15話 のぢゃっ子フルスロットル!.2
ちょっと洞窟から少し出て上空を確認……まだ居るなぁ黒姫。辺り一帯にブレスされたらこの場所もヤバいな。
「あまり時間が無いぞルシィ。何か思いついたか?」
黒姫のあの激怒っぷりだと、今にでも広範囲にブレスかましそうだから本気で時間が無い。何か策が有るのなら言ってくれ。
「お父さんが、黒姫の頭を撫で撫でするの!」
俺もそう思うけど、ミルンさんや、あの高さまでどうやって行くんだい? お父さんは空を飛べないからね。
いや……街には羽人が居るから担いでもらったら……巻き添えになるから駄目だな。
「魔王よ、あの黒姫と言う者が龍へ変わる際、何か変わった事は無かったかえ?」
何か閃いたのかルシィ? 変わった事……確かルシィが持ってる剣を見て……あの姿になった?
「のぢゃのぢゃ言いながその剣見て、ブチ切れ全開であの姿になったな。その剣に何かあるのか?」
見惚れる程格好良い剣だけど、別に変なギミックが有る様には見えない。
「ふむ……この剣を見てのぅ」
ルシィは徐ろに剣を鞘から抜き放ち、そのまま洞窟の岩壁に振り下ろす。
縦の線を引く様に岩壁に刃が通り、普通に素振りをしている様にしか見えず、だからこそ気味が悪い。
「なんだよその剣、岩を普通に斬ったぞ」
今まで見た事の有る武器は、銅か鉄で作られている。銅や鉄の剣で岩を斬れるかと言われれば、このスキルが有る世界ならば、斬る事は出来るだろう。斬った剣は間違い無く壊れるけどね。ルシィが斬った岩をまじまじ見てるし……何で?
「何で持ち主であるルシィまで驚いてるんだよ。その剣使った事無かったのか?」
「魔物を討伐する際に一度は使ったが……岩をも断つとは知らなかったのじゃ」
魔物に使った時点で気付きそうだけどな。やっぱりその剣に何か有るのか……一つ試してみましょうかね。
「ルシィ、ちょ──っとだけその剣を地面に刺して、離れてくれ」
何嫌な顔してんだよ……触らないからさ。
「これは王の剣なのじゃ、触るで無いぞ魔王」
念押ししても触らんわ!触ると入れられないからな……早よ手を離せ!!
「まったく、女王である儂に対してその不遜な態度、普通で有れば極刑じゃぞっ」
「刑に処される前に全力で魔法ぶっ放すからな!今の俺が全力で魔法使ったら……どうなるんだろうか?」
「なぜ私に聞いて来るのだ流君。間違っても全力で魔法を撃つでないぞ……今度はこの地だけで無く、この国が滅ぶやも知れぬからな!!」
その可能性も無きにしも非ずだな。実際、称号が魔王になってから魔法使ってないし、どれぐらいの規模で魔法が暴発するか分からんからな。
「おい魔王、何かするなら早よせぬか」
そうだった。今は脱線している暇はないよっと──『空間収納』──で、一旦中に入れて、この剣の名前を確認確認……はぁ?
「おい魔王!儂の剣をどこへやったのじゃ!」
ルシィが何か言ってるけどこっちはそれどころじゃ無いんだよ!!
