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異世界とは愛すべき者達の居る世界  作者: かみのみさき
二章 異世界とはのぢゃっ子ドラゴンが居る世界
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13話 犬耳角っこ殺戮人形


【13話 犬耳角っこ殺戮人形】


「んくっ……くはぁ──っ!やっぱり良いモノじゃの湯浴みというのわ!極楽なのじゃあぁぁ」


 いつもは幼子の姿で入るからか、湯船に浸かると直ぐのぼせるが、今は少女の姿。長湯をしてものぼせぬし、なんならこの様に酒も楽しめる。


「我は永劫の時を生きる龍なれぞ、いつの世でもこの一杯、この一滴には勝てぬのじゃ」


 んくっ……くはぁ────っ!欲を言えばもう少し冷えておれば更に美味いのじゃがな。この治世では難しいかのぉ……いや、魔王ならば何か考えるやもしれぬのじゃ。


「ミルンは呑まんのかや?」

 

湯船の中を奇妙な動きで泳いでおるが、存外可愛いものじゃ。


「『お酒は二十歳になってから』ってお父さんが言ってたけど……黒姫はいいの?」


 我を何歳だと思うておるのか。

 我自身にも分からぬ程歳を重ねておるわ。


「我は龍じゃぞ? 問題無いのじゃ」


 湯殿は清潔、湯船は快適でいいのじゃがな。

 唯一気になるのは、なぜミルンの像の口からお湯が出てきているのか……間違い無く魔王かその側におる誰かが造ったのじゃろうて。


「黒姫お胸大きい……負けた……」


 ミルンが何か言っとるが、まだミルンは伸びしろがあろうて、悩む年頃でもあるまいに。


「我が元の姿に成れば更に大きくなるのじゃ!吠え面をかくがよいミルン!!」


 我は大人じゃからの。見知った仲でも情けはかけぬ。


「むうぅ……いつもの黒姫の方が可愛いのに!」


 それはイジメ甲斐があると言う意味かえミルン……度々我の頬に噛みつきおって恐ろしいのじゃ。


「お主は呑まんかや?」


 湯船の隅っこで静かに浸かっている女。

 魔王がもしあの時死んでおれば、間違い無く魂の一欠片も残さず消し去っていたであろうの……此奴も運が良いのじゃ。


「私はまだ十九歳ですので、お断りしますわ。あの殿方の御言葉を守りますもの。ふふふっ」


 此奴……まさかのぅ……本気なのじゃ?


「まさかとは思うが……お主、魔王に恋焦がれてはおらぬかや?」


 魔王の言う通り感情が読めぬ。読めぬのじゃが……若干照れておる!?


「これが恋かは私には分かりませんが……あの業火を受けた時、あぁ……何て傷みを与えてくれる方なのかと心に響きましたの。初めての経験でしてよ?私に心が有ると感じれた事は。私も御父様から、早く結婚しろと言われておりますので、どうせならこの方が良いなと思い、想いを伝えましたの。私の剣を受けながらも想いに応えようとして下さったあの殿方ならば、私と長く寄り添えるとは思いませんこと?」


 此奴っ病んでおるのじゃ!?

 不器用とかでは無く、ただ病んでおる!!


「お主よ。魔王と婚姻を結びたいのなら、あそこで泳いでおるミルンを説得出来ねば無理であろうな」


 首を傾げてもまったく可愛げが無いと言うか気持ちの悪い奴なのじゃ。


「それは何故でございましょうか?」


 まぁ、当然の疑問なのじゃ。


「ミルンは魔王の養子みたいな者じゃからの。魔王と婚姻すれば、ミルンは子も同然。ミルンがお主を母とするなら、魔王も嫌とは言うまいて」


 間違い無く無理じゃがのぅ。

 魔王に刃を向けた時点で、お主はミルンの敵となっておるのじゃから。


「そうなのですね、あの獣族の子供が…………」


 何を考えておるのかまったく分からぬ!?

 ミルンを凝視して手を撫でる様に動かしてはおるが、何の動きなのじゃ!?


「黒姫どうしたの?」


 ゆっくりと変な泳ぎで向かって来ているミルンに、これまたゆっくりとした動きで近づくあの女。


「……」


「……なに?」


 なんじゃこの状況!?

 彼奴がミルンの側まで寄って行ったのは分かるのじゃが……言葉を発さぬ!?


「……」


「……なんで見て来るの?」


 ミルンよ、其奴は話が通じる相手では無いのじゃ。


「私の事を母と呼んではいただけませんか」


「嫌!!」


 急に何を言い出すのじゃ彼奴は!?

 あぁ……ミルンが逃げたのじゃ──!?

 追いかけたのじゃ!?

 能面の様な顔で泳いでミルンを追いかけておるのじゃ怖いのぢゃ彼奴!!

 

「我……彼奴に余計な事を言ってしまったのかや……すまぬミルン。我は知らぬのぢゃ!!」


 幼子の姿になっておこう……誤魔化すのぢゃ!!

 

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