじゃ魔王、知らぬのか。聖女の持つ特権の一つに、こういった行事の際には、顔は出さねばならぬが、それ以外は自由とする。というモノがあるのじゃ」


 何それ超羨ましい特権なんですけど……。

 その特権が有れば、さっきみたいな貴族対応もしなくて良いし、お偉い奴に挟まれながら座る事も無いって事だろ……良いなぁ。


「相談役には特権は無いのか?」


 くれっ! 特権くれっ!! くれなきゃこの場で、泣き虫ルシィの名を広めるぞ!!


「何じゃっ一瞬寒気がしたのぅ……。貴様に与えた相談役にも特権はあるのじゃ」


 初耳だぞ女王ルシィ。

 何でそんな大事な事を言わないんだよ、この泣き虫べそ女王め。


「平民でありながら、貴族の娘と結婚できる特権じゃな。良い特権じゃろ?」


「それを特権とは言いたく無い!」


 俺は決められた結婚なぞ真平御免の現代人だぞ! 政略結構なぞ持っての他だ!!

 ドゥシャさんと知らない間に、婚約とかなっているらしいけど、ドゥシャさんが嫌と分かったら直ぐ解消するからな!


「ふむ。流殿は付き合ってから、決めるタイプなのじゃな……。ならば娘にも、希望はあるようじゃ!」


 急に話に入ってくるなよ、レイズ国王様よ!

 おたくの娘が、毎日毎日家に入り浸るから、俺の気が休まらないんだ!! と、目で訴えるけど素知らぬ顔しやがって……この親子嫌い。


「揃って鋼のメンタルかよ……」


「メンタルってなあに?」


 おっ……この世界に無い言葉なのか、珍しくミルンが質問してきたな……どう説明するか。


「ミルンさんや。鋼のメンタルって言うのはね、何を言われても、何をされても動じない、両隣りに居る王様達の事を言うんだよ──。だから、『この泣き虫女王』とか、『親バカ愚王』とか言っても────全然大丈夫なんだ」


 おっ、二人の視線が、同時に俺に向けられたけど──、俺の言う通りだろ二人共さ。


「魔王だけには言われたくないわ!!」

「儂は親バカでは無く、娘が怖いだけじゃ!!」


 おいおい二人とも、そんな大きい声をだすと、周りの貴族連中が──ギョッとして、何事かとそわそわするじゃ無いか。


「二人共……、ちょっと静かにしようぜ」


「誰のせいだと──っ、覚えておれよ!」

「しまったっ!? ……娘が見ておるっ……」


 レイズ国王……、そんなにシャルネが怖いのかよ。


「今のミルンならシャルネに勝てるの!」

「我と一緒ならなのぢゃ!」

「ねみゅ……ゅ……」


          ◇ ◇ ◇


 そんなこんなで開通式の終わりが近づき、あとはルシィとレイズ国王が、お互いに交わした書面にサインをして、馬鹿みたいに豪奢な印鑑を押せば────「これで……終わりだよな?」


 なんか皆んな拍手してるげど──、俺は拍手よりも、さっさと帰ってダラダラしたい! ミルンをモフモフのんびりしたい!!


「お父さんも! 拍手なの!」


 くっ……、ミルンに怒られるのは、地味に効くんだよなぁ……大人としてね!


「わかったよぅミルン……」


   ────《ペチペチペチペチ》────


「それを……拍手とは言わぬのぢゃ……」

「てぅうってぅなけ!」


 ぐぅ……、黒姫とミユンにまで言われるとは……ならば────「花火を撃とうか!!」

 これならイベントの最後にもってこいだし、めでたい日のラストはコレでしょ!!


 今回は威圧無しで──、意識を集中、集中、集中させて、豪炎の魔法をイメージ、イメージ、イメージして──『ヤバいのぢゃっ!!』──空に手を向け──『逃げるの! ミユンもこっち!!』──花火を──「空へっ!!」


「魔王──、何をしておるの────」

「流殿はどうした────」

「流君!? やめたま────」

 

 二人の王と、村長がコッチを見ていたが、他の参列者や貴族共は気付いておらず、いや、リティナだけは後ろを振り返り、俺のやる事を理解したのか『馬鹿っニア逃げるで早よぉおおお──!!』と、全速力で物陰に避難したその時────爆音と共に──、青く澄み渡る大空が──、業火の炎で──、埋め尽くされた──。


「意外と威力でたなぁ……。空が見えないんですけど」


「やり過ぎだ馬鹿者がぁあああ────!!」

「貴様は加減を知らぬのか愚か者ぉおおお!!」

「流石我が娘が選んだ男……戦にならずに本当に良かった……」


 大人二人に怒られているが、俺は真面目に言い返したぞ!!


「俺をっ! 働かせようとするからだ!!」


 その言葉に、村長とルシィは頭を抱え、レイズ国王は高笑いをして、他の貴族達は腰を抜かし、なんとも締まらない形で、交易路の開通式は──、終了となった。


「いつもの旦那様ですね」

「さすが魔王様……惚れ惚れいたしますわ……」

「威圧があったら、終わってたのぢゃ!!」

「お父さん……加減出来た?」

「まよう──、つやいの!」


 女性陣が集まってヒソヒソしてるけど、もう帰っていいよね!!


 ジアストール国及び、アルカディアスの貴族間で交わされた密約……『あの馬鹿に監視の徹底を』が交わされたが、俺がそれを知り、貴族宅をランダムで訪問するのは────まだ先の事である。

 



 働きなく無い! 働きたく無い!

 働かせる世の中が悪いんだ!! 

 そんな漢に……私はなりたい!!


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