「何だよこの剣……どう言う事だ?」
(一覧)
ミルンの尻尾の毛玉
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門兵Fの不倫相手の家の鍵
門兵Hの不倫相手の家の鍵
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門兵詰所の鍵
門兵女性用詰所の鍵
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コカトリスの骨▼
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コカトリスの肉(290キロ)▼
ミノタウロスの肉(390キロ)▼
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金の鎧
金の盾
金の剣
金の指輪(十個)
世界樹の苗木
回復薬(二十個)
解毒剤(十個)
万能薬(十個)
時詠みのオラクル
魅了の簪
破魔の簪
神域の羽衣
神域の腕輪
女神アルテラの杖
神域の高下駄
魔王流の角 六本
御使の剣
御使の剣って……出てるよな。
御使、神の御使。
俺が知っているのはアイツしか居ない。
「リシュエルの奴が五百年前の件に関わっていた?」
あり得ない話じゃ無い。神の御使と呼ばれているぐらいだから、寿命が有ったとしても、比較できない程長命だろうしな。
「ほれルシィ、返すぞ──」
空間収納から剣を出して女王へ返す。
「何じゃそのスキルは!その様な力が有るとは、報告を受けておらぬぞ!!」
影さんから聞いてないのか……この女王が忘れているだけか……どっちだろうな。
「はいはい俺のスキルの一つですよ──っと。それよりも、一つ確実な事が分かったぞ」
ルシィが黙り、村長は胸筋をピクピクさせて気持ち悪い。ミルンは外の様子を見ながらも、耳をピコピコとしっかり聞く気満々だな。
「五百年前ぐらい前にあったとされる戦いに、神の御使が関わってやがる」
どうせ何処かで観てやがるんだろリシュエル。お前……一体何が目的なんだよ。
※
「なぜこの剣が御使の剣と断定できるのかは分からぬがな、御使の剣だとしてそれが何じゃ? 名前が分かった所で、今の現状が変わる筈もあるまいて」
頭の回転が悪いなこの女王……リシュエルを知らないなら当たり前か。
「なあルシィ。黒姫は、誰に対して報いを受けさせるって言ったんだろうな」
もし黒姫がジアストールに対して報いを受けさせると言ったのなら、何で今迄何もしなかった。力が弱まっていたからか……それなら力が戻った時点で直ぐに行動するだろ。
「とりあえずその剣を村長か俺に預けろルシィ。じゃなきゃまた空間収納で奪うぞ」
もし黒姫がその剣を狙ってるのなら、それを持っているルシィも、一緒にこんがり焼かれる可能性あるからな。
「流君に渡すのが嫌なのならば、私にお預け下さい陛下……」
村長が眼をキリッとして、ルシィに近づいて行ってるけど、村長……側から見たら、ただの変態が剣寄越せって女性に迫ってる様にしか見えないぜ……。
「近づくで無いわこの変態が!? 変態に渡すぐらいなら魔王の方がまだましじゃ!!」
うぉ!? 投げて渡すなよ王の剣なんだろ!
「後で必ず返すのじゃ魔王!」
分かってるよ! 村長もナイスアシスト!わざと迫ってルシィに二択を強いるなんて、その筋肉は伊達じゃ無いって事だな。
村長、なに肩落としてるんだよ。わざとじゃ無かったって? 本気だったのか……今の自分の姿を見ろよな。
「ミルン、外の様子はどうだ?」
「黒姫がまた息吸ってるの!!」
マジか!ここに居たら逃げ場無くて、全員こんがり不味く焼けましたになるぞ!?
「村長!ルシィ!ミルン!急いででここから離れろ! 走れぇええええ────!!」
洞窟から同時に飛び出して、三人は黒姫から更に離れる為山を駆け上る。俺はその逆、黒姫に向かって走りだした。
「ミルンを担いで上に行け村長!!」
「お父さん!?離してヘラクレス!!」
俺の言葉に村長が反応して直ぐミルンの首根っこを掴み、そのまま山を駆けて行く。
「何の策かは分からぬが!死ぬで無いぞ魔王! ミルンを悲しませては兄様に申し訳がたたぬ!!」
はいはい分かってますよ──女王様!!
後ろからミルンの叫びが聴こえるけども……巻き込んじゃう可能性有るし、後で幾らでも怒られるからさ、悪いな。
「にしても、いつまで息吸ってるんだよ黒姫。ここら一帯、都市含めて焼き払う気か」
そんな事はさせないけどな!!
全力の────『威圧っ!!』────こっち見ろよ黒姫、御目当ての品は俺が握ってるぞ!!