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異世界とは愛すべき者達の居る世界  作者: かみのみさき
二章 異世界とはのぢゃっ子ドラゴンが居る世界
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10話 いつの間にやら城塞都市.4



「お待たせしました。新しいお茶が行商から手に入ったのでどうぞ」


 そう言って目の前に置かれたのはティーカップに入れられた緑色の液体。

 普通お茶だな。

 これが人気ね、普通のお茶じゃないのか。

 ミルンと黒姫も首を傾げて臭いを嗅いで確かめているけど普通のお茶だぞ二人共。


「頂きますズズッ──うん美味い」


 甘味は無いが優しい葉の香りが鼻を通り抜け、心地良い苦味が舌を包み込み喉を潤す。そして肉ばかり食べて若干胃もたれ気味の胃袋を癒してくれる。


「にがい……これにがて」


「我は嫌いでは無いのぢゃ!! ゴクッゴクッ」

 

 どうやらミルンはお茶の苦味が苦手な様だ。逆に黒姫は気に入ったのか喉を鳴らしながら飲んでるな。


「ネリアニスさん。これって緑茶か?」


 この異世界で今迄飲んできたのは水か紅茶、お酒だけで緑茶は初めてだ。

 紅茶が有るならどこかには有るのだろうと思ってたけどようやく飲めたな。


「あら、ご存知でしたの流さん。残念ですわ」

 

 苦味で俺を驚かせようとしてたのか? ふははは残念、俺は甘味も苦味も大好物です。あとで買わなきゃな緑茶。


「そりゃあ故郷の味だからな、飲み慣れてるよ」


 これに饅頭があったら最高なんだけどなぁ、行商って事は遠くから来たのか……饅頭が有ったとしても移動中に傷んでしまうから無理か。


「あら、流さん東の国の人でしたのね」


 東の国? 確か……小国が点在しているんだったかな。ドゥシャさんに教えて貰ったけど思い出せないぞ、地理は苦手なんだ。


「ここに来たの東からだったかな? 良くわかんないんだよね」


 とりあえず誤魔化しておこう。

 だって異世界人だからこの世界に故郷は無いよ? なんて言えないし言うのも面倒臭い。

 ネリアニスさんが自分の居た国も知らないのねって眼で見てくるけどミルンの尻尾モフらせないぞ。


「ミルン、黒姫、帰ろうか」


 その言葉を聞いたネリアニスさんが慌ててお茶菓子を出して引き留めたよ必死だな。


「そんな事をおっしゃらずに! ほらミルンさんクッキーですよ」


 ミルンが俺の顔を見て来たので頷く。

 そのままミルンがネリアニスさんの隣に座り尻尾をネリアニスさんに向けてクッキーを食べ始めた。


「たべおわるまでならいいモゴモゴ」


「我も食べるのぢゃぁムグムグお茶に合うのぢゃぁ」


 黒姫お前見た目幼女なのに中身お婆ちゃんか? しみじみした顔でなんか急に老けた?


「我はまだ若いの…ぢゃ……我何歳なのぢゃ?」


 知らんがな黒姫の年齢なんて、気にせずお食べよ。


「のぢゃぁムグムグ…のぢゃぁ」


 やっぱりなんか見た目幼女のお婆ちゃんだなちょっと面白い顔になってるよ。

 おっと、そろそろ話聞かないとお茶飲みに来ただけで時間過ぎるないかんいかん。


「それで、冒険者達は順調に集まって来てるのか? あと何か周辺の町や村、お隣の国の情報があったら聞きたいな」


 冒険者達が集まってるかどうかは忙しく働いているのをさっき見たから知ってるけどね、俺が聞きたいのは後者です。

 特にアルカディアスの情報かな。

 だってまだ筋肉人形さん見つかっていないから帰ったのかどうなのか知りたい。


「……そうですね……今はアルカディアスがちょっと危ないと言われていますね。アルカディアスから冒険者が何名か来たのですが、どうやらこちらに人を送り込もうとしたらしいのです。まあ、冒険者達は断った様ですが」


