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異世界とは愛すべき者達の居る世界  作者: かみのみさき
二章 異世界とはのぢゃっ子ドラゴンが居る世界
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間話 ドゥシャの一日.4



 どこのお店でしょうか……。


 ミルン御嬢様の情報を元に、歓楽街へ来たものの、お店の名前を聞いておりませんでした。

 いや、何でも頼りにしていては、ミルン御嬢様付きのメイドとして、恥ずべき事。ここは自分の目と耳で調べなければ。


 昼過ぎだと言うのに、歓楽街は人通りが多く、冒険者や商人達が、下卑た眼をしながらお店へと吸い込まれて行く。


 客引きは主に、見目麗しい獣族の女性達。

 艶やかな耳と尻尾を動かして、男性の目を引き、その母性の塊でもって、男性の足を進ませ、手をそっと握り、暖簾なる布地の幕まで誘導して、そのまま中へと、連れて入る。


 旦那様の指示の下、ぼったくりや、無理な客引きは御法度。と通達されているので、普通の冒険者等が足繁く通い、繁盛している。


「余り、来たくは無いですが……」


 なぜなら、この場所に私が居ると────

「おぉ、耳の無い姐さんもいるじゃん」

「ねえお姉さんグヒッ。お店教えてよぉブヒッ」

「メイド姿……そそられるぅ」

────などと言った馬鹿共達が、私を客引きだと思い込み、下卑た眼を向けて来るから。


 仕方ないですね。

 これは不可抗力と言うモノで、この馬鹿共達から、情報を頂くと致しましょう。


「どうぞ。此方に御様います」


 笑顔で三人を────裏路地にご案内。

 さて、殺さぬ様、情報を聴き取りませんと、余り手間はかけたく無いですからね。


 何度も、同じ要領で裏路地へと誘い込み、その都度拷……聴き取りをして、ようやく六組目で、当たりを引いた。


 お店の名前は『羽に包まれて』と言い、羽人達のみで構成された、高級店と位置付けられる立派なお店。

 

 旦那様いわく────

『御胸様と、ふわふわな羽に包まれて呑むお酒は、例えそれが安酒だろうと、高級酒の味わいとなる至極の一時』

────と言われていたので、間違い無く行かれたであろう事を、ミルン御嬢様にご報告して、涙を流して逃げ惑っておられた。


「あそこですか……」


 客引きの羽人達も他の店と違い、無駄な誘導はせず、綺麗なドレスを着て、笑顔で手を振るのみと、悪く無い勧誘である。


 それでは、身分を使い中へと入りましょう。

 私のファンガーデン内の身分は、商会長及び、繁華街全般の監査役であり、歓楽街もそれに漏れず、私の匙加減で、潰れたり、営業不可となる事もしばしば。


「失礼致します。ドゥシャと申しますが、お店の責任者の方へ、取り次ぎをお願い致します」


 入口に立っていた、客引きの羽人達に声をかけたが、私の上から下を一瞥した後、溜息を吐いて、告げてくる。


「申し訳ないですが、人種の女性は雇えませんの。ここで働けるのは羽人だけ。職探しなら、役場に行くといいですわ。メイドさん」


 ん────っ、働きに来たのでは無いですが。横柄な態度ですが、役場をすすめて来るあたり、根は良い子なのでしょう。


「私は、監査役のドゥシャと申します。再度、お店の責任者の方へ、取り次ぎをお願い致します。出来ましたら早急に」


 先程は、監査役と名乗りませんでしたので、コレなら大丈夫でしょう。


「……監査役って何よ。あまりしつこいと、役場に訴えるわよ。仕事の邪魔をしないで下さるかしら」


 これは……予想外ですね。

 監査役を知らないと言う事は、この場所に来て日が浅いと言う事。店を運営するにあたり、監査役の存在を、従業員へ周知する様、厳命されておりますのに。


「仕方ないですね。勝手に入らせて頂きます」


 入口に立っていた羽人達が、ぎゃあぎゃあと騒ぎ立て、邪魔をして来ますが、無駄で御座いますので。


 中はどの様に、なっているのでしょうか。

 店に入れさせまいと、壁になる羽人達を、ゆっくりとした動きで落とし、中へと進む。



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