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異世界とは愛すべき者達の居る世界  作者: かみのみさき
二章 異世界とはのぢゃっ子ドラゴンが居る世界
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間話 ドゥシャの一日.5



 店の中へと入ると、外とは全くの真逆。

 薄暗いが、見えない訳では無く、夕日の色とでも言うのだろうか。落ち着いた雰囲気の店内では、静かに話をしながら、冒険者と羽人が、酒を交わしている。


 テーブル席が八つに、カウンターには十席。

 この時間でも、大半の席が埋まっており、この店が良心的である事が、見てとれる。


「いらっしゃいませ、お客様。紹介状を、拝見させて頂きたく存じます」


 成程。基本は紹介制で、外の客引きの子が同伴で有れば、そのまま席に着ける訳ですか。


「失礼致しました。私、監査役のドゥシャと申します。こちらの代表の方に、取り次いで頂けますか」


 おっと、顔色が変わりましたね。

 この男性は、監査役とはどう言う者か、良くご存知の様で、安心しました。


「こちらこそ大変失礼を。宜しければ、こちらの席でお待ち下さい。直ぐに代表を連れて参りますので────っ。そこの君、こちらの方に飲み物をっ」


 そこまで気を遣って頂かなくても。

 話を聞きたいだけですのに……。


「お隣、失礼致します。どうぞ、コチラをお飲み下さい。この店オリジナルのお酒ですの」


 そう言って、良く冷えたグラスに、ゆっくりとお酒が注がれていき、目の前に出される。

 氷を入れないのは、お酒の味が薄くなるからだろうか……。


「それでは、お言葉に甘えて────んくっ」


 一気飲みである。

 この風味……王城の中にあるお食事処の、米、なる穀物の香りが、より深く、より透き通る様に洗練され、酒精は濃いが、飲み易い。


「あら、お酒にお強いのね」


 暗部が、酒如きに潰れる訳もないですね。

 ついでに、この女性にも聞いておきましょう。


「一つお尋ねしたい事が。本日、黒姫様が来店され、お酒を樽呑みした際に、一緒に居たミルン御嬢様に、他国の通貨を渡された方を、ご存知でしょうか」


 少し上を向いて考えているが、何を思ったのか、一つの席に指を向けて────

「あそこでずっと、呑んでいる人よ」

────と言い放った。


 この様な高級店では、客の情報を一従業員が、語る事は無い。その常識を打ち壊し、指の先にフッ──っと、息を吹きかけ、ウインクして来る従業員は、間違い無く只者では無いだろう。だが、今はそれよりもです。


 黙々と呑み続けている男に近づき、横に座り、それと無く顔を見と────目が合った。


「なんだぁ、この店はメイドもいるのかぁ」


 この姿…傭兵風ですが、違いますね。

 傭兵よりも、兵士に近い雰囲気。

 酔っている様に見せて、私の目を見るその眼差しには、全くのブレが無い。

 間者か、逃亡兵か、どちらにせよ、放置するのは危険でしょう。

 一体どうやって、入り込んだのでしょうね。


「東の国から、どの様な御用件でしょう」


 私の言葉に男はピタリッ──と酔ったフリをやめて直ぐ、懐に手を入れて武器を取り出そうと────する前に、ドゥシャが動き、目、喉、胸と一瞬で殴打し、男は気絶した。


「尋問は、影に任せましょう」


 男の首根っこを掴み、ずるずると引き摺りながら、店を出て行こうとするが、ふと、思い出したかの様に後ろを向いて、先程の羽人に御辞儀をする。


「御協力、感謝致します。それと、お騒がせして、申し訳御座いませんでした。役場に言って頂ければ、金一封が出ますので、それでは」


 そう言い残し、店を後にした。



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