 冒険者達は一度は断ったけど、どんな場所か気になって来たと言う訳だな成程。

 人を送り込もうとして断られたからあの筋肉人形さん来たのかな……一人で山超えて? まあ、筋肉人形さん一人でも魔物殲滅出来そうだし来れるか。


「魔龍の川側の城壁……防備を固めとくかな」


 攻められたら堪らんからね。

 どうにか筋肉人形さん捕まえて交渉材料にでも出来ないものか。


「あとさ、帝国からの移住者がそこそこ多いけどなにか知らないか?」


 馬人とかの元傭兵や羽人が多いよなぁ。こっちとしては助かるし、馬人の脚とか羽人の羽とか最高ですからね。


「流石に離れすぎてて情報は無いですね。王都にいる時ですら帝国の情報は余り無かったですから」


 無いのか残念。

 有難うネリアニスさん教えてくれて。


「いえいえ、こうしてミルンさんの尻尾を触らせて頂いている御礼ですわ。ふふっきもちいい」


 またモフッとミルンの尻尾に顔埋めたな……相当疲れてるのだろう。

 バニー姿で頑張ってるからね。次は悪魔っ子かニアノールさんと同じ猫耳メイドだな。


「そういや、商会の代表って今誰がしてるんだ。またネガリみたいな奴なら直ぐ鉱山行きだけど?」


 でちょっとでもネガリ臭がしたら直ぐ裏をとって村長をけしかける。腹黒は良いが横領は許さないからね。


「それでしたら大丈夫ですわ流さん。今の商会長はドゥシャさんですから」


 そうなの!? あ……ああどうりでミルンのメイドと自称しているのに時折居なくなる訳だ、商会牛耳って流通を円滑にしてるんだね。

 必ず最後にはミルン御嬢様の為に御座いますって言いそうだけど。

 それじゃ、あそろそろ次に行きますか。

 ミルン、黒姫、次に行くぞ……ミルンがリスさんで黒姫はお相撲さんかな?


「相撲さんなのぢゃ? 何ぞそれうぷっ」


 なんでも無いよ、行こうか。


            ※

 

 さて次は歓楽……ミルンさんが怖いので居住区の畑を見に行きましょうそうしましょう。

 商業区を抜けて……歩けど歩けど民家民家民家民家民家民家民家遠いなぁ。


「家がいっぱいなのぢゃ! のぢゃ?」


「みんなてをふってくる!」


 ミルンさんや、俺はこう見えてもここの代表の一人だからね! 面談した時に顔見てるから挨拶してるだけだと思うよ。

 俺も手を振り先へと進む。

 これだけ歩くと肩のミルンと抱えてる黒姫がもはや可愛い重りになってるよ。可愛いから我慢するけど良い筋トレだね。 


「ようやく畑かな」


 道の先が開けており、畑が有るのだろう。


「ミルン、黒姫、あそこまで走るぞ!」


 俺がそう言うとミルンは肩から飛び降り、以前城で見た手を地面につけて尻尾振り振りスタイルになり、黒姫はのぢゃのぢゃと言いながら地面に降り立ち翼を出す。

 翼……デカくなってね? まあ良いか。

 今日はスターターがいないので地面に線を引いて石を投げ、地面に落ちたらスタートだ。


「お父さんに負けない!!」 


 甘えたじゃない本気モードだな。

 勝負事はそうでないとね。


「のぢゃ! 龍の速さを知るが良いのぢゃ!!」


 お前まさか飛ぶのか? 確かに翼はデカいけど黒姫のまん丸お腹支えれるのか?

 イケる? なら勝負だな。

 二人共準備は良いかな? 

 それじゃあ石を──投げるっ!

 結構飛んだな……あと少しか。

 ふふふ、魔王の速さ、見せてやるぜ!!

 石が──地面に──落ちた!!

 俺とミルン、黒姫の真剣勝負が始まった。


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