12話 幼女が怒ると美少女に?.4
なんで俺は朝っぱらから死にかけてるの?
教えて、ムキムキそんちょーう。と、心の中で村長に言ってみるよ……通じるかな?
「口元で大体何を言っているのかぐらいは分かるぞ流君……とりあえず睨むのをやめたまえ!」
「俺だって睨みたく無いよ? でも村長、アレの対応出来るのか?」
アレとは勿論泡吹いて地面に顔から行った鼻血ぶ──な筋肉人形こと、シャルネ御嬢様の相手なんだけど……あいつ話通じないからね。
「いっその事簀巻きにしたまま影さん達全員で引き渡しまで見張るか、睡眠薬有るならそれで眠らせとくってのはどうなんだ?」
普通の牢屋に入れるだけじゃあ簡単に破られそうだし、俺が魔法で黙らせ様にも間違って撃ったらどうなるかわからん。下手に近づいたら殺されそうだし、マジでどうすれば良いのあの化物。
「私だってそうしたいのだ! しかし一国の御令嬢である事には違い無いのでな……行動の自由は与えられぬが、軟禁する訳にもいかぬ」
「お父さんを休ませないの?」
「死にかけた魔王を労わらぬのぢゃ?」
おぉ……二人が本気の眼で村長睨んでるよ……二人でなら村長に勝てるんじゃね。あの筋肉人形にも勝ってたし。
「あのシャルネ嬢はなぜか流君を気にしておるからな……ミルン君と黒姫君には悪いが、流君を見張り役として付ける以外に無いのだ」
まぁそれしか無いよな……おっと大事な事を聞いていなかったな。
「そういや聞くの忘れてたんだけどさ、そのシャルネ御嬢様を引き渡す相手、アルカディアスからの一団はいつ来るんだ。七日後ぐらいか?」
「三日後の昼頃だ」
おいちょっと待て村長!?
「なんでそんなに早いんだよ!出迎えの準備も何も間に合わないぞ!?」
いくら何でも早すぎるだろ!あの女王絶対ワザと俺達に知らせる遅らせただろ!!
「私も驚いているのだ! だが陛下からの命令である以上、ここを任された責任者としてやらねばならぬ!!」
最悪出迎えの準備は良いとしてもだ……あの筋肉人形に三日間も付いてないと駄目なのか!? 絶対に嫌だ本気で嫌だ!! 一日なら我慢できるが三日も有ればあの御嬢様が何しでかすか分かったもんじゃない……どうしよ。
「お父さんにはミルンがついてる!!」
「我も居るのぢゃ!!」
うぅ……二人共有り難うな。
今度は油断しない。
ミルンが前衛、黒姫が中衛、俺が後衛で、アイツが何かしようものなら直ぐ叩く!!
「もう死にそうになるの嫌だからな」
二度とミルンを泣かせてなるものか。
先ずは……少し疲れたから寝るか。
「村長、少し寝て良いか? 昼には起こしてくれて構わないからさ」
「構わぬ、寧ろ少し寝たまえ。目が死んでいるからな!!」
それは死にかけたからだな。
「ミルンと黒姫はどうする?」
「あの女を見張るの!」
「奴めを監視するのぢゃ!」
頼もしいな……じゃあ少し隣の部屋で寝ますかね。
※
「のぢゃぁ……」
「黒姫どうしたの?」
お父さんが寝てから黒姫の様子がおかしい。のぢゃぁと溜息ばかりして全然この女の監視に集中出来ていない。
リティナが怪我を治しちゃったから、この女はいつ目を覚ましてもおかしく無い。
今は、両手両足を拘束しつつ、ベットにうつ伏せで括りつけてるから直ぐには動ける状態では無いけど、油断できないの。
「しっかり見張らなきゃ駄目だよ黒姫!」
私が油断したせいでお父さんが死にかけて、あの時の記憶が頭をよぎって怖かった……。もう絶対油断しないの!!
それに、獣族が使えないハズの魔法が使える様になったんだから、これが有れば武器が無くても戦える!!
あの時聴こえた変な音と声────
ピンポンパンポーン(上がり調)
『あらぁ?何でこっちに繋がるんですかぁ……まぁ彼に死なれると困るのでぇ、謝罪の意味も込めてぇ──えぃっ!と……あれぇ?』
ピンポンパンポーン(下がり調)
────あの後直ぐに体が熱くなって、ママが使っていたあの時の魔法を自然と使える様になっていた……よく分からない。
「のぢゃぁ……ミルン、聞きたい事があるのぢゃ」
「なあに黒姫?」
ようやく黒姫が喋り出したと思ったら聞きたい事? なんだろう……今日のご飯のお話?
「我のあの姿って……」
黒姫が少し大きくなった姿だね。お胸も大きくて、私……ちょっと羨ましかった。今は私より背が小さくて可愛いから、ずっと今のままでいて下さい!
「あの姿がどうしたの黒姫?」
本当にどうしたんだろう。
「我のあの姿って……魅力無いのぢゃ?」
こんな時に考える事じゃ無いからね黒姫?
ここはお姉さんとしてしっかり言い聞かせないと、黒姫がまたお父さんにのぢゃ子と馬鹿にされてしまう……のぢゃ子黒姫……かわいい。
「ミルン?どうさたのぢゃ……なぜ我の頬をつつくのぢゃ?止めるのぢゃっ────!?」
のぢゃぁあああああああああ!?
「騒がしいですわね……ここは?」
「彼奴起きたのぢゃ!?」
「黒姫油断しちゃだめだよ!」