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異世界とは愛すべき者達の居る世界  作者: かみのみさき
二章 異世界とはのぢゃっ子ドラゴンが居る世界
172/318

間話 黒姫の災難 



 太陽が顔を出す時間よりも、少しだけ早く目が覚め、目を擦りながら欠伸をする。


「のぢゃわぁあぁあふ……」


 もぞもぞとベッドの上を這う様に動き、時折魔王の顔面を、ぶにっと踏んでしまうが、一向に起きる気配がしない。


「のぢゃあぁぁぁ」


 そのままベッドから落ち、ゆらゆらと立ち上がり、ゆっくりと洗面台なる物に近づき顔を洗おうとするが────「のぢゃ……?」

 洗面台が高くて手が届かず、寝ぼけ眼で足踏み台を探し、近くに置いてあったお座りミルン像を動かして足踏み台とし、じゃぶじゃぶと顔を洗ってスッキリする。


「朝なのぢゃ!!」


 誰に聞かれるでも無くそう宣言した後、この時間でも起きており、朝食の準備をしているであろうドゥシャの元へと向かう。

 調理場をこそっと覗けば、ドゥシャがテキパキと朝食の準備をしていた。

 調理場のテーブルの上には、今まさに焼き上げたばかりであろう、カットされたお肉が湯気を立てながら置かれており、小腹を満たす為に、そ──っとそのお肉に近づいて行く。


「のぢゃぁ……のぢゃぁ……」


 ドゥシャの動きに注意しながら、足音を立てず、抜き足差し足忍足と、ドゥシャが調理をしている台の反対側へ到着した。


「あと……少しなのぢゃあぁぁ……」


 頑張って手を伸ばせば、お肉を掴める距離にまで移動して、一度ドゥシャを確認する。

 汁物を作っているのか、灰汁取りに集中しており、こちらに気付いてる様子も無い。万が一見つかれば、影達の中へ放り込まれて玩具にされるであろうと、一瞬身震いをしたが、小腹を満たす事を優先。


「頂きますのぢゃぁ────」


 お肉を手に取り、いざ口の中へと手を上げ、放り込む瞬間────「おはよう御座いますわ」

 もう一人の存在に、全く気付かなかった。


「のぢゃぁあああ────!?」


 一切の気配なく黒姫を捕まえたのは、アルカディアスから特使として在住している、シャルネであった。

 黒姫が抜け出そうと暴れるが、シャルネはスンッ────とした顔のまま、持ち前の馬鹿力で一向に離そうとせず、逆に、黒姫が徐々に締め上げられていく。ベアバッグである。


「のぢゅぢゅぢゅっ、やめるのぢゃ!?」


 黒姫が苦しんでいる事に気付いたシャルネが、力を抜いた瞬間、何とか抜け出して一息吐き、手に持っていたお肉を口に放り込む。


「ムグムグ旨いのぢゃぁ」


「それは良う御座いました黒姫様」


 アレだけ騒げば気付かれるに決まっている。

 手には包丁が握られており、ドゥシャの眼には、まったくと言っていい程に感情が乗っておらず、今先ほどまで黒姫を捕まえていたシャルネと遜色無い雰囲気を醸し出している。


「落ち着くのぢゃっ、話せば分かるのぢゃ……逃げるのぢゃぁあああ────!?」


 小さな翼を背に生やし、即座に玄関へと走るが、窓から飛んで逃げると言う発想が抜けている程に、黒姫は必死であった。


「玩具にされるのは嫌なのぢゃぁあああ!!」


 あと少しで扉へと手が届く────そう思って一瞬だが気を抜いた。抜いてしまった。

 ジアストールの暗部は、何もドゥシャだけでは無い。黒姫が苦手とする影達もまた、気配を消す事に長けており、黒姫が気を抜いた瞬間、二人の影が何処から音も無く現れ、黒姫は成す術無く捕まった。


