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異世界とは愛すべき者達の居る世界  作者: かみのみさき
二章 異世界とはのぢゃっ子ドラゴンが居る世界
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16話 ただ怒りのままに一撃を.2



 黒姫は焦っていた。弾き飛ばした光の槍が、ファンガーデンに向かっていき、白い光を放って消えたからだ。


「あの方向じゃと、裏側……屋敷の近くなのじゃ。光が消えたとなると、アヤツが力を貸してくれたのやもしれぬ」


 目の前のリシュエルから意識を逸らさず、状況を整理する。

 背の傷は少しずつ回復しており、戦闘に支障は無いが、攻め手に欠ける。こちらが放つ攻撃をことごとく避けられ、致命打を与える事が出来ない。

 逆にリシュエルからの攻撃も、さほど脅威には成らず。油断して一撃を貰ったが、擦り傷程度のモノ。


『消化試合ですねぇ。なかなかにしぶといドラゴンさんですわぁ』


 リシュエルも同じ事を思っているのじゃろうが、はてさてどうしたものかのぅ。


「削り切るまで、やるしか無いと言う事じゃろうの──リシュエルや」


 いくら考えようと無駄なのじゃな。

 やる事は変わらぬ。

 この目の前のクソを滅する事だけを考えて、ただそれを実行するのみじゃ。


『うふふ。本当に厄介ですわねぇ────?』


 何じゃ……リシュエルの奴、急に顔色がかやったのじゃっ────!?


「この気配っ────まさか神なのかや!?」


 不味い、非常に不味い。このリシュエルの相手だけで手一杯なのに更に神の気配じゃと……どうなっておるのじゃ!


「り──しゅえ──る」


 来おったかっ────この感じは女神。

 むっ……眼が痛くなる桃なのじゃ。


『あらぁ……アルテラ様ではないですかぁ。このような下界にぃ、なぜいらっしゃるのですかぁ』


 リシュエルの奴、相当焦っておるのじゃ。

 どういう事ぞ。この女神は確か、魔王が装飾品を剥ぎ取って、どこぞで店を構えていたハズなのじゃ……なんじゃ?こっちを見て────成程のぅ。


「リシュエル。貴女、ちょ──っとやり過ぎかしら。神域に住まう者は、その力を抑えなきゃ、この世界が大変な事態に陥る事、知っているわよねぇリシュエル」


 リシュエルが後ろに退いたのじゃ……成程。その剣は、力を解放する為の依代かや。


『それは存じておりますわぁ。なればこそぉ、今なら貴女様にも一撃をいれる事がぁ、出来るのではないでしょうかぁっ────』


 リシュエルがアルテラへ斬りかかる──が、何かの力か、スキルか、リシュエルの動きが止まり、そのまま上空へと放り出された。


「そこの龍、急ぎこの場を離れるわよ」


 急に何を言い出すかと思ったら、リシュエルの動きを止めただけで、逃げ出せと言うのかや。


「まだリシュエルを滅しておらぬのじゃ!それを逃げようと申すか女神!!」


 アルテラは首を横に振る。

「離れないと、アレに巻き込まれるわよ」


 アレとは────────っ!?

 流石の我でもアレは耐えれぬのじゃっ!!

 全力で────逃げるのじゃぁあああ!!


             ※


 ファンガーデンの城壁の上で、俺はゆっくりと、集中する……集中する…集中する。

 魔法をイメージ、イメージ、イメージ。

 今もこの先でドンぱちしている黒姫と、糞リシュエルが使っていた魔法。

 特にリシュエルが使っていた魔法は、俺が二度、発動させた事がある魔法。

 今ならば、確実にイメージ出来る。

 でもそれだけでは、リシュエルに通じない。

 ならば……どうすれば良いか。


「簡単な話だわな」

 

 右手に輝く火を灯し、左手に黒き火を灯す。

 魔王の称号を得て、初めて使う魔法。

 大地に放てば、間違い無くこの場所が塵となり、消え去るであろう。


「そう言えば、黒姫もリシュエルも、魔法名言ってたよなぁ……何だったかな……」


 まぁ……今のこの沸々とした怒りをぶつけるだけだから、魔法名なんて気にしなくて良いかな……いや、どうせならちゃんとイメージしよう。

 イメージ……ミルン像壊しやがって。

 イメージ……この怒りをぶつけてやる。

 イメージ……ミルンのモフモフ……。

 イメージ……ミルン像……撫で撫で……。

 あの細かい造形美……ミルンの耳と尻尾、愛らしさを完璧に表現していた……。

 浴槽のミルン像……可愛らしいミルンのお口から、止めどなく溢れる清潔なお水……。


 ゆっくりと目を開け、空を見る。

 リシュエルが固まったまま、空へと飛ばされている事がハッキリと見えた。

 桃色お化けはしっかりと仕事をした様だ。


 俺は両手をリシュエルへ向け、威圧を全開、両手に灯した火に意思を込め叫びを上げる。


「ミルンの像を壊しやがってぇえ!消え失せろやぁあああ!リシュエ────────ル!!』


 両手から放たれた輝く火と黒き火が、リシュエルに向かって飛んでいき、捉えた瞬間────ソレが合わさり、混ざり合い、俺がイメージしたモノへと変貌していく。

 俺が強くイメージしたモノ──ミルンをその魔法が形取り、膨らんでいき、その大きなミルンの口から────大量の水が吹き出し、リシュエルを更に上空へと吹き飛ばした後、それを追従するかの様に巨大ミルンが飛び上がり、そして────遥か上空で、空が割れた。

 比喩では無く、本当に割れた。

 割れた空に、リシュエルが吸い込まれていき、巨大ミルンは跡形も無く消え去っていった。


「えっ……巨大ミルン……なんで?」


 超巨大ミルンロボ……発進!!

 みたいなノリで口からお水ビームをぶちかまし!尻尾アタックで敵を真っ二つ!!

 そんな事を……考えていました……おっさんです。

 二章も後少し。

 是非最後まで、お付き合い下さい!!


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