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異世界とは愛すべき者達の居る世界  作者: かみのみさき
二章 異世界とはのぢゃっ子ドラゴンが居る世界
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間話 ドゥシャの一日.1



 メイドの朝は早い。

 まだ外が薄暗い時間に起床して、身嗜みを整え、一度外へと出て、軽い運動をする。

 この都市は広い。

 城壁へと行くまでに相当な距離があり、城壁も高い為、鍛錬に丁度良い。などと思いながら、城壁を駆け上がり、最上部の通路へと到着した。


「旦那様のスピードには追いつけませんか……まだまだ、鍛えなければなりませんね」


 あの時、上空で、御使と黒姫様が戦われていた際に、旦那様がお戻りになられ、指示を仰ぐ為追いかけた時、間違い無く私以上の速さが出ていた。ジアストールの暗部であり、そのリーダーでも有る私よりもだ。

 初めて王宮でお会いした際は、間違い無く私の方が、遥かに強かったのに、今では他国の御令嬢にまでも負ける始末。


「それでも、院長ならば勝てるのでしょうね」


 孤児院の院長。

 元暗部のリーダーであり、歴代の中でも最上位。それこそ、黒姫様を封じ込めた彼の方よりも強い影。


「なぜ、戦われ無いのでしょうか」


 城壁の上を、ただひたすら走りながら考えるが、あの院長の思考を読む事自体不可能だ。なんならあの眼のチカラで、逆に丸裸にされてしまう。


「ふぅ……戻って朝食の準備をしませんと」


 遠くから日の光が若干見えた為、運動を切り上げて、勢い良く城壁の上から飛び降り、音も無く、風すら起こさずに着地する。

 

 家へと戻り、再度身嗜みを確認してから、手を洗い、口を嗽ぎ、朝食に使う食材を見てみる。


「何に致しましょうか……」


 ミルン御嬢様は、間違い無くお肉を所望される筈ですので、パンに少量のお野菜とお肉を挟んで、付け合わせにスープと致しましょう。


「朝はサッパリしたお肉が良いですね」


 コカトリスの胸肉を一口大に切り分け、旦那様がお持ちになったタレを揉み込み、味を染み込ませる。そして、少し時間を置いてから、油をひいた浅い鍋に、先程のコカトリスのお肉を入れて、しっかりと火を通す。

 旦那様いわく、食中毒なる毒を防ぐ為には、生食は厳禁で、ミルン御嬢様は生でもイケると仰られていましたが『それはミルンの胃腸がブラックホールだからだ!!』と、旦那様が御怒りになられていましたね。

 ブラックホールとは魔法なのでしょうか。

 おっと、焦げてしまわない様に気を付けながら、軽く冷ます為に皿へと移して、次はスープですね。

 野菜が苦手なミルン御嬢様の為に、出来るだけ細かく切った野菜を、深めの鍋に入れて、水、塩少々、旦那様がお持ちになられた香辛料を入れて、煮込む。

 沸騰しない様に気を付けながら、灰汁を取り、更に煮込む……後ろが騒がしいですね。

 あぁ、また黒姫様ですか。

 仕方無いですね。捕まえて影達に渡しましょう。毎度毎度、懲りないお方です。


「ムグムグ旨いのぢゃぁ」


「それは良う御座いました黒姫様」


 そんな騒がしくも、どこか楽しい食卓が、私のチカラを、削いでいるのやも知れませんね。


 結局、黒姫様はミルン御嬢様に捕まり、噴水の刑に処されたので、影達に渡すのは止めました。あの状態では、少し可哀想な気が致しましたので。


「んじゃ……いってきま──す」


 ここ最近の旦那様は、ここファンガーデンと、アルカディアスを結ぶ陸路を作る為、死んだ魚の眼をしながら仕事へ向かわれる。


「行ってらっしゃいませ旦那様」


 このやり取りを数日もしていると、既に婚姻を結んでいるのでは……と思わなくも無いですが、一向に旦那様が手をお出しにならないので、少し女としての自信を失っています。


「ドゥシャ、行って来ます!」


「のぢゃぁ……我も行くのぢゃ」


 ミルン御嬢様と黒姫様は、この都市を探検する事が日課となっており、時折、影すら知らない情報をお持ちになるから驚きですね。


「行ってらっしゃいませ。お怪我のありません様、気を付けて下さいませ」


 元気良く走って行かれた。

 万が一、億が一、ミルン御嬢様に何かあれば、旦那様が怒り狂って、この都市が壊滅してしまうやも知れませんからね。


「いざとなれば黒姫様がおりますし、心配の必要は無いかとは存じますが。影、抜かり無き様」


 シャルネの時の様な醜態は二度と見せない。

 因みにシャルネ呼びは、温泉でオーガを殲滅してから、お互いに認め合い、同じ立場として呼び捨てにして欲しいと、シャルネから言われたので仕方なくですね。


「ドゥシャ……行って参りますわ」


 最後はシャルネですか。

 シャルネは特使として、このファンガーデンに常駐しており、本来は、用意された屋敷にて暮らさなければならないはずが、なぜかずっと同じ家で暮らしている。


「行ってらっしゃいシャルネ」


 特使として、役場での仕事があるらしい。

 出来ればそのまま、用意された屋敷へ行って欲しいが、今夜もまた、ここへ来るのであろう。


「さてと、お掃除でも致しましょう」


 お昼迄には、終わらせませんとね。



 ドゥシャさんストーリーです。

 のんびりパートですね。

 メイドさんです。

 暗部さんです。

 影さんの後釜です。

 メイドさん……欲しいよね……みたいなノリ。

 

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