プロローグ
其れは遥か昔────古の神々との戦いか、或いは、古代種の暴走か────理由は定かでは無いが、本来ならば枯れる事の無い、生命の系譜たる『世界樹』が枯れ果ててから、どれ程の年月が経ったであろうか。
それは偶然だったのか。
それは必然だったのか。
とある一人の男が、何処からか『世界樹の枝』を入手して、それを龍の気が溜まっていた水源へと差し込み、枝がその気を吸い上げて、みるみる力を取り戻し、かつての姿には程遠いが、悠久の時を経て、『世界樹』が復活した。
歓喜した。
喝采した。
踊り、歌って、それを讃えた。
しかし声が届かない。
普通の人には感知されない。
時折り龍が話しかけて来るが──、直ぐに何処かへと行ってしまう。
世界樹から見下ろす風景が──、ころころと変わりゆき──、時折り水辺に不審者が現れるけど──、それすらも愉しい。
愉しいが……、寂しい。
何故なら私は一人だから。
かつていた同胞は、何処かへと旅立って、今もまだ、会う事が出来ていない。
遥か昔に居たであろう──、王ならば、この様な時にどうされたのか。
少し前に。いつしか見なくなっていた、あの御使と、龍が戦い────危うくこの場所が消える所だった。
世界樹の力を借りて、御使の一撃を吸収し、世界樹の力として変換した。
一人の男は、それでも怒り狂っていたが。
その後直ぐに、御使に向けて──男が放ったあの力……。最早人にあるまじき、アレこそ、遥か昔に存在した、古き神々の魔法では? と思ってしまった。
それに……、あの男は似ている。
あの男は……、彼の魔王に似ている。
古き神々の力を持ちながらも、彼の魔王の姿が重なる不思議な存在……。
話をしたい。
彼の魔王の話を、あの男にしたい。
何故かは分からない。
でも……、話をしなければ。
世界樹の力を使ってでも。
私の存在が────変質したとしても。
彼の魔王の話を────あの男に……。
三章突入で御座います。
読んで頂いている皆様に、只々、心からの感謝を!!
是非、最後までお付き合い下さいませ!!