10話 いつの間にやら城塞都市.5
よっしゃ全力で走る────ぜ?
脚に力を込め踏み込んだ瞬間──人間ロケットの完成でーすははは? いや、どうやって止まるのこれぇええええええええええ!?
すかさず足を大地に着けブレーキをかけるが止まらない。
そのまま民家を抜け畑を越え柵に引っかかり回りつつ低空飛行したまま溜池の中へズドンッ──っていきましたね痛い!!
「ぷはぁっ!? だずがっだぁまじで死ぬかと思ったわ」
何だよ今の脚力上がり過ぎだろぷはっぺっぺっ泥水飲んじゃったよまずぅ。
「おとーさーん!だいじょーぶ?」
「まおーう!ぶしなのぢゃー?」
ミルンと黒姫が走ってくるよ大丈夫だよ──い。
あのまま畑にインしてたら擦り傷どころじゃ無かったけどね。
次全力で走る時は気をつけねば……ちょっと楽しかったな。
あー濡れた濡れた服脱いでっと。
後で乾かさなきゃな。
にしても、これが畑かぁ……雑だな!?
ミルンが駆け抜け黒姫が若干浮きながら畑を突っ切る姿をまじまじとみつつ考えるが、素人目で見ても分かる畑の杜撰な管理。
「これじゃあ作物が良く育たんだろうに」
まずジャガイモっぽい芋。
寒冷地や標高が高い山で作られているイメージがある。
ここの気温は汗かきの俺が涼しいと感じるぐらいだから丁度良いが、日光が当たるとそこから色が変色して毒になり得るのは異世界も同じな訳で、この畑には増し土がされていないんだ。
あと畑一面ジャガイモっぽい芋の葉で埋め尽くされていて……仕切れよ! 次何植えるんだここの畑に!?
「畑を分割せにゃ来年にはジャガイモっぽい芋が作れないぞ……まさか作物連鎖を知らない?」
同じ場所、同じ土で毎回同じ作物を育てるとヤバいっていう認識を俺は持ってるけど……。
「おとうさんけがない?」
「大丈夫そうなのぢゃ?」
大丈夫だぞ二人共。若干擦りむいただけだから元気いっぱいだ!
それよりここの畑管理してるケモ耳達に会いに行かねば不味い。
それを察知してかミルンが俺をよじ登り、黒姫は俺の腕の中。
歩かないのね二人共……。
「にしても誰が管理してるんだこの畑……先に来てた移住者の誰かだとは思うんだけど」
とりあえず歩くか。
だだっ広い畑に芋、芋、芋、芋、芋尽くし。
しかも丸い方の芋だからなぁ。
「揚げてチップにしようか……いや、ジャガバタか……マヨ無いもんなぁ」
マヨって油だよな? どう作るんだ……知らぬ。
香辛料やタレは有るのになぜ醤油や味噌やマヨが無いんだよ!!
「おとうさんがまたへんに!?」
「何か考えてるのぢゃ?」
思い出せマヨ知識……加工品に慣れた現代人が知ってる訳無えだろうがぁあああ!!
「あ──せめて王都の料理長が居てくれれば何か分かりそうなんだけどなぁ」
卵……はコカトリスで、油は動物系も植物系も有るし……お酢か。無いわ!!
そんな事を身体をくねらせながら考えて歩いていたらミルンの可愛いおててがグィ──っと俺の髪を引っ張って面白い顔になったよ。
「化物なのぢゃ!? やめるのじゃミルン!!」
黒姫は俺に抱っこされてるからダイレクトに面白い顔を見ちゃったねニコォ。
「その顔で笑うで無いのぢゃ!夢に出てくるのぢゃ!」
そんなにか……で、どうしたミルン?
「あっちでてをふってるよ?」
あっちで?……あ──最初の移住者の鑑定スキルもってた……誰だっけ痛っ!?
「ミルン叩かない叩かない思い出すから!」
え──っと羽乳姉ちゃんじゃ無いしぃいいい髪引っ張らないでぇえええ禿げちゃうからぁあああああ……あっ、名前聞いてないぞあの羽乳姉ちゃんから!!
「そうなの?」
そうだぞミルン。確か初めて会った後全部村長に丸投げしたからな。
「押し付け魔王なのぢゃ」
否定はしない!!
「とりあえずこの畑の事聞きにいくか」