「玩具はいやじゃぁ……玩具はいやじゃぁ……」


 震える黒姫を優しく撫でる二人の影達。

 いつもは即座に、仲間の影達の元へと連れて行かれ、着せ替え地獄にくすぐり地獄、撫で回され地獄となる筈が、その気配が無い。

 助かった────そう思った次の瞬間、その理由が判明した。


「今日は私の番ですよ影。その手を離しなさい」


「いやいや、先に捕まえた順と決めたでは無いですか。なので、このむっちりボディを堪能するのは私ですよ影」


 影一人一人の堪能する時間が少なかった為、こんな事態になった際は、先に黒姫を捕まえた方が好きに出来る、と言うルールが決まっていただけで、このままでは黒姫は地獄行き決定である。しかも一対一での、可愛がりと言う名の拷問。


「誰か助けるのぢゃぁあああ────!?」


 両手を影に掴まれ、両足を影に掴まれての引っ張り合いで、手足がもげる極刑である。

 もがれまいと力を入れれば入れる程、二人の影も、力の限り引っ張って来ると言うこの地獄。


「のぢゃぁあああああ────!!」


 最早姿を変えるしか、逃げ出す事が出来ぬと悟り、力を解放しようとした次の瞬間、ふと影達が消えた。

 落ちそうになり、何とか翼の力で浮いたものの、訳が分からず周りを見ると、通路の先から────「おはよう黒姫──!」

 救世主ミルンが走って来ていた。

 ミルン親衛隊の掟は、有事の際以外に、ミルン御嬢様に姿を見せてはいけない。その掟に助けられ、ミルンに助けられた。


「ミルン有難うなのぢゃぁあああ!!」


 急に号泣し始めた黒姫に驚きながらも、近づいて来て頭を優しく撫でて来るミルンに、黒姫は心の底から感謝していた。

 但し忘れてはいけない事が一つ有る。

 ミルンが起きたイコール、何処に向かうか。

 それに思い至るも、時既に遅し。


「黒姫。朝ご飯食べに行こう!」


 ガッチリとミルンにホールドされ、暴れたくても暴れられない状況に、成す術無く調理場へと連行され、そこには勿論、笑顔のドゥシャが、包丁片手に待ち受けていた。

 黒姫は全てを諦めた顔をして、その処刑が来る事を歯を食いしばって待つ。待つ。待つが……一向に連れ去られない。


「何してるんだ黒姫。ご飯冷めちゃうぞ」


 流が椅子に座り、早く席に着けと誘導してくるので、ドゥシャやシャルネ、影達を警戒しながらゆっくりと席に着くが、何も起きない。


「助かった……のぢゃ?」


 いつ連れ去られてもおかしくは無い状況だが、ドゥシャや、影達に動きは無い。

 そう思い気を緩め、目の前の料理を見て腹がなり、早く食べたい衝動に駆られる。


「じゃあ今日はミルンの番!」


 何か不吉な言葉をミルンが発した。


「そうで御座いますねミルン御嬢様。黒姫様はお腹が空いているとの事。なので、ミルン御嬢様が食べさせてあげると言うのは、如何でしょう」


 幾度も経験した、地獄の一つ。

 黒姫は覚悟を決めて、立ち向かう。


「そうする! じゃあ黒姫、あーんして!」


 黒姫のつぶらな瞳には、笑顔のミルンが持つフォークが、死神の鎌の様に見え、その鎌が黒姫のお口を行ったり来たりと約一時間。


「のぢゃぁあああぷぼぶっ────!?」


 食卓に黒姫から出たモノが飛び散り、白目を剥いたままの黒姫が、最後の力を振り絞り、残した言葉。


「ま……だあ……さな……のぢゃ……」

 



 はい今回は黒姫が散々な目に遭うパートですね!

 やっぱりのぢゃっ子は弄りやすい……弄られ黒姫!?

 最後にはミルンがトドメを刺すと言う素晴らしい結果ですね……腹一杯どころか腹五杯ぐらいでしょうかね。

 主人公がワンフレーズと影も形ありませんが、ショートストーリーなので許して下さいな。


 少しでも面白いと思って頂けたら幸いですね。

 是非に評価もお願い致します!!


 ではではこの辺で